最近、寄付について関心を持つ中で「寄附金控除」についても調べているのですが、これかなり難しいですね。できるだけ分かりやすく、全体像を把握しておきたいと思います。
- 最初にまとめ:半額が戻ってくる
- 所得税における、所得控除と税額控除
- 所得税の寄付金特別控除(税額控除)には上限がある
- 所得税の寄附金控除(所得控除)は所得の40%が上限
- 寄付先によって控除できるものが違う
- ふるさと納税との併用
最初にまとめ:半額が戻ってくる
まず最初にまとめると、寄付金に関する税金の扱いは次のようになります。普通の人、普通の寄付先に特化して細かな例外は後ほど解説します。
- 寄付した額の40%が戻ってくる(所得税)
- 寄付した額の10%が戻ってくる(住民税)
- 確定申告が必要
- ただし寄付額から2000円を引いて計算
例を挙げると、1万円を寄付した場合、2000円を引いた8000円に対して、所得税が3200円、住民税が800円、合計4000円が確定申告によって還付されます。2000円を加味しなければ、半額が戻ってくるイメージです。
ただ逆に言えば、寄付した金額に対しても50%の税金が取られるという意味であり、寄付税制についてはまだまだ発展途上だと思います。
所得税における、所得控除と税額控除
では細かな条件や例外を解説していきましょう。まず所得税の寄附金控除についてです。実は2種類の控除法があります。
- 寄附金控除:所得控除
- 寄附金特別控除:税額控除(最初の例)
ほとんどの場合、税額控除である寄附金特別控除を使うほうがお得です。というのも、計算式が下記のようになっているからです。
- 寄附金特別控除:税額控除の還付計算式 (寄付金額-2000円)×40%
- 寄附金控除:所得控除の還付計算式 (寄付金額-2000円)×所得税率
所得税率が40%を超えれば、所得控除のほうが有利になるのですが、それは所得1800万円以上(年収だと2300〜2500万円以上くらい)の人のみ。超高収入の人だけは所得控除も検討しましょう。
所得税の寄付金特別控除(税額控除)には上限がある
実は所得税の寄附金控除には「控除は所得税額の25%まで」という上限があります。つまり、所得税額が40万円だったら10万円までしか控除されないのです。寄附金控除は寄付額の4割ですから、この場合、25万円寄付したら控除額は10万円になり上限に達することになります。
具体的にイメージしにくいので、表とグラフにしてみました。所得(年収ではない)が上がるに連れて税額も増える(累進課税なんで)ので、控除可能な上限寄付額も増加します。所得400万円なら控除できる最大寄付額は23万2813円ということです。
所得額に対して、控除できる上限寄付額が何パーセントなのかをグラフにしました。うーん。米国では「所得の10%を寄付しよう」と提唱する方もいますが、少なくとも所得額が900万円を越えないと、10%寄付しても無効になってしまうことが分かります。
所得税の寄附金控除(所得控除)は所得の40%が上限
一方、所得控除のほうは所得の40%が上限になっています。つまり寄付額が大きい場合は税額控除だと上限に達してしまいますが、所得控除ならかなりの額を控除できます。そのため、税額控除と所得控除のどちらが有利かは、課税所得額と寄付金額の両方の影響を受けます。
基本的には税額控除のほうが有利なのですが、所得が大きい(税率が高い)場合や、多額の寄付を行う場合は*1、所得控除のほうが有利になります。
日本福祉大学資料を見ると、課税所得1500万円以下かつ寄付額が年間100万円以下ならざっくり税額控除のほうが有利になります。ただし課税所得が400万円以下だと、寄付額50万円以上から所得控除のほうが有利に。けっこう複雑なのです。
税額控除と所得控除はどちらも対応している寄付先があるので、確定申告の場合は有利な方を選択して申告できることになります。
寄付先によって控除できるものが違う
