FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

金の現物はうまくやれば利益は無税になる (3)所得税


ここまで、「なぜ金の保有が有効なのか」そして、「なぜETFよりも金地金(インゴット)のほうが有利なのか」について、保有コスト消費税の観点から見てきました。第3回の今日は、金の譲渡益にかかる税金についてです。

金の譲渡で利益が出たら

買ったときよりも高い値段で売れたら利益が出て、それに対して税金がかかる。これは世の中の避けられないルールです。ところが、同じものを買うにしても、枠組みが変わるとかかる税金の額や計算方法が変わります。

 

まず金のETFは株式の仲間として計算されます。株と同じ、利益に対して20.315%。特定口座で金ETFを買っていれば、売却金額からこの税金が自動的に差し引かれます。

 

では金の現物、金地金=インゴットはどうかというと、もう少し複雑です。まず前提として確定申告です。1年毎に自分で税金を計算して支払う必要があります。そして税率は保有期間と給与などの額によって変化します。

5年以内の短期譲渡

まず所有期間が5年以内の場合、これは短期譲渡所得にあたります。その場合、売却時の利益額を、給与などの所得と合算して総合課税として税率を計算し、確定申告することになります。

 

例を挙げてみましょう。例えば金がグラム1万円のときに100グラム買ったとします。取得費は100万円+消費税10万円の110万円です。これをグラム2万円になったタイミングで売却しました。譲渡価格は200万円+消費税20万円の220万円です。

 

そして、譲渡益の場合、ここから50万円を差し引ける(控除できる)というメリットがあります。つまり譲渡益は60万円ということになります*1

 

この60万円に税金がかかるわけですが、どのくらいの税率かは給与などの所得額によって変わります。

  • 給与 194.9万円まで 5%
  • 給与 329.9万円まで 10%
  • 給与 694.9万円まで 20%
  • 給与 899.9万円まで 23%
  • 給与 1799.9万円まで 33%
  • 給与 3999.9万円まで 40%
  • 給与 40000万円以上 45%

この総合課税は超過累進課税という仕組みなので、金地金以外の総合課税所得(例えば給与)の額がいくらか? によって、その上に乗る(超過する)譲渡益に対する税率が変わります。例えば、課税対象の給与が900万円の人なら33%なので、金地金の譲渡益60万円の33%、19万8000円の税金を払う必要があります。正確にはさらに10%の住民税も支払わなければなりません。合計25万8000円、50万円控除をいれると23.4%! 高所得の人には金地金も利益にかかる税金はそこそこ高いですね。

5年以上の長期譲渡

しかし保有期間が5年を超えると長期譲渡所得となり、少し景色が変わってきます。

 

まず50万円の控除が付くのはそのままに、譲渡益をを半分にできます。30万円です。税金半分、税率半分です。これは大きい!

 

これを先と同じ税率で計算します。課税給与900万円、税率33%、住民税を入れると43%。ですが、30万円の43%は12万9000円にすぎません。保有期間が5年を超えただけで、25万8000→12万9000円へと半減しました。利益110万円に対する税率は11.7%にすぎません。

 

23.4%→11.7%へ。ものすごく税金安いですね。さらに金ETFの20.315%に比べてもかなり有利です。これが金地金の税金の魅力なのです。

 

ただし年間利益額が50万円を超えると実効税率が急激に上昇する上に、給与合算の累進課税なので税率は理論的には恐ろしいほど上がります。そこは注意です。

無税にする選択肢

金地金は、利益に対し50万円の控除が付きます。つまり、毎年利益が50万円になるように利確していけば、全く税金がかからないということです。5年で250万円、10年で500万円、20年で1000万円の利益まで無税。けっこう美味しいですね。

 

こうした税制の事情もチェックするに、金地金で投資をするにあたり、避けるべきなのは次の2つです。

  • 短期売買
  • 一気に売却してしまうこと

もし金価格が上昇しているからと、短期で売買して利益を出そうと考えているなら、金地金ではなく金ETFや、さらにいえば金先物を使うべきです。金地金は売買手数料もけっこうかかりますし、短期売買は税制的にもかなり分が悪くなります。

 

一気に売却するのもご法度です。毎年50万円の控除が付いてくる投資商品というのはなかなかありません。極端な話、毎年利益50万円分ずつ利確していくくらいのスタンスでもいいでしょう。そのため、かなりの余裕資金での投資が重要です。もし急にまとまったお金が必要になったとしても、まずは預貯金でカバーし、それでも足りなければ株や投信を売却、次にビットコインを売り、その次が金、そして最後がNISAです。もし金の保有期間が5年未満でけっこう利益が乗っているなら、NISAよりも売却は後にしたほうがいいくらいです。

 

また50万円を超えて利確するにしても、そのとき退職していて給与所得がゼロならば税率は大変低くなります。例えば利益1000万円分を利確しても、まず50万円引いて950万円、その1/2で475万円、税率23%で109.25万、そこから累進課税の控除63.6万を引いて45.65万円が支払うべき所得税です。住民税のほうも47.5万円なので、合わせて93.15万円利益1000万円に対して9.315%にすぎません。

 

このように、一律20.315%の金ETFとは違い、保有期間を長くとり、一度の利確額を低くし、さらに給与が減ったタイミングで利確すれば大幅に税率を下げることができるわけです。この税金の有利さが金地金の魅力だといえます。

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*1:国税庁に確認しましたが取得費にも譲渡価格にも消費税はいれるということでした。つまり利益に対して消費税がかかり、その消費税に対して譲渡税がかかるということになります。「二重課税ではないのか?」と聞いたのですが、「そうではないということで整理されている」という話でした。