これまで、なぜ寄付をしようと考えるようになったか(1)・(2)とか、感情よりもその効果に基づいて寄付先を考えようとか、僕は長期主義者として今困っている人というよりも人類の発展のために寄付しようとか、そういう記事を書いてきました。寄付にまつわる前提となる考え方を、自分の頭を整理しながら綴ってきた形です。
今回は、では具体的にどこに寄付するか? でブラックリスト、つまりこういうところには寄付しないほうがいい、というところを考えてみます。
認定NPO法人かどうか
国内の寄付先として、よく思いつくのが慈善活動の主体となっているNPO法人でしょう。でも、NPO法人も千差万別。ただし、大きく分けてNPO法人と認定NPO法人の2つがあります。
NPO法人を作るのは簡単ですが、認定NPO法人は、広く一般から寄附を受けるなど支持を受けていること、活動や組織運営が適切に行われていること、法人に関する情報をきちんと公開していることなどの基準をクリアする必要があります。
どんな基準かというと、パブリック・サポート・テスト(PST)というもので、次の3つのいずれかの基準を選んでクリアするというものです。
- 絶対額基準:通常直前5年で、3000円以上の寄付者が100人以上 または 3000円以上の寄付者の数が年平均100人以上
- 相対基準:通常直前5年で、収入金額のうち、寄付金の占める割合が20%以上
- 条件個別指定(都道府県・自治体別)
3の条件個別指定は、(1)や(2)の条件を緩和したり自治体独自の基準があるパターンです。
このように、認定NPO法人になるには、ざっくり見ると、「3000円以上の寄付者100人」を5年以上続けて集めたり、収入のうち寄付金が2割以上という状況を5年以上続ける必要があります。
内閣府には、認定NPO法人の全リストが掲載されていて、その数はわずか1288件。つまりこのPSTの条件が現実にはかなり厳しいということを意味しています。毎年3000円以上の寄付を100人以上から集める。これができているNPOはほんのわずかだということです。
PSTを通過するのが最難関ということですが、認定NPOになるには、そのほかにも条件があります。
- パブリック・サポート・テスト(PST)に適合すること。
- 事業活動において、共益的な部分の占める割合が、50%未満であること
- 運営組織および経理が適切であること
- 事業活動の内容が適正であること
- 情報公開を適切に行っていること
- 事業報告書等を所轄庁に提出していること
- 法令違反、不正の行為、公益に反する事実がないこと
- 設立の日から1年を超える期間が経過していること
- 欠格事由に該当しないこと
例えば、「運営組織および経理が適切」で「情報公開を適切に行なっている」とありますが、認定NPO法人であれば、上記の内閣府のリストからリンクをたどることで、事業報告書や役員報酬規定など、カネ周りの情報がほぼ同じフォーマットで確認できるようになっています。
活動報告書からカネ周りをチェックする
寄付にあたり、最も憤慨するのは寄付したお金が不正に使われていたりすることでしょう。もちろん、慈善活動でも人件費は必要だし、寄付金を集めるためにはマーケティング費用も重要です。ただし、妙に高額な役員報酬が支払われているとか、不可解な外注先を使っているとか、そういうのは避けたいですね。
決算書が公開されていれば、こうした問題の発生を抑制できるでしょう。例えば、下記は有名な認定NPO法人のフローレンスです。
ここから所轄庁の情報公開サイトに飛ぶと、事業報告書などが置かれています。
事業報告書の活動計算書を見ると、例えば経常収益が38.9億円で、うち寄付金が7.1億円。人件費が22.9億円、その他経費が9億円かかって、企業でいう利益にあたる当期計上増減額が2.5億円であることが分かります。
このように、必要な情報が公開されていて、他の寄付者も多く、活動が継続していることがある程度保証されているのが、認定NPOのメリットです。
また、もちろん税制的にも利点があります。認定NPO自体が税制のメリットを受けられるだけでなく、寄付した側も所得控除あるいは税額控除を得られます。
このように、内容がチェックされていてかつ税金的にメリットがあるということで、一つの基準となるのが認定NPOかどうかですy。もちろん、認定NPOでなければいい加減な団体だとはいえませんが、そこは玉石混交。自分でどんな団体かをチェックする必要があります。
認定NPOと同様の書類をサイトにアップしているところであれば、ひとまずは安心できるのではないでしょうか。例えば、有名なあしなが育英会は認定NPO法人とはなっておらず、実はここに寄付しても税制面の控除が受けられません。
それでもサイトでしっかり 決算報告を開示しており、2023年度の寄付金は53億円。ここから奨学金給付に23億円を使い、企業でいう利益にあたる当期計上増減額は5.7億円のプラスとなっていることが分かります。
複数事業を行っているかどうか
次にチェックしたいのが複数事業を行っているかどうかです。これは危ないかどうかとは別の話ですが、寄付したお金が適切に使われるかどうかに影響します。
認定NPOに限らず、成功しているNPOはより多くの人から寄付を集め、さらに規模が拡大していく傾向にあります。ところが規模が大きくなると、もともと目指していた活動以外にも手を広げて、いろいろなことを始める場合が多いのです。
そして寄付者からすると、これはあまりよろしくありません。寄付者は、その活動が最も効果的だと判断したから寄付をするわけですが、複数事業を行っている事業者に寄付してしまうと、どの活動にいくら使われるかは事業者の胸三寸となってしまうからです。つまり活動自体ではなく、その事業者を信頼して事業者に対して寄付することになってしまいます。
そのため、慈善組織の評価を行うギブウェルは、多岐に渡る活動を行っている組織を評価の対象から外しています。
数多くの活動に寄付を分散させている組織の場合、援助の効果を測定できるのは活動の一部でしかなく、全体の費用対効果を評価するのは難しいとギブウェルは考えています。
中には寄付者が寄付の範囲を特定のプロジェクトに指定できる組織もありますが、それが本当に意味を持つのかは疑わしいとギブウェルは言います。こうした組織は、目的を限定しない寄付も受けますし、おそらく組織内にプロジェクトの優先順位もあるでしょう。個人の寄付がひとつか二つのプロジェクトに集中し、他のプロジェクトにあまり資金が集まらなければ、目的を限定しない寄付をそこに振り向けるでしょう。
先日、1000万円単位の寄付を行った夢見父さん(@yumemititi)とのやり取りする中で、若年被害女性等の支援を行うColaboについては寄付を後悔しているという話がありました。それは、Colaboが沖縄の基地反対運動などの本来の趣旨とは違う活動にも手を広げているからだそうです。
実際にその団体のイベントや代表の講演に参加したり、信頼できる人からの紹介、新聞記事を読み、きちんとした団体だと判断しました。これまで10団体ぐらいに寄付して満足してますが、colaboだけは後悔してます。沖縄の反基地など貧困と関係ない活動まで広げたためです
— 夢見父 (@yumemititi) 2024年8月30日
海外への寄付ならギブウェル(GiveWell)
最後に、危ない寄付先ではなく、オススメの寄付先ですが、GiveWellが推奨する慈善団体という手があります。EA主義者が運営するGiveWellは、「1ドルあたり最も多くの命を救い、改善する慈善団体を探す」というミッションを掲げて活動している慈善団体です。活動自体が寄付で賄われていて、GiveWell経由で寄付することもできます(GiveWellはマージンを取りません)。
GiveWellの調査の結果、トップ4となった慈善団体は次の通りです。
- マラリアコンソーシアム 5000ドルで1人の命を救えると試算しています
- アゲインスト・マラリア財団 5500ドルで1人の命を救えると試算しています
- ヘレン・ケラー・インターナショナル 5000ドルで1人の命を救えると試算しています
- ニュー・インセンティブ 5000ドルで1人の命を救えると試算しています
GiveWellの試算は下記のように行われています。せっかく寄付するなら、より効果的に使われるところに行いたい。そう思うなら、こうした調査機関が評価するところを選ぶのも意味があります。
GiveWellまたはGiveWellを通じた寄付は、もちろんクレジットカードで行えます。グローバルな決済が、1枚のカードで簡単にできるなんて、これはすごいことだと改めて感じますね。
さて、GiveWellの残念な点の一つは、寄附金控除対象外だということです。日本の税制では、寄付を控除できるのは極めて限られた寄付先だけ。それがいくつか調べたぼくの結論です。つまり、あまり税制優遇を気にしすぎると、意味のあるところに寄付ができないということでもあるでしょう。