このところ、物事をシンプルにしたいという思いと、極限まで最適化していきたいという思いが渦巻いています。当然ですが、この2つは相反するもので、最適化するほど物事は複雑化するのが常。どちらがいいとかいえるものではなく、こればっかりは好みの話だったりもします。
ミニマリストにあこがれて
定期的にミニマリスト熱が出てくるのは、僕だけではないでしょう。荷物を全部バックパック一つに詰め込んで、部屋も持たずに放浪できたら楽しいだろうな、とか、家にある荷物を全部処分してすっきりしたいとか。
保有するのではなくシェアする、サービスとして受けるというのもミニマリスト的な発想ですね。ここには保有することの煩わしさも現れています。所有には責任が生まれます。適切に管理しなくてはいけないし、使わないことが多くても維持しなくてはなりません。車を持つことを考えると、よく分かります。
それに比べて所有しない生き方は自由なんですよね。
わかりやすい例は、賃貸と持ち家でしょうか。圧倒的に賃貸は自由です。ただし効率でいったら持ち家だと、ぼくは考えています。
最適化すれば複雑化する
一方で、最適化は複雑さにつながります。今度は金融周りで考えてみましょう。ポイント還元を最適化しようと思ったら、クレジットカードは複数必要で、貯まるポイントも複数になります。そのときそのときで最適な支払い方法を検討して、どんなクーポンがあるのかも意識しなくてはなりません。
貯まったポイントも適切に利用する必要があります。期限切れを回避しつつ、「ポイントがあるから」などと無駄な買い物をしてしまわないように、理性を持ってコントロールしなくてはなりません。
期限がないとしても、ポイントは相続できません。100万ポイントをためたまま、自分が死んで失効してしまうなんて、どうにも悔やみきれません。自分の死亡確率を計算しつつ、ためておくことのメリットと、使ってしまうことのメリットのバランスをとらなくてはならないのです。
複雑さを手懐ける
最適化すると複雑になるのは、会社組織なども同様です。一人社長は自分で何でもやりますが、組織が大きくなれば分業が可能です。アダム・スミスを持ち出すまでもなく、分業によって効率は向上するのです。
では企業は複雑に分業した業務をどうコントロールしているのでしょうか。それはモジュール化による抽象化です。社長は、抽象的な指示を出せば、部長が一段階具体的な指示に置き換えて課長におろし、課長はより具体的な指示として現場のメンバーにおろします。
同様のことを金融商品で見れば、投資信託なんかがあたりますね。投資家は、株式買付の細々としたことを考える必要がありません。どの投信を買うかだけ選んでお金を入れれば、購入に伴う面倒なことは全部運用会社がやってくれます。結果報告や税金の処理まで証券会社が代行してくれます。
その代わりにコストがかかりますが、それは年率でいっても僅かなもの。ただし画一的な運用しかやってもらえず、自分の思ったような運用を依頼することはできません。そこはコストとトレードオフなのです。
こうして分業による効率アップを享受しつつ、複雑さの弊害を避けているわけです。
シンプルさか最適化かコストか
そう考えると、シンプルさと最適化(に伴う複雑化)は矛盾する概念ではなくて、コストとの三すくみの概念です。この3つは同時には成立せず、どれかを諦めなければなりません。
- シンプルさを諦めて最適化し、高効率と低コストを享受するか。
- 最適化を諦めてシンプルさと低コストに向かうか。
- コストを諦めて、高効率かつ当人にとってはシンプルな形を目指すか。
ただし(1)については単にシンプルさを諦めるだけではいけません。これは要は「全部自分でやる」という選択肢なので、そこにはノウハウと知識が必要になるのです。
そして世界のすべてについてノウハウや知識を習得することはできません。どんな領域で(1)を目指し、どんな領域では諦めて(2)や(3)を選ぶか。そんなこともライフスタイルという感じです。
あまり結論じみたことがないのですが、徒然と考えてみました。