このところ金利上昇が進んでいますね。住宅ローンや不動産投資ローンなどを引いている人は、この金利上昇で大きなダメージを受けています。ぼくの場合、あれよあれよという間に金利が上昇、そして返済額も上昇。これはさすがに高すぎだろ? ってところまで行きました。
そんなとき、何かでお付き合いのあった家の近くの信金さんから、「借り換えの提案を……」というお誘いが。借り換えについてトライしてみました。
収益不動産ローンは長期プライムレート連動が多い
金融機関の金利は、短期プライムレート、長期プライムレートに連動して決まります。それぞれプライムレートは金融機関が優良貸出先の融資をする際に基準となるもので、長短で少し意味合いが違います。
- 短期プライムレート 住宅ローンの変動金利に作用。政策金利の影響を受ける
- 長期プライムレート 住宅ローンでは固定金利に作用。長期金利(10年もの国債金利)の影響を受ける
一般的には長期プライムレートのほうが高いものですが、このところは実は短期プライムレートのほうが高いという状況が続いていました。そのためか、住宅ローンの変動金利は短プラ連動ですが、収益不動産の変動金利は長プラ連動が多いようです。
住宅ローンの金利推移を解説!物価上昇、金利上昇抑止はどう影響する?|住宅ローン|SBI新生銀行
日銀によると、直近6月11日の長短プライムレートは次のようになっています。上記のチャートの続きになりますが、2024年に入ってから長プラが安定的に短プラを超えるようになってきました。
- 短期:最頻値 1.475%(2009年1月以来変わらず)
- 短期:最低値 1.475%
- 短期:最高値 1.725%
- 長期 1.8%
さて、この長短プライムレートは最優遇金利なので、実際はここに上乗せ金利(スプレッド)が乗って、適用金利が決まります。例えば、長期プライムレート1.8%+スプレッド1%+優遇0.5%→適用金利2.3% みたいな感じです。
ぼくの金利に何が起こったか
こうした金利の決まり方の中で、ぼくのアパートの金利は次のような条件でした。
- 長期プライムレート連動(当時1.5%)
- スプレッド 1%
- 適用金利 2.5%
これを見ると「結構高いな」と思う人も多いと思います。ぼくも最初はそう思いました。実際には、1.9%の提案をしてきた金融機関もあったのですが、そちらは木造の耐用年数22年未満のローンしか組めませんでした。つまり築年の物件なら19年です。
一方で、上記の金利の提案をいただいた金融機関は期間30年です。不動産投資において、利益の源泉は不動産の運用利回りと借入金利の差(スプレッド)であることは理解しているのですが、期間が長いほうが早期にCFが出ます。このCFをもとにIRR評価したところ、2.5%・30年のほうが有利だったというのが、当時の状況でした。
ところがその後日本の長期金利はジワリジワリ上昇し、年1回改定となっている長プラも上昇。月々の返済額もどんどん増えていきました。
この7月からはついに3.1%です! いくらなんでもこれは高いですよね。
金利が上昇すると返済額も増えるのですが、金利が2.5%→3.1%へと24%増加しても、返済額は24%上昇するわけではありません。ざっくりいうとぼくの条件の場合8%程度の増加にとどまります。これは金利の計算式から導き出されるので、関心のある人は調べてみると面白いです。そして、金利が上昇した場合、その時点の元本をもとに再計算して支払額を決めます。そこまでに元本の返済が進んでいるので、そういう意味でも金利上昇分ほどの負担増にはなりません。
とはいっても、当初31.6万円の返済だったものが、金利が3.1%まで上がると34万円まで返済額が増えます。月々2.4万円のアップ。これは「小さい」では片付けられない額です。
近所の信金さんから提案
そんな中、近所の信金さんから提案がありました。
「3.1%は確かに高いですね。ウチなら2.5%までなら下げられます」
ほほー。0.6%ダウンする! それは大きい。月々の返済額でいうと2万円くらい減ることになります。
実際にはどんな手続になるのでしょうか。まず残っているローン残高について、こちらの信金が新たに融資します。金消契約を結ぶってことですね。その上で現在借りている金融機関には繰り上げ返済を依頼し、信金から全額振込みをしてローンを解消する形です。
もちろん土地建物の担保設定も変えるので、現在の金融機関には担保設定を抹消してもらい、この信金が新たに担保設定をします。ここで司法書士とかが手続きするため、数十万円くらいのコストはかかるということでした。
ただ続いて言われました。「借り換えの話を持っていくと、現在の金融機関も条件を変更してくることが多いです。顧客を奪われたくないですからね。ただそのように後出しされるとこちらとしても困るので、ウチに決めたら後出しの話には乗らないでください。決めていただけたら、行内の稟議に回します」。なるほど。
借り換えのメリット・デメリット
さて借り換えを行うと、金利が低くなるというメリットがあります。ただし担保抹消・再設定などのコストのほか、審査費用などもかかる場合があり、0.5%〜1.0%くらいは金利が下がらないとメリットが出ないともいわれています。
さらに借り換えを行ってしまったら、当然現金融機関はいい気持ちにはなりませんよね。下手をすると出禁になってしまうとも聞きます。次の物件の購入を考えたときに、相談できる金融機関を一つ失うというのはデメリットです。
さてさて、どうするか。取り急ぎ、現在借りている金融機関に「近くの信金さんから、こんな提案をいただきまして。一度ご相談のお時間をいただけませんか」と打診を入れてみました。その結果は……。
→後編:金利が高いので、不動産ローンの借換えにトライした実践記(後編)