よく「◯◯経済圏」なんていいますが、これはポイントを活用した囲い込み策のことです。囲い込みというと名前は悪いですが、ユーザーからすると特定の経済圏にどっぷり浸かれば、けっこうお得に過ごせるというもの。では、どの経済圏をどう活用すればいいのでしょうか?
特定の経済圏に絞る必要はない
まず、ポイント経済圏の話が出るときに、よく言われるのが「どれか特定の経済圏に絞りましょう」というアドバイスです。これは間違いだとはいいませんが、正解とも言い切れません。絞り込むことはメリットとデメリットがあるからです。
メリットは、
- 単純に還元率でいえば最高になる
- 管理と操作が簡単
なことです。現在の経済圏は特定の携帯キャリアと紐付いているわけですが、携帯、光通信、保険、投資などを1つのグループに固めるのが、最も簡単に還元率をアップできます。そして、貯まるポイントは1つなので、管理も簡単、消費も簡単。経済圏運営側の狙いもそこにあり、囲い込みたい側と囲い込まれてぬくぬくしたい側の利害が一致しています。
一方で、絞り込まないことのメリットは3つあります。
- 個別最適化ができる
- キャンペーンを活用できる
例えば、携帯はauがいいけど資産運用はグループのauカブコムではなく楽天証券を使いたいとか、クレジットカードはマリオットボンヴォイAMEXがいいとか、それぞれの領域で自分のベストだと考えるものをピックアップできます。
また各経済圏はキャンペーンを定期的に行うので、キャンペーンの都度、お得なポイントをもらえるように使い分けることができます。絶対的な還元率でいえば経済圏を絞り込むほうが上ですが、キャンペーンを活用すれば平均還元率はアップすることが多いでしょう。
それぞれのデメリットは、メリットの裏返しです。
携帯はソフトバンク、決済はPayPay、カードはPayPayカード……と囲い込まれれば、お店でどの支払い方法がいいか悩む必要はありません。PayPayで払うかPayPayカードで払うか悩むようにキャンペーンを当ててくることはまずなく、だいたいはPayPayで払えば最もお得です。貯まるポイントもPayPayポイントですから、それを支払い時に充当すればOK。
世界は平和でシンプルで、お得さについて何も悩む必要はなく、別の関心あることがらにアテンションを向けられます。これは一つの生き方です。
支払い個別に最適化を考える場合
ポイント経済圏を絞り込まず、全方位でキャンペーンを活用しようとするとたいへんです。まず、いまどれがどんなキャンペーンをやっているのか、常時把握することから始まります。その上で「どれで支払うのが最も良いのか?」を瞬間的に考えなくてはなりません。
例えば、現在セブン-イレブンでお弁当と飲み物を買おうとしています。まずはセブン-イレブンアプリを立ち上げて、クーポンがないかチェックです。そして店員にバーコードを見せて読み取ってもらいます。
支払いは下記のように考えます。
- 三井住友プラチナプリファードで、標準5%+家族2%+100万ボーナス1%+リボ0.5%→8.5%還元
- いや、500円につき100円分還元の「タッチ決祭」キャンペーンをやっているので、ここはプラチナプリファードではなく、対象カードの三井住友カードゴールドのほうがよい
街の定食屋で1000円のお昼ご飯を食べました。さて何で支払うか。キャンペーンや特別クーポンがなければ、下記のように考えます(参考)。
- 楽天の期間限定ポイントが余っているなら、楽天Payで
- PayPayが使えるなら、PayPay。紐付けカードはあおぞら銀行で。6%還元なので
- もし利用が月間2万円を超えてるなら、PayPayだけど紐付けはLINEクレカポイント+で5%還元
- 交通系電子マネーでいけるならそれで。プラチナプリファード(2.5%)→Kyash(0.2%)→TOYOTA Wallet(1.0%)→PASMOで3.7%
- 交通系NGでPayPayが両方上限を超えていたら、改めて楽天Pay(1%)で、楽天キャッシュを使って支払う。楽天キャッシュは、ファミマTカード(0.5%)→FamiPayで楽天POSA購入(2.0%)
いやはや。面倒くさい。その上、これで還元率を1%上げても10円の違いです。これを楽しいと考えず面倒と思うなら、何も考えずプラチナプリファード(2.5%)で支払って終わりがいいですね。
さらに、このように複数ルートを使ってポイント多重取りをした場合、複数のポイントがが貯まります。中には時間がくると失効するものもあります。これをうまく活用するには、ポイントを交換して現金化するなり、決済の割引に使わなければなりません。
金額が大きければ意味がある
このように、話題のポイ活にもいくつかのスタイルがあります。ざっと手間と知恵がかかる順にこんな感じでしょうか。
- 何もしない。現金決済
- 特定のカード決め打ち(楽天カードとかマリオットボンヴォイとか)
- 特定の経済圏に絞り込む
- 複数の経済圏のキャンペーンなどを使い分ける
それぞれ均すと、1%くらいずつ還元率が変わるかな? という肌感覚です。ということは、手間ひまかけたことで還元される額が、自分にとって魅力的かどうかで選べばよいかなとも思います。
例えば、年間手取り収入が1000万円だとして、貯蓄に250万、住居に250万、生活費に250万、教育費に250万円だとざっくりしましょう。このうち、住居費と教育費は基本的に銀行振込か引き落としでしょう。何かしらポイ活で工夫する余地はあまりありません。
残る貯蓄はクレカ積立一択です。これは比較的シンプルでこちらで解説しました。
最後の生活費が、ポイ活でポイントを貯められる主戦場となるでしょう。しかし、年間250万円の1%は2.5万円です。いろいろと手間をかけて2.5万円を得るのが見合うかどうか。その基準は人それぞれだと思いますので、これが判断基準でしょう。
もちろん、年間生活費が大きい人は額も増えます。家賃を除く生活費が月50万円の人なら年間600万円使っているわけで、1%還元が増えれば6万円。「金持ちなんだから6万円くらいケチるな」という人もいれば「6万円を節約してきたから金持ちになれたんだ」という意見もあって、どっちが正解ともいえません。
ちなみにもう一つ大きいのが税金と経費です。所得税、住民税、自動車税、自動車重量税、固定資産税、法人税。税金はどんどんキャッシュレスに対応してきていて、しかも額も半端ない。簡単に数百万円の支払額になります。そして事業で発生する経費は、それこそ青天井。実はここにポイ活を組み合わせれば、利益率が1%向上するのと同じ効果があります。
そんなわけで、ぼくはというと、時間と関心がある限りは複雑化するポイ活パズルを楽しみ、興味を失ったらシンプルに特定のクレカ一択に変更しようかなと思っています*1。
*1:そういえば、10年くらい前はペイ決済もプリペイドカードもなかったので、単なる高還元クレカを見つけるというルールでした。1.75%還元の「漢方スタイルクラブカード」とか2%還元の「リクルートカードプラス」とか懐かしかったな。