
厚生労働省がさらっとiDeCoの改正のスケジュールを出しています。それによると、2027年掛け金から、増額になるということのようです。このiDeCo2.0、改めてどう活用するのがいいか、俯瞰してみてみましょう。
何が変わるのか
iDeCo2.0で変わるのは、まず掛け金の増額です再掲となりますが、ぼくのような企業年金なしの会社(ま自分の会社ですけど)に勤めている場合、従来の月2.3万円上限から月6.2万円までアップします。
もう一つ、ステルス改悪されるのがiDeCoをもらったあと5年経てば満額の退職所得控除が使えた、いわゆる5年ルールが、10年に延長されることです。
掛け金増額をどう活かすか
さて2027年から掛け金が増額になるわけですが、それをどう活かすかを考察してみましょう。
改めてiDeCoのメリットは次の2つです。
- 掛け金の所得控除
- 受取時の退職所得控除・年金等所得控除
掛け金は所得控除されるので、つまり掛け金に所得税率+住民税率を掛けた金額が丸々手元に残ることになります。これは大きい。これはNISAにはないメリットで、積み立てるだけで税金分トクをするという素晴らしい仕組みです*1。
もう一つは、掛け金の上限金額がないということです。NISAは生涯で掛け金1800万円という上限がありました。iDeCoの場合、例えば月額6.2万円なら年額74.4万円。10年で744万円、20年で1488万円、30年で2232万円と、長期間利用すればNISAを超える金額を積み立てることができます。
つまり税制の観点で見た場合、iDeCoはできるだけ多く、できるだけ長く掛けるのがいいということになります。
もちろん60歳まで引き出すことができない、制度改悪で高額な手数料が乗るリスクなどいくつか気にしなくてはいけない点もあります。ただしぼくは、どうせ老後資金は必要になるのだから、それはお得なiDeCoを使うほうがいいという考え方です。
もらい方がパズル
こうして積み立てて増やしたiDeCoですが、NISAとは違い、もらうときに課税されるというのが注意点です。ただ、もらうときには最も強力な控除である退職所得控除と、さらに公的年金等控除が利用できるのがポイント。実のところ、うまくこれらの控除を利用すればほぼ無税で受け取ることもできるのです。
ただこのもらい方がパズルなんですね。iDeCo以外にも退職所得控除が使えるものは複数あって、企業からの退職金や、個人事業主や経営者の退職金である小規模企業共済がメジャーなものです。僕の場合は小規模企業共済を受け取る予定。これはタイミングも調整できるので、iDeCoと合わせてどんな順番でどう受け取るかが重要になります。
まず、今回の改正で5年ルールが10年