貸株というのは手持ちの株を証券会社に貸し出すことで金利を得られるサービスです。ETFなどのメジャーで巨大な銘柄は0.1%とかですが、マイナーで小規模な会社は5%近い金利が得られます。これを活かして「貸株クロス」を試してみました。
貸株クロスの概要
貸株は銘柄によってはかなりの金利を得られます。下記は5月末の楽天証券における貸株金利の高い銘柄です。え、5%とか7%とかの金利が付くの? これはかなり美味しそうに見えますよね。
ただし、このように高い貸株金利がつく銘柄は、空売りしたいという投資家が多い銘柄だということを意味します。つまり多くの投資家が株価下落を見込んでいる。つまり高い貸株金利を目当てに現別を保有しようものなら、すごい勢いで株価が下落するリスクがあるということです。
例えば貸株金利7.5%が付くエッジテクノロジー(4268)の株価推移は下記の通り。1年で35%の下落です。要するに、だいたいこういう銘柄だということです。
ならば、同じ銘柄を信用売りすれば、株価下落を防げるのではないか? というのが「貸株クロス」の考え方です。両建てすることで株価変動をヘッジし、高い貸株料だけを得るという作戦。もちろん、信用売りには貸株料の支払い(こっちも貸株料です)と制度信用なら逆日歩が発生するので、それを上回る受取貸株料が必要ということになります。
貸株クロスの条件
貸株クロスで利益を得るには、そもそも信用売りできる銘柄でないといけません。この条件だけで、ほとんどの銘柄が抜け落ちます。その上で、一般信用ならば支払い貸株料よりも受取貸株料のほうが高い必要があります。また、制度信用なら、支払い貸株料1.1%+逆日歩が、受取貸株料よりも小さい必要があります。
この条件を満たすものとして、今回選択したのが出前館(2484)です。これを楽天証券で建ててみます。
- 受け取り貸株料 5.25%
- 支払い貸株料(制度) 1.1%+逆日歩
つまり、4.15%のリターンが基本見込まれるということです。ただしその他コストとして、1ヶ月毎に名義書換料がかかるのと、逆日歩が発生するリスクがあります。
約1ヶ月間貸株クロス実践
というわけで、4月11日から5月17日までの約1ヶ月間、楽天証券で実際に貸株クロスしてみました。当初の想定どおり、この1ヶ月で株価が大きく下落。約21%価値が減りました。
今回取ったポジションは現物1万株。1ヶ月で結局76万円の損失が出ました。
一方の信用ポジションのほうは、逆に76万円の利益が発生しています。そしてコストとして、貸株料が4238円、名義書換料が1100円の合計5338円かかりました。
これに対し、受け取った貸株料は4月分が7580円。5月分が5562円。合計で13,142円。
コストを差し引くと7,804円の利益を出すことができました。ロングポジションには3,270,000円かかっているので、単純利回りにすると0.24%。年率に換算すると2.42%のリターンを得たことになります。ものすごいリターンではありませんが、遊んでいる資金の有効活用という意味では悪くありません。
幸いなことに、一度も逆日歩は発生しませんでした。
逆日歩を日々チェックする
今回始めて貸株クロスをやってみましたが、こちらの最大のリスクは逆日歩です。出前館の貸株クロスポジションでは、だいたい毎日330円程度の貸株金利受取となっていました。
一方で逆日歩が発生した場合、最高料率は1日あたり1円。1万株だと100,00円にも達します。もしMAXが出た場合、1ヶ月分の受取貸株料を失うことになる計算です。
実際のところ出前館では0.2円程度の逆日歩がつく場合がありました。その場合、今回だと2000円/日で、けっこう大きなダメージです。また定常的に0.05円が付いていた時期もあって、その場合500円/日と受取貸株料を上回ってしまいます。
下記が出前館の逆日歩と、買残、売残の推移です。売残が積み上がると逆日歩が発生すること分かります。
これを見て、5月17日、急激に買残と売残が膨らんだため、安全策を取ってポジションをクローズしたのでした。
貸株クロスの注意点
貸株クロスには2つ注意点があります。1つは事務管理費です。今回は1ヶ月をわずかに超えたため、1100円の手数料が発生してしまいました。これは1銘柄のMAXコストです。1株あたり11銭かかるので、1万株だとちょうど1100円。こんなことならもっと株数を増やしたほうがお得だったかもしれません。
ちなみにこの事務管理費は、日興証券の場合発生しません。その代わりに支払い貸株料が1.15%と0.05%ほど楽天よりも高いのですが、300万円のポジションで1か月あたり12円なので、ぜんぜんこのほうがお得ですね。日興に置いている長期保有銘柄がないので代用有価証券を使えず、別途証拠金を入れなくてはいけないデメリットはありますが、1ヶ月を超えるポジションなら日興証券のほうがよかったです。
2つ目は税金です。現物と信用の譲渡益、そして支払い貸株料や事務管理費はすべて通算できますが、受取貸株料だけは合算できない雑所得となります。雑所得は源泉徴収されないため、税金を支払う場合は確定申告を行い、累進課税である総合課税となります。
雑所得は最悪の税制といわれますが、雑所得内での通算は可能だし、総合課税にかかわる所得控除などで消し込むこともできるので、所得が小さい人にとっては逆にメリットがあったりします。このあたりは別記事を。
というわけで、今回は貸株クロスで7000円ほど、年率換算で2.4%のリターンを得てみました。出前館以外にも候補となる銘柄はいろいろあるようです。