FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

インデックス投資にも弱点がある そのデメリットとは?

インデックス投資全盛の昨今であり、ぼく自身もインデックス投資家ですが、インデックス投資はメリットだけではないことは理解しておく必要があります。必ずしも、無敵の投資法ではないのです。

 

どんなデメリットがあり、どんな対応方法があるのか、調べてみました。

時価総額加重平均の課題

インデックス投資では多くの場合、時価総額加重平均されたポートフォリオを保有します。時価総額加重平均は便利だしよく出来てはいるものの、インデックス投資の理論的バックボーンであるCAPMが想定する「すべての金融資産」の実例としては問題があります。

 

それは本質的な価値に比べて割高な銘柄が多く保有され、割安な銘柄の保有量が少なくなる点です。

時価総額加重インデックスの問題点と新しい株式インデックス ニッセイ

この何が問題かというと、割高銘柄、割安銘柄が正しい評価額に戻る際に、インデックス投資は損失を被るのです。

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実は、ダウ平均や日経225のような株価加重平均インデックスの場合には発生しません(が、時価総額とは別の要因でウエイトが決まるという別の問題が発生します)ので、インデックス投資のデメリットというべきではないのかもしれません。でも、S&P500やTOPIXのような代表的な指数はこの問題を抱えているのです。

 

さらに、この問題はインデックス投資の比率が増えるほど顕著になります。

多くのインデックス投信は、単純に市場に出回る企業銘柄の時価総額の大きいものをより多く買う、証券投資理論でいう『時価総額加重平均』の考えに基づいて投資、運用する。だが、その理論は市場参加者全員が、割高な銘柄を売り、割安な銘柄を買うという経済合理的な動きをすることを前提としている。

インデックス投資家が増えると、時価総額の大きい銘柄は多く買われることで割高となり、時価総額の小さい銘柄はあまり買われず割安なままとなることで二極化が進み、マーケットの歪みが加速度的に増大してしまう。

緩和修正で崩壊「インデックス投資最強説」の死角 | 投資 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

どういうことか。例えば、世界に100人の投資家がいるとして、99人はインデックス投資家、ぼくだけがアクティブ投資家だったとします。ぼくはA社の株をどんどん買い進め、株価を吊り上げます。するとインデックス投資家が資金を追加投入するとき、時価総額加重平均に則って、その株高くなった株を買わなければなりません。そこでぼくは売り抜けて利益を出す。損失を被ったのは誰かというと、インデックス投資家となります*1

 

インデックス投資家は機械的に取引するがゆえに、規模が大きくなるほど他の投資家のカモになりやすくなるのです。

銘柄入替えの課題

その問題がさらに顕著なのが、銘柄入替えです。日経平均に新たに採用される銘柄とか、日経平均から落ちる銘柄というものです。当然ながら、日経平均に採用されればインデックス投資家がその銘柄を買うので、価格は上がります。落ちたらその逆です。

 

実際には、インデックス投資家が買うことが分かっているので、アクティブ投資家は先回りして新規採用銘柄を買います。こうやって、アクティブ投資家は利益を得、インデックス投資家は損失を被ります。

 

インデックス投信が対象とする指数の銘柄入れ替え時に発生する「隠れコスト」だ。東証株価指数やS&P500などの指数で銘柄入れ替えが実施される際は、事前のアナウンスがある。アクティブ投資家は先回りして売買することができるが、インデックス投信は指数と完全に連動させる商品設計のために、実際の銘柄入れ替えと同じタイミングまで売買を行えない。

結果的にインデックス投信は、銘柄入れ替え時に不利なタイミングでの売買を強いられる。インデックス投信はbps(1bpsは0.01%)単位でのコスト競争が続いているが、この「隠れコスト」は年間数十bpsに及ぶと指摘する研究もある。

 

上記の「隠れコストが年間数十bps」が本当なら、インデックス投資の信託報酬に匹敵するくらいのコストを、採用銘柄先回り投資家に支払っているということになるわけです。

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デリバティブに利用される

そのほかにも、インデックス投資にはデメリットがあります。日経225にせよS&P500にせよ、メジャーな指数はデリバティブの原資産として使われます。先物が有名ですが、オプションもあるし、オプションのデリバティブであるVIXなんかもそうですね。

 

そして、デリバティブは指数を動かします。本来は、組入銘柄全体の株価が指数を決めるはずが、日経225先物が売られれば日経225も下がり、日経225が下がったから個別の銘柄の株価も下がるという、逆のルートで株価が変化するのです。

 

これはどっちが順でどっちが逆だとはいえないかもしれませんが、指数に想定外の影響を及ぼすのは間違いありません。

例えば、日経平均は、指数の構成が裁定取引に向いているので、デリバティブ市場の上下の影響を受けやすく、傾向として、ボラティリティー(つまりリスク)が大きめになりがちだ。

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インデックスだからこそかかるコストがある

先の『インデックスファンドにも「弱点」がある」は山崎元氏の記事ですが、その記事ではインデックスファンドならではのコストにも言及しています。それは指数使用料です。

 

信託報酬がeMAXIS オルカンの半分ということで話題になった「Tracersオールカントリー」ですが、ここでも、指数使用料が隠れコストとして注目されました。

「使用する指数の標章使用料」がその他コスト扱いになっている

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指数使用料は相対契約で非公開ですが、2〜3bps程度ではないかと言われることが多いようです。これもインデックスだからこそのコストで、その分リターンを押し下げるわけです。

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アクティブ投資あってのインデックス投資

昨今、本当に市民権を得てきたインデックス投資ですが、欠点なしの無敵の投資法というわけではありません。そもそもインデックス投資が成り立つのは、アクティブ投資家がファンダメンタルズ分析を行って、その企業の適正な株価を発見しているからです。インデックス投資は、その成果にただのりしているわけです。

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これはインデックス投資家がまだ少なければ、タダ乗りで済む話ですが、米国のようにインデックス投資のほうがメジャーになると状況は変わってきます。ルール通りにしか動けない鈍重なインデックス投資家が、食い物にされる状況だって起こり得るわけです。

 

インデックス投資が普及したことで、つみたてNISAのような制度、eMAXIS Slimのような商品も登場し、バクチの道具だった投資が金融理論のもとに資産構築を行うものに変わってきました。これ自体は素晴らしいことです。でも、インデックス投資が主流になりすぎるにも困りものだというジレンマもあるわけです。

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*1:これが起きるのは、あくまでインデックス投資家が新たな資金を投入するときになります。つみたて投資とかがそうです。すでに保有しているインデックス投資分については、誰かが意図的に株価を上昇させてても、保有分も上昇するので影響はありません。Twitterで@yutori_ingさんにご指摘いただきました。ありがとうございます!