9月27日に自民党の新総裁、つまり新たな総理大臣が決まりました。5度目のチャレンジでその座を射止めた石破茂氏です。当初は緩和的な高市早苗氏が優勢と見られ、株式市場は円安&株高に振れていました。ところが石破氏に決まると急激に反転。大幅な円高と株安という、いわゆる石破ショックに見舞われたのです。
石破ショック
多くの人にとって、石破氏が選ばれるとは予想外だったのではないでしょうか。もう5度目となり、古い人のイメージもありました。高市vs小泉あたりを想定する人が多い中、決選投票の結果石破氏となりました。
※自民党総裁選決選投票の結果 石破氏215票、高市氏194票 - 産経ニュース
結果何が起きたかというと、市場の大反転です。いわゆる石破ショック。石破氏は総裁就任前に市場にショックを起こすという、これまでにないスタートとなりました。
日銀に対して「利上げはあほ」というなど緩和派と見られた高市氏が優勢と伝えられ円安が進んでいたところ、石破氏に決まりドル円は146円→142円へと急落しました。
日経平均も同様です。高市氏優勢という観測のもとで上昇していた日経平均は、金融課税に積極的と見られた石破氏に決まったことで時間外に急落。3万9500円→3万7500円とこちらの落ち方も激しいものでした。
実のところ石破氏の政策は?
では実際のところ石破氏の政策はどのくらい市場に悪影響があるのでしょうか。石破氏公式サイトには政策として「石破ビジョン」が掲げられています。これを見ると、とにかく地方、地方という、さすがは田中角栄の薫陶を得たと言われるだけのことはある、典型的な地方主義の自民党議員です。
そして石破ビジョンについては経済領域についてはほとんど触れられていません。
- 本来の自民党を取り戻す
- 新型コロナウイルス感染症対策
- 人口急減対策
- 多様な幸せを実現する医療・福祉
- 自立した安全・安心の国へ
- 内需主導型経済への転換
- ふるさと鳥取発展のために
経済政策は優先順位も最後から2つ目。その中身はというと、やはり地方重視の話が多い印象です。
- 内需中心の地域分散型、少量多品種・高付加価値型の経済に移行するため、地方の農林水産業、建設業、観光・サービス業などの潜在力を最大化し、魅力的な地方へ都市部からの300万人移住を実現します。
- 豊かな海底資源の活用により、資源・エネルギー大国をめざします。
- 賃金を適正化し、低所得者や子育て世代への支援で消費を喚起します。
総裁選に向けて公開された政策集からより具体的な内容をピックアップしましょう。
- デフレ脱却最優先の経済・財政運営、早急に経済対策を策定し、成長戦略をとりまとめる
- コストカット型経済から高付加価値創出型経済への転換
- 半導体など輸出企業を中心としたサプライチェーンを国内で整備
- 政府支出は人への投資を強化
- GDPのみならず、総合的な「幸福度・満足度」の指標を策定・共有
- 持続可能なエネルギー政策など
- た原発の利活用、国内資源の探査・実用化、地熱など採算性のある再生可能エネルギーの最適なエネルギーミックス
- 海洋資源を活かして資源大国
- イノベーションとスタートアップ支援
- 世界一 AI フレンドリーな日本」を堅持
- 核融合エネルギーの早期実現・産業化
- 量子コンピュータ開発、量子アプリケーション開発
- スタートアップ支援策を引き続き強化
正直、石破氏が関心があるのは「地方」そして「外交安全保障」であって、経済政策については特定の思いはないように見えるのです。まぁ総理としてはそのほうがいいんですけど。
WBSで石破氏が経済政策に答える
では実際のところ石破氏はどう考えているのか。ちょうど27日夜のWBSで石破氏にインタビューが行われていました(投資コーギーさんのポストを参照)。
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今後の金融政策のお考えは?
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石破「日銀と協調をとっていく。日銀を政府の子会社とは思ってないので、連携を密にしながらそれぞれが適切な判断をしていく」
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日銀に何か要請していくようなことはあるか?
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「そのようなことは致しません」
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日銀が金融緩和を手仕舞いしていく中で、「今すぐそれをやることには反対」と言っていたが、それは手仕舞いを丁寧にやってくださいということか?
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金融所得が多い人にはしっかり課税すべきという考えか?
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「それはこれから税調の議論になるのであって、総理たるもの、こうだという決めつけることはしない。貯蓄から投資の流れを棹さすようなことは致しません」
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総裁選のときはいろいろいいましたが、いざ総理になることが決まるとさすがに慎重。石破ショックを受けて、金融所得課税についてもぼかしたものの「貯蓄から投資は推進」と話しました。
結局岸田政策を継承
石破氏は挨拶でも「新しい資本主義にさらに加速度をつけてまいりたい」と強調したといいます。不人気かつ具体策のよく分からない岸田文雄政権のスローガンをわざわざ持ち出すあたり、岸田路線の継承を訴えたかったということでしょう。
政局的な憶測ですが、岸田氏は旧岸田派議員に「決選投票は高市氏以外」と指示したといいます。
石破氏は総裁選前々日の25日になって経済政策を追加発表し、岸田政権の施策を継続すると訴えた。これに旧岸田派の松山政司参院幹事長が呼応し決選投票で石破氏に投票するよう旧岸田派議員に呼びかけた。
岸田派を味方につけ、さらに菅義偉前首相も味方につけることで、総裁選に勝った形です。少なくとも経済政策においては、岸田路線から外れることはないということを意味します。
そんなわけで、石破ショックは起きたものの、経済政策については岸田路線継承。つまり市場は過剰反応だと見ています。まぁ高市氏のような積極緩和でもないので、早晩元のラインにもどるのではないでしょうか。