世の中に法人カードはいろいろありますが、その中でも最近評判が高いのがUPSIDERの法人カードです。とはいっても、このカードのキャッチコピーは「上場のための法人カード」。スタートアップなどをメインターゲットにしたカードということです。
でも、今回申し込んだら僕のようなマイクロ法人でも作成できたので、このカードについてお伝えします。
UPSIDERカード:上場のための法人カード
UPSIDERカードは昨今のスタートアップに大人気のカードです。UPSIDERというスタートアップが提供していて、「新規上場企業の20%が利用」していることをウリにしています。ざっと、特徴は次の通りです。
- 年会費・発行手数料無料
- 国際ブランドはVisa
- 最大10億円の限度額
- ポイント還元率1.0%
- 電子帳簿保存法・インボイス制度対応
- 多彩なガバナンスに対応
マイクロ法人向けの年会費無料のカードといえば、「三井住友カードビジネスオーナーズ」と「セゾンコバルトアメックス」が有名です。僕も両方とも持っています。ところが、両方とも還元率は0.5%。対してUPSIDERカードは1.0%と、完全に上位互換なわけです。
注目すべきはポイント還元率だけではありません。昨今の値上げムードの中で、三井住友カードは11月1日から外貨決済手数料を2.2%→3.63%に値上げします。クレディセゾンも12月4日から2.2%→3.85%に値上げです。現在のところUPSIDERは2.2%としていて、ドル建て決済が多い場合は気にすべきポイントです。
ちなみにポイントは1.0%還元で、還元されたポイントは1pt=1円で次回の引き落としに自動的に充当されます。変にカタログギフトとかに交換するのではなく、手間なくキャッシュフローを改善してくれるところには好感が持てます。
ただし、税金・公共料金の支払いは還元ゼロ。またFacebookとTikTok、Twitter、Microsoft広告については0.5%還元です。
UPSIDERカードは与信が法人になる
もう一つ、実は最大の違いは与信が法人だということです。世の中の法人カードは実は大きく2種類あります。法人自体に対して与信を付与して発行されるもの(コーポレートカードと呼ばれることが多い)と、代表者個人の与信で発行され引き落とし口座だけ法人のものを利用できるもの(ビジネスカードと呼ばれることが多い)です。
後者の個人与信のカードは、実質的に個人カードと同じで、引き落とし口座を法人名義口座として使えるので、経費が区別できるという程度の意味しかありません。
では法人与信のコーポレートカードはというと、各社ともにラインナップしているものの、決算書の提出は必須だし、(おそらく)赤字企業には発行してもらません。かなり手続きが面倒だしハードルが高いのです。
UPSIDERカードは、決算書などの書類の提出なしで申し込める法人与信のカードだというのがポイント。ではどうやって与信をしているのかというと、法人の銀行口座とAPI接続して口座の入出金履歴をAIで評価しているようなのです。
銀行口座連携にはMoneytreeを使っており、複数の金融サービスと連携するほど与信の精度が増して限度額が大きくなるという触れ込みです。僕の場合、不動産の入出金のある信用組合と太陽光の入出金のある住信SBIの2つの連携で、なんと200万の与信をいただきました!
法人カードとしての唯一のハードル
実際にUPSIDERカードに申し込んでみたところ、まるで個人カードのようにWeb上でスムーズに申し込みが進行しました。いわゆるeKYCで複数回エラーは起きましたが、こんなデジタル化された法人カードは初めてです。ところが、最後の最後でひっかかりました。
実はUPSIDERは、いわゆるISP(プロバイダ)やGmailなどのメアドでは申し込めません。その法人の独自のメールアドレスが必要なのです。なんちゃって法人では独自ドメインを持っているところは稀でしょうから、ここが一つのハードルになっているわけですね。
ぼくは個人での仕事用にもブログ用にもドメインを保有していて、法人のメアドもそのドメインで作って申し込みました。ところが、こんなメールが……。
どういうこと?と思って問い合わせると、メアドのドメインが本当にぼくの法人のものなのか確認できないというのです。うーん。確かにWhoisとか使ってもドメイン業者の名前が出ちゃうし、さてどうしよう? というところ。
そこで思い立ったのが法人のWebページをそのドメインで作ることです。そうすれば、このドメインの保有者=ぼくの法人だってことが分かりますよね!
そのために使ったのはGoogleサイトです。Googleサイトはいわゆる無料のホームページホスティングサービスで、最大の特徴は無料でカスタムドメインが利用できるということ。無料で……といってもドメインを保有している必要がありますけど。
まず法人のWebページをGoogleサイトで作成します。次にGoogleサイト側のカスタムドメイン機能を使い、ドメインの所有を確認します。具体的にはカスタムDNSでCNAMEを指定の文字列にすることで確認する方法です。確認が終わったら、CNAMEにGoogleサイトのアドレスを指定すればOK。TEXTが推奨とありますが、ぼくはCNAMEを使いました。また、ヘルプでは末尾にピリオドをつけろと言われるのですが、それだとCNAMEの設定で弾かれることがあります。その場合はピリオドなしで大丈夫でした。
正直、CNAMEとかDNSの設定をするのは数年ぶりで、かなりドキドキだったのですがうまくいってよかった。あ、Googleサイト側でページを「公開」しないと、DNS設定がうまくいっていても公開されないので、注意です。
この方法で、Webページの有料ホスティングサービスを利用せずに、ドメインをぼくのものだと納得してもらいました。非常に低コストで法人としてのデジタルな存在証明をできた形ですね。
カードは普通郵便で送られてくる
こうした手続が終わるとカードは普通郵便で送られてきます。開封したらカード番号をUPSIDERアプリに入力してアクティベーションする、Kyash方式。これからのカードは全部こうすべきですね。本人確認郵便とかで送るのは前時代的です。
そしてこれが送られてきたカード。流行りの黒一色のデザインなのですが、メタリック加工されていて、正直かなりカッコいい。センスの良さを感じます。ICチップが海外仕様の小型チップなのもレアですね。このチップはRevolutくらいでしか見たことがありません。
裏面を見ると、「イシュアはクレディセゾン」と英語で書かれているのですが、このように提携によって階層が分かれているのもこの業界の複雑なところです。ナンバーレスではなく、カード番号は背面にあります。またオンライン用の署名は「UPSIDER MEMBER」と決め打ち。社員に配布することを考えると、これは便利です。正確には無記名カードなので、任意の名前でOKということのようです。
それから暗証番号は自分で設定するのではなく、決め打ちでした。これはちょっと驚きましたね。Web上の管理画面は今風で、社員用のカードの限度額を決めたり、利用を停止できたりバーチャルカードを発行できたりと、いろいろ無料のカードとは思えない充実ぶり。これはスタートアップがこぞってUPSIDERを使うのも分かります。
ただETCカードは発行できません。ぼくの法人カードはメインの用途がETCなんで、そこがかなり残念。ただ今後、法人での決済は順次UPSIDERカードに切り替えていこうと考えています。