日興証券を使って優待クロスをしていた人たちに大打撃です。なんと日興最大の特徴だった「週末まで注文」ができなくなります。さらに「クロス取引の制限」もスタートします。
正直、「週末まで注文」はまぁ仕方ないかなと思いますが、「クロス取引制限」は他証券会社と比べてもかなり厳しいもので、実際には「仮装売買」以外の目的で使っている優待クロスもかなり行えなくなります。
「今週中」注文が不可能に
まず一般信用売りについて、これまで可能だった「今週中」注文が6月16日の21時からできなくなります。
【日興イージートレード】一般信用取引新規売建注文の「今週中」注文の取扱廃止について(2023年5月19日)│お客様へのお知らせ│SMBC日興証券
日興ではこの機能があったので、金曜17時過ぎに注文を入れれば翌金曜日の場が閉まるまでは注文が残り、あとから成行などに修正することでクロスを作れました。実質6日分、建てるのを遅らせて貸株料をセーブできました。でも、もうこれが不可能になります。
もっとも、ここに至るまで、
- 権利日をまたぐ場合の今週中注文が不可能に
- 信用保証金が足りなくなると、現金があっても翌朝に注文が失注に
といった改悪が続いてきたので、またしても改悪か……といったところでしかありません。そもそも今週中注文があるほうがおかしかったので、妥当な変更だともいえます。
クロス制限も開始
同じ6月16日の19時から、クロス取引の制限もかかります。これは「仮装売買」を禁止するための措置ということで、他の証券会社でもよくあるものです。
ただ、内容がかなりわかりにくい。記載には2つの要素があって、下記2つを規制するとしています。
- 国内株式のザラ場(取引時間)中に行う現物取引および信用取引のクロス取引
- 国内株式の現物取引同士のクロス取引
このうち(2)は簡単で、現物売りと現物買いのクロス注文です。日興証券において、現物の売買を行うことはまずなく、売りたければ信用売りして現渡ですし、買いたければ信用買いからの現引。なので、(2)のほうは無視して大丈夫です。
問題は(1)です。「ザラ場(取引時間)中に行う現物取引および信用取引のクロス取引」ということですが、発注事例には「寄前・ザラ場中ともに制限」という謎の注があります。これはどういうことか。
というわけで、要するにザラ場中に執行される注文は全部規制という意味のようです。つまり、オンラインで取引する限り、全部規制。対面証券なら、相対のクロスとかもできると思うので、それを除くという意味のようです。しっかし分かりにくいな。
ではどんな影響があるかというと、売り買いともに条件なしの成行注文ができなくなります。逆にいえば、下記のケース3のように、片方の注文を成行で入れていたら、もう一方のクロス注文は「寄付」か「引け」の条件を付けて入れればOK。まぁ他の証券会社でもよくある仕様ですね。
しかし、個人的に疑問なのは、ケース1をNGにして、ケース3がOKの理由。寄前の注文において、条件なしの注文と寄付注文で、違いがあるのでしょうか? うーん。分からない。詳しい方いらっしゃったら、ぜひ教えてください。
とはいえクロスに必須の日興
いろいろと改悪はありますが、それでも日興証券はクロスには必須の証券会社だと思います。理由はいくつかあって、
- 信用在庫が豊富なこと
- 信用取引手数料が無料なこと
です。まず信用在庫は豊富です。これは対面証券会社であることの強みでもあるでしょう。特に、オンライン証券の在庫のほとんどが短期在庫なのに対し、日興は長期在庫のみ。長期は貸株料も安いので、圧倒的に有利です。
- 日興(一般長期) 1.4%
- 楽天(一般長期)1.1% (一般短期)3.9%
- SBI(一般長期)1.1% (一般短期)3.9%
- カブコム(一般長期)1.5%
さらに信用取引手数料が無料。楽天やSBI、カブコムは大口を獲得しないと手数料無料になりません。大口のハードルは下がったとはいえ、定期的に更新するのも面倒。日興はほんとに便利なわけです。
というわけで、「今週中注文」という日興ならではの特徴がなくなり、他社並みの「クロス取引注文制限」が入ったことで、日興も多少普通の証券会社になりました。でもまぁやっぱりここがメインかなと思うところです。