FIRE/投資関係でサンマーク出版から突如登場し、ベストセラーになったこの本を知っているでしょうか?『1年で億り人になる』です。まぁ読むまでもなく、そういう中身だろうなぁ……と思い放置していたのですが、図書館で見かけたので手に取ってみました。
ある意味、典型的な本だった
筆者は戸塚真由子さん。顔出ししている女性です。プロフィールは次の通り。
ベストセラー
1年で億り人になる(サンマーク出版)の著者。
独特のスタイルで驚異的な成功を収めたカリスマ投資家。
昼は淑女❤夜は娼婦♪の裏の顔を持つ、SM愛好家としても知られ、その大胆な人生哲学とユニークな個性で注目を集める。
常識を越えた発想で人々を魅了し、人生を劇的に変える方法を伝授
この本の構成はどうなっているかというと、ざっくり次のようなものです。
- 私は数ヶ月でFIREし億り人になった
- それは師匠のオリバー氏から学んだおかげ
- 実際に私が交遊のあるたくさんのお金持ちの生態を語ろう
- あなたも私の言う通りにすれば簡単に億り人に!
いやぁ典型的な本ですね。まず自分をあっという間に億り人になった人としてブランディングします(ただし本当に資産があるのかなどのエビデンスは出しません)。その方法として師匠のオリバー氏の教えを出しますが、具体的な教えの内容は示しません。代わりに、交遊のあるたくさんの超富裕層のエピソードを語ります(いずれも仮名)。その上で「あなたも私の言う通りにすれば簡単に億り人に!」で終わります。
ここまでは想定どおりの本でした。
お金持ちの3つの天敵
ただし内容が薄いとかくだらないかというとそんなことはありません。お金を増やすとか投資とか、そういう話ではないところに意外な面白さがあります。その一つが「お金持ちの3つの天敵」です。
3つの天敵とは次の3つです。
- 詐欺師・泥棒
- 税金
- 浪費
お金を持っていると詐欺師や泥棒が寄ってくるといいます。
「あなたも私のようにお金持ちになれます」と言い寄ってくる、高級時計に高級スーツのお金持ちそうなネットワークビジネスの勧誘。その勧誘者がもらっている謎の不労所得が、じつは生活保護費だったケースもあったのだとか。
そうそう!詐欺師の典型ですね。あれ、「あなたも私のようにお金持ちになれます」って本書のテーマのような気もしますが、そこは気づかなかったことにしましょう。
面白いことに、詐欺師が1億円以上の金額を預かることは滅多にありません。1億円を超えた金額を騙すと、殺される恐れがあるからです。ですから、ほどよく泣き寝入りしやすい金額が、詐欺の相場なのです。
詐欺に遭う投資金額はたいてい1000万円未満です。
私たち一般人の場合は「少額」の投資話に注意しましょう
なるほど!これは面白いですね。よく事件になって世間を賑わせる詐欺師は、被害者に接近しすぎて逆恨みされたりしてしまっています。相手が泣き寝入りするくらいの金額というのは納得感があります。真偽は不明ですが、筆者が実際にお金持ちを交遊があることを示唆する内容です。いや、詐欺師に騙されるお金持ちか?
詐欺師の見分け方もなるほど!です。確かにオレオレ詐欺とかの集団を見ると、複数人が分担していて電話やメールで被害者とやりとりし、被害者と深い仲にならないようにしています。
運用者と常に連絡が取れるか?
よく知っていて信じている人に騙されたら、どう思いますか?それが大好きな恋人だったら、どうでしょう? きっと深く恨むのではないでしょうか。詐欺師はそのように、被害者からうっかり恨まれることを避けます。詐欺師は人に会いたがりません。詐欺師がどこのどんな人かよく分からないなら、のちのち恨みようがないからです。
投資セミナーの落とし穴
詐欺は犯罪ですが、投資セミナーとか投資コンサルティングは別に相手を騙しているわけではありません。単に、成果に対して過剰な費用が発生しているかどうか、そのバランスが微妙なだけです。
情報商材だけでなく高額な投資セミナー/投資コンサルティングの特徴はいくつかあります。まず、いかに自分がすごいか、さらに自分が教えを受けた師匠がいかに凄いかを強調します。考え方や手法の内容ではなく、人物の凄さをアピールするのが特徴です。
そして具体的に何を学べるのかは決して事前に明かしません。とにかく全面的に信じて言う通りにすればうまくいく。実際にうまくいった人がこれだけいる!疑ったらうまくいかない。ということを強調します。
そして悩んではいけません。学んだら即行動です。これをやるべきだ、と言われたら、自分で考える必要はないのです。言われたままに即行動です。これこそが成功の秘訣です。自分で考えるような人は失敗する。言われたとおりにやれ。そのように伝え、思考力のある人は振り落とし、進んで洗脳されてくれる人を取り込むのです。
筆者いわく、
ご注意ください。自己流は、必ず事故ります。
だということです。
筆者がお金持ちになるためのマインドセットを3つ挙げているので噛み締めましょう。
- 正しい情報を選ぶ:本物のお金持ちからしか学んではいけません。
- 気持ちよく先に対価を払う:正しい情報を手に入れたら、それ以上のお返しをすること
- 「情報を得る→即行動する」を徹底:本物のお金もちから正しい情報を得たら、すぐに行動しましょう
筆者はどうやって億り人になったか
なお、貧困女子だった頃に師匠に会い、筆者は3ヶ月でFIRE、4ヶ月で億り人になったということです。その戦歴の紹介がこちら。
そのとき出会ったのが、現在の師匠、オリバーです。
オリバーに出会ってから、「億り人」になるまではあっという間でした。
出会って1ヶ月はオリバーの動画を1日中見て、2ヶ月目には資産構築クラブを立ち上げて私もコンサルティングを始めました。そして3ヶ月目にはFIRE達成、4ヶ月目には資産1億円を作ったのです。
あれ?その手法はどこにも書いてない……。どっかに書いてあるだろ?と思って遡って読んでみたのですがどこにもありません。一応本書では、(1)借り入れをし(2)レバレッジをかけて現物に投資することで資産を拡大するという手法を提案しています。これ自体は別におかしな話ではないし、不動産投資とかしていれば当たり前の手法です。
ただ3ヶ月でFIRE達成、4ヶ月で資産1億円、あなたも「1年で億り人」になる。には、これらの手法ではもう少し時間がかかりますね。ではどうやったのか。
そのヒントは先の戦歴紹介にあります。ここで筆者は投資をしたとは一言も書いていません。では何をしたか。「資産構築クラブを立ち上げた」のです。そして、「本当のお金持ちから学びましょう」「気持ちよく先に対価を払いましょう」「情報を得たらすぐに行動しましょう」という教えを、クラブのメンバーに教授したわけです。
その結果、そこから1ヶ月でFIRE達成。さらに1ヶ月で資産1億円に。なるほど、本書でも言及されている与沢翼氏について思い出しました。これこそが1年で億り人になる秘訣なのでしょう。最初は過大表現かな?とか思っていたのですが、500万円を20人から集められればそれだけで1億円。確かに本書の主張にウソはないかもと思った読後でした。