さて寄付の控除には所得税の控除と住民税の控除があることを見てきました。しかし、実は寄付先によって控除できたりできなかったりするのです。
- 所得税控除
- 所得控除
- 税額控除
- 住民税控除
- 都道府県分
- 市区町村分
※ふるさと納税と他の寄付金控除は併用できる?控除上限額への影響や注意点を解説 | ふるラボ
まず注意すべきは、「認定NPO法人」以外のNPO法人への寄付は、所得税控除の対象外ということです。認定NPO法人というのは、ざっくり「年間3000円以上の寄付者が100人以上いる」などの条件を満たしたものが、申請して認定されるもので、その数は1294しかありません。
まぁ体制もしっかりした大手だと考えればいいでしょう。NPOへの寄付は、寄附金控除を考えるなら認定NPOが対象になります。
また赤十字への寄付は、税額控除が選択できず所得控除のみなのも注意です。なおユニセフの場合、公益財団法人なので税額控除も対象です。このあたりのややこしさが、ほんとダメですね。
さらにややこしいのが、住民税の寄付金控除です。住民税10%も税額控除されるのですが、次のようなルールです。
- 都道府県指定の場合、4%が税額控除
- 市区町村指定の場合、6%が税額控除
つまり指定されていないところへ寄付しても控除はありません。ところが、寄付先の団体を見ても「◯◯県指定」とか「◯◯区指定」なんて書いてあるところは稀で、自分が住んでいる都道府県や市区町村のWebにいって、寄付先が指定されているか調べる必要があります。これもイケてません*2。
下記が東京都が指定する対象の団体です。多くの場合、本拠を東京都に置くものが対象です。
市区町村の指定団体は実は以外と少ないです。ざっと調べたのがこちら。
- 新宿区:新宿区社会福祉協議会および新宿区社会福祉事業団の二団体のみ
- 渋谷区:渋谷区勤労者福祉公社、渋谷区文化・芸術振興財団、渋谷区社会福祉事業団、渋谷区社会福祉協議会の4団体
- 目黒区:目黒区社会福祉協議会、東京都共同募金会、日本赤十字社東京都支部
- 世田谷区:59団体
- 港区:474団体
- 中央区:開智学園、シルヴァーウィング、中央区社会福祉協議会、トーリケアネット、ひかりの子、道輝会
- 豊島区:100団体
- 板橋区:50団体くらい
- 練馬区:46団体
そんなわけで、寄付先選定の際には、所得税の税額控除が可能かどうか、そして都道府県や市区町村の指定に入っているかもチェックしておくと安心です。税金が少なくなれば、その分多く寄付できますからね。
ちなみに効果的利他主義(EA)において、最も寄付金を効果的に活用している世界中の団体を調査してランキングしているGive Wellでは、トップ団体を4つ挙げています。しかしこれらは海外の団体のため、国内の税制では全く控除の対象になりません。つまり、寄付金控除ができるなら1万円寄付できたところ、税金が取られてしまうため6666円しか寄付できないのです。
ふるさと納税との併用
最後に一つ。実はふるさと納税も寄付金の一つとして取り扱われます。では、寄付を行うことでふるさと納税の上限額に影響があったりするのでしょうか?
詳細は下記の記事に詳しく書いてありますが、結論を言えば「ふるさと納税を含めた寄付金額が、総所得の40%を超えなければ影響なし」となるようです。
通常の寄附金控除は「控除は所得税額の25%まで」という上限設定がありましたが、基本的にふるさと納税のほうが上限が厳しいです(詳細は下記記事を)。そのため、多少の寄付金ではふるさと納税に影響することはまずありません。
*1:税額控除は所得税額の25%が上限のため。
*2:ちなみにユニセフはどの都道府県が指定していて、どの市区町村が指定しているかをまとめています。さすがです。ただし指定している都道府県は、東京・埼玉・神奈川・岡山の4つだけ。市区町村も限られていて、例えば東京でも港区・三鷹市・武蔵野市しか指定されていません。