FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

元本レバと値動きレバ 2つのレバレッジ手法

最近、投資手法といえば「オルカン全振り」でいいんじゃないかという風潮があります。全くもってこれに賛同してるんですが、オルカン全振り=全世界株式インデックス投資がファイナルアンサーではなく、その発展として2種類の方向があると思っています。

 

1つはマルチアセット。株式インデックスと相関しないアセットを組み込むことで、リターンに対するリスクを軽減するという手法です。ただし、この手法を取ると絶対的なリターンは減少します。ただリスクは減っているので、リスクを同レベルまで膨らませてあげれば、リターンは上昇します。そのための手法が2つめ、レバレッジです。

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レバレッジについては「危険」「触れてはいけない」などの「厳禁」的な話ばかりで、ではなぜ危険なのか、使い道はないのか? といった建設的な話がほとんどありません。そこで今回は、レバレッジといっても大きく2つの手法があるというところを見ていきます。

元本レバレッジ

一つの目のレバレッジ手法は元本レバレッジです。投資というのは、何等かの元本を元でに行うもので、投資のリターンは元本がどれだけ増加したかで測られます。ということは、元本を借り入れてくれば、リターンはそれだけ増加することになります。これが元本レバレッジです。

 

元本レバレッジの主なものとしては、

  • (不動産における)ローン
  • (株式取引における)信用取引
  • (FXやCFD、オプションにおける)証拠金取引
  • 証券担保ローンなどを使った借り入れ

などがあります。いずれも借金をして元本をふくらませる手法です。

 

元本レバレッジのメリットは、計算が簡単で比較的リスクも把握しやすいところでしょう。例えば、100万円の元本のところ、100万円借金してきて、合計200万円を投資すれば、2倍のレバレッジをかけたことになります。

 

このときうまくいけば利益も2倍になるので、もともとの手持ちの元本100万円から見ると、リターンは2倍になります。もちろん、下がったときの損失も2倍になるのでつまりボラティリティも2倍になるわけですが、だからといって後述する値動きレバとは違い”減価”は起こりません。

 

他方のデメリットは、ひとえに強制ロスカットです。こちらの計算はけっこうややこしく、レバレッジ率を上げるにつれて、ロスカットの可能性が高まる形になります。

 

シンプルな信用取引を例に取って見てみましょう。国内株式の信用取引は、売買する額の30%分の保証金が必要です。つまりレバレッジ比率は3.333倍です。

 

ところが株価が下落するとその損失額が証拠金から引かれます。証拠金が30%を下回る(証券会社によって違い日興だと25%)と、追証といって、追加の証拠金を求められ、払えないと強制的に決済され損失が確定されます(強制ロスカット)。

この追証の計算ですが、下記のような式になっています。

委託保証金率=(現金+代用有価証券評価額)÷建玉約定代金×100

株価が下落して建玉評価額が小さくなると、次のようになります。

委託保証金率=(現金−損失額+代用有価証券評価額)÷ (建玉約定代金 − 損失額)×100

これをグラフにしたのが下記です。縦軸は委託保証金維持率でこれが30%を下回ると追証が発生します。横軸は建玉の損失率です。そして複数の線は初期のレバ比率です。3.33倍というのは当初の証拠金比率30%を意味します。

 

当然のことですが、証拠金維持率がギリギリの30%(3.33倍)だとちょっと下落しただけで追証となりますが、レバ比率2.5倍(当初証拠金40%)なら15%程度の下落までは大丈夫。レバ比率2倍(当初証拠金50%)なら27%程度まで耐えられます。

7割の証拠金を積んでスタート(レバ比率1.43倍)すれば、株価が半減しても委託証拠金保障率は30%を切らないわけで、インデックス投資であれば比較的安全なレバ比率(最悪でもドローダウンは50%程度だった過去から見ると)だと言えそうです。

 

このように元本レバレッジは、減価が発生せずリスクもリターンも同じように増加させられ、かかるコストは年利だというわかりやすさがあります。唯一のリスクはロスカットで、こちらの管理は上図のようにけっこう複雑。

 

ちなみに元本レバにはチートがあって、不動産ローンにおいては評価額が下落しても追証もロスカットも求められないという、借りて有利なコベナンツとなっています。

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値動きレバ

値動きレバとは何かというと、ある銘柄がその日10%上昇したら20%の上昇になるように処理し、10%下落したら20%下落になるように処理するものです。

 

元本レバで2倍のレバレッジを掛けていた場合、初日は10%上昇したら元本から見ると20%上昇していて同じですね。ところが翌日は異なります。元本レバは上昇しようが下落しようがそのままなのに対し、値動きレバの場合、 翌日も値動きの2倍のレバレッジとなるように調整を行うのです。

 

これは値動きレバが、毎日レバレッジ料を調整するリバランスを行っていることに起因しています。先物を使って持ちっぱなら、これは元本レバと同じなのですが、実際は純資産のちょうど2倍になるように=翌日も現物の2倍の値動きになるように先物ポジションを調整しています。

まず純資産100億円なら200億円相当の先物を買い持ちする。翌日に日経平均やTOPIXが10%値上がりすると先物も10%値上がりして20億円の利益が出る。この利益分だけ純資産が増えて120億円になる。このとき先物は220億円分を保有しているが、翌日も「2倍の騰落率」を維持するためには20億円分の先物を買い増しして240億円相当にする必要がある。

反対に株価指数が10%値下がりすると先物から20億円の損失が発生し、純資産も20億円減って80億円になる。先物は180億円相当を保有しているので、純資産の2倍の160億円にするため20億円分を売却しなければならない。

レバレッジ型ETFの落とし穴 |ニッセイ基礎研究所

これはどういうことか。要するに、毎日ポジションを調整して「上がったらさらに買い」「下がったら売る」という順張りのリバランスを行っているということです。これはアセットアロケーションを一定比率に保つリバランスとは逆のリバランスです。

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値動きレバレッジのメリットは、仕組み上、毎日リバランスするので、追証や強制ロスケットに当たるイベントが発生しないということです。リバランスによって、レバレッジ比率を毎日一定に調整しているからです。このロスカットを意識しなくていい、つまり証拠金の管理をしなくていいというのは大きなメリットですね。

 

一方でデメリットもあります。それは減価です。減価というのは、順張りリバランスに特有の現象で、ボックス相場でリターンが悪化する現象を指します。これは日次リバランスによってリターン計算を毎日リセットするため、最終リターンが毎日のリターンの積になることに由来します。

 

例えば毎年のリターンが下記のようになっていたとしましょう。これを単純に平均すると5.28%です。ところが実際にこのリターンで資産を運用すると、年平均の増加率は3.3%に減ることが分かります。

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どういうことかというと、単純に足し合わせて標本数で割る算術平均よりも、全部をかけ合わせて、標本数のn乗根を取る幾何平均のほうが小さくなるからです。これが、ボックス相場でレバレッジETFが減価する原因です。

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この場合、幾何平均(G)と算術平均(A)の関係はボラティリティ=標準偏差σに依存して、下記のような式で計算できます。

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つまり、値動きレバレッジによってリターンも2倍に、ボラティリティも2倍になるわけですが、ボラティリティの2乗の半分がリターンから差し引かれれることになります。

 

もっとも、この減価が起きる仕組みは悪いことだけではなくて、相場が一方向に動き続けた場合は、順張りリバランスがプラスの方向に影響して、元本レバよりも上昇が強化されるというメリットもあります。

 

 

レバレッジをかけるか掛けないか

このように、レバレッジには元本レバと値動きレバの2種類があり、一見似ていますが、そのリスクがけっこう異なることを見てきました。値動きレバは順張りのレバレッジの結果発生するので、元本レバにおいても、自分でリバランスを行えば同じような効果が起こります。その頻度によって、中間の位置づけのポジションを作ることもできるでしょう。

 

元の話に戻ると、マルチアセットを保有することでリスクあたりリターンを改善しても、そのままでは長期リターンの減少で終わってしまいます。しかしレバレッジを掛れば、リターンを同一で、リスクを減らすことができます。

 

ところが、元本レバレッジには強制ロスカットの可能性があり、値動きレバレッジには減価のリスクがあります。元本レバは、レバレッジを掛けすぎるとちょっとした変動で強制ロスカットされる場合があり、インデックスであっても1.5倍あたりが安全圏です。

 

値動きレバレッジは、計算上、やはり1.7〜2倍あたりが確率的にピークで、それ以上のレバレッジは平均値の期待値はともかくとして、中央値の期待値が下がることが知られています。ところが多くのレバレッジ商品は3倍とかで、理論から導かれるよりも少々レバレッジ掛け過ぎなんですよね。

 

結論としては、マルチアセット構成でリスクあたりリターンを向上させる(=シャープレシオを上げる)ことは重要。ただそれを実際のリターンに結びつけるのはレバレッジが必要で、といってもレバレッジはロスカット/減価のどちらかをコントロールしなければならず、意外と大変だということです。

 

また現物の保有ならば問題になりませんが、信用取引だと期間に応じた事務手数料や、配当金に対する不可思議な課税(現地課税etc)など、いろいろな要素が関わってきます。

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またCFDやディープITMのオプションなどを使った場合、今度は収益が分離課税雑所得になり、株式などと損益通算できず、確定申告も必須だという面倒なことが起きます。

 

一番簡単なのはレバレッジETFを使うことですが、減価の管理はロスカット管理以上に難しく、算術平均>幾何平均となる構造上、長期投資には向かないというのは定番の意見です。

 

このように、レバレッジはけっこうややこしい。ぼくは特に若いうちは人的資本が金融資本よりも大きいので、金融資本にレバレッジをかけて運用すべしという、ライフサイクル投資術の手法に賛同するのですが、これに対応した金融商品がないというのがけっこう難しいところだったりするわけです。

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