FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

50周年『ウォール街のランダム・ウォーカー』第13版 インデックス投資はマルクス主義より悪い?

『ウォール街のランダム・ウォーカー<第13版>』が登場しました。12版との差異はいくつかありますが、「50周年記念版(第13版)まえがき」はその一つ。50年経って、インデックス投資が世に受けいられたこと、そしてその正しさは実際のリターンとして現れたことが書かれています。わずか数ページの項目ですが、実は本書全体のサマリーでもあります。

 

でも今回は、敢えて「エピローグ」に目を向けてみます。エピローグのほうは、実は12版から大きくは変わっていません。でも、インデックス投資がこれからどこに向かうのか、これからもインデックス投資が最強であり続けるのかについて、重要な示唆を提供しています。

アクティブからパッシブ(インデックス)への流れ

米国では2018年にアクティブ運用の運用額をパッシブ運用(インデックス運用)が抜きました。

2026年までにパッシブ運用がアクティブ運用を追い抜く可能性 | Bloomberg | ブルームバーグ

一方、日本では公募投信の最大ファンドがインデックスになるなど、インデックスが急速に伸びていますが、それでも22年夏の時点で、インデックス運用の比率は25%といったところです。

インデックス型投信の残高増加 シェア25%に迫る - 日本経済新聞

いわば、米国はインデックス先進国なわけですが、アクティブよりもインデックスのほうが大きいとなると、当然インデックス批判も出てきます。

インデックス投資は「マルクス主義よりも悪い」

ウォール街のランダム・ウォーカーのエピローグで触れられている批判が、インデックス投資は「マルクス主義よりも悪い」というものです。

  • サンフォード・C・バーンスタイン&カンパニーのストラテジスト、イニゴ・フレイザー=ジェンキンスは、「マルクス主義よりも悪い」と言った。

多数の投資家が受け身でインデックス投資を行う資本主義は、国家がすべての資本配分を行う中央計画経済よりも有害だというのだ。そしてインデックス投資は、企業の収益性とか成長性を一切考慮することなく、ただ機械的に資金を決められた入れ物に流し込むだけだと非難する。新しい情報を適切に株価に織り込む役割を果たすのは積極運用マネジャーなのに、インデックス投資が増大した結果、19世紀末、ロックフェラー財閥による石油トラスト以来、初めて有害な所有の集中を引き起こしていると警告したのだ。 

けっこう過激な批判ですね。もちろん、ファンドマネージャーのいうことですから、ポジショントークではあります。ファンドマネージャーがインデックスファンドを認めたら、自らの存在意義を否定するようなものですから。

  • Hargreaves LansdownのファンドマネージャーであるDavid Smith氏は、パッシブ投資家を金融システムの寄生虫と呼んだ

  • ゴールドマン・サックスの投資運用部門のグローバル共同責任者であるティム・オニールは、パッシブ投資が大きくなりすぎると、市場が機能しなくなると投資家に警告した。

インデックス投資家はフリーライダーか?

非難の一つは倫理的なもので、インデックス投資家はフリーライダーだというものです。アクティブ運用者がいるからインデックス投資がなりたつのに、インデックス投資家はそのコストを負担していないと。

 

この批判に対し、著者は「確かにフリーライダーだ」とします。でも、その上で、それは資本主義の強みだと話します。

確かに、インデックス投資家は、いわゆるフリーライダーだ。積極運用に伴う活発なバイバイがもたらす。効率的市場のメリットを、そのためのコストを一切負担せずに享受しているからだ。しかし、こうしたただ乗り行為は、決して資本主義の欠陥と非難されるべきものではない。それどころか、これこそが、資本主義経済の強みであり、無数の人々が参加する決定する市場価格に便乗して、すべての参加者がそのメリット、享受するシステムなのだ

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ほんのちょっとアクティブ投資家がいれば、それでOK

確かにアクティブ運用による価格発見機能が、インデックス投資の根幹となっています。でも、そのためにはほとんどがアクティブ運用をする必要はなく、ほんのちょっとでいいといいます。

自由で開かれた市場では、インデックス投資から何百万人いようと、こうした割安状況があれば、必ず利益を得ようとして行動を起こす人たちが存在する。そして、その結果はというと、ますます多くの積極運用投資家が市場平均に負けているのだ。ここから得られる結論は、インデックス運用が増加しているにもかかわらず、市場はますます効率的になってきているのであって、その逆ではない。

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インデックス運用会社に権力が集中

とはいえ、インデックス運用がマジョリティになることには課題もあります。一つが、インデックスを運用する会社の議決権があまりに大きくなり、権力が集中するということです。

 

日本でもETF購入を通じて、日銀の企業に対する保有比率が高まっていることが課題として言われてきました。例えば、ファーストリテイリングの株式の20%を日銀が保有しているのです。

そのため、日銀やETFの運用会社が企業経営に影響力を持つことが可能です。これは確かに難しい問題で、全く議決権を行使しないのはそれはそれで問題となりますし、どんな方針で議決権を行使するかも問題です。

 

ウォール街のランダム・ウォーカーのエピローグでは、著者は次のように書いています。

私はインデックスファンドの生みの親で現在7.5兆ドル以上のファンドを運用するバンガード・グループの社外取締役を長年務めてきた。その経験に照らしていえる事は、同社が企業間競争を制限する方向で議決権を行使したことは1度もなかったと断言できる。

しかしこれはバンガードが高潔だということは言っていても、権力を持っていないことは意味していません。もしインデックスファンドのシェアがこれまで以上に増加していくなら、企業のガバナンスの観点では、何らか歪みが生じるのかもしれません。

 

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