FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

株ゲームを「金融教育」だとうそぶいているのは誰か?


先日、小学校に通う子どもが「今、学校で株ゲームが流行っているんだよ」と教えてくれました。その画面を見てびっくり。社名とチャートが大きく表示されていて、株を選んでタイミングを見て、売ったり買ったりするのです。なるほど、これを金融教育だと思っている先生がけっこういるんだな……。

株ゲームというギャンブル入門

「今、学校で株ゲームが流行っているんだよ」というので見せてくれたゲーム画面は、チャートを見て上がるか下がるか判断して、買ったり売ったりするものでした。

 

「おれ、クラスでトップクラスの成績なんだよ。ほら!」

「へー。どうやって、どの株を買うか選ぶの?」

「この図を見て、上がっていたらそれを買うと、だいたい上がるんだよ。で、そういう形の会社を見つけた人はヒーローで、その人に上がる株を教えてもらうんだ」

「自分で探さないの?」

「自分で探すの、大変だもの。上がる株をたくさん知っている人がいて、どうやってその人と友達になって、たくさん教えてもらうかが勝つ秘訣だよ」

「いつ売るの?」

「形がね、下を向いたら売らないと下がっちゃうから。ちゃんと毎日チェックしないと」

 

原始的なテクニカル分析への傾倒、情報屋への依存、短期売買志向……。なんというか典型的なダメ投資家です。というか、チャートを見せて「これが上がりまっせ!」とか情報を流せば、誰でもそうなるという良い事例だといえます。

 

聞くと、去年もクラスで流行っていたそうで、学校で推奨されているアプリなんだそうです。これが金融教育の名のもとに、小学生が遊んでいるのだと思うと、なんだかがっくしきます。

株ゲームの本音と建前

こういうゲームが小学生向けに提供されてしまうのはなぜなのでしょう? 世にある株ゲームの建前はこんな感じです。

この教材の目的は、株式投資のテクニックを学ぶことではありません。
株式の模擬売買を通じて、株価変動の背景となっている現実の経済・社会の動きに生徒たちの目を向けさせることを目的としています。

一応、株の売買の際に企業の事業内容や業績を調べて投資の判断を行うことで、現実の経済や社会の動きに目を向けさせるという建前です。でもね、こういう作りだとそうはなりません。

 

「どうして株価が上がるのか、知ってる?」

「知らない」

「企業の利益が増えると株価も上がるんだよ」

「へーそうなんだ!」

「……」

 

チャートを見せて、どの企業に投資するか判断しろ!って言われたら、チャートの形を見るに決まっています。小学生が会社名で検索して、決算短信とかを読んで「この会社は割安だ」とか考えるとでも思っているのでしょうか。

 

実のところ、こうしたゲームは株式投資という名前を借りたギャンブルに人を誘うためのツールなのです。短期的に上がったり下がったりして疑似通貨であれお金が増えていくのはギャンブルとしての魅力があります。それは複雑な要素を廃するほど射幸心を煽れるもので、究極が上がるか下がるかだけを当てればいい、バイナリーオプションとかでしょう。

先生や親世代の株取引のイメージ

なぜこんな株ゲームが金融教育の名のもとに小学校に登場するのでしょうか。思いっきり邪推すれば、そういう金融教育の名のもとに株式トレードというギャンブルユーザーを増やしたいという業界の意向とも思ってしまいます。

 

実際、証券業界の中の人は、まったく悪気がなくこんなことを言うのです。「インデックス投資なんて投資じゃない。企業を調べて個別株を買うのが真の投資であって、さらに経済の勉強にもなる。ぜひ初心者を脱して個別株に目を向けてほしい」と言ったり、「いかに顧客を儲けさせるかがわれわれ証券会社の役割だ。そのための必要な商品と情報を提供することに注力する」

 

さらに、いまでも証券会社は、口では長期保有とか言いながら、低コストインデックスの購入を入口に、個別株の売買を行ってもらい、さらには信用取引で売り買いしてもらうことを目指しています。そりゃあそうです。低コストインデックスは利益ゼロどころかポイントを付与したら下手したら赤字。個別株の売買も手数料をゼロにしてしまったので利益になりません。いま最も伸びている収益は、信用取引にかかる金利なのですから。

 

まぁ邪推はこれくらいにして、実のところはこういった株トレードギャンブルが株式投資だと思い込んでいる層が、先生や親世代にはまだまだ多いということの裏返しなのでしょう。今でこそインデックス投資隆盛と言われますが、それはYouTubeやSNSで情報を得ている若者世代であって、団塊世代、団塊Jr世代にとっては株式投資のイメージはまだまだ違うのです。

チャートが諸悪の根源では?

どうやったらギャンブルでない株式売買を浸透させられるのか。ぼくはチャートが諸悪の根源ではないか? と思っています。証券会社でチャートを表示させないところはないのですが、それはチャートが誰にとってもなんとなくパターンをイメージできて、売買の参考にできそうなイメージをもたせるのにちょうどいいからでしょう。

 

事業内容を文章で解説されたり、売上・利益額がいくらですとか言われるよりも、とっつきやすいのでしょう。

 

でも、株式投資で資産を増やしたいのなら、チャートなんて見ないほうが確実です。素人の「上がり続けるトレンドだ」とか「今は高くなりすぎている」とかは全くあてになりません。

 

また株式投資を通じて社会や経済の動きを捉えたいなら、せめて株価ではなく売上や利益のチャートを出すべきでしょう。株価チャートよりも、下記のチャートを見せて「この企業に投資するか判断してください」というほうがよっぽどましです。

ちなみにこのチャートは、NVIDIAの純利益の推移です。

www.kuzyofire.com

www.kuzyofire.com

www.kuzyofire.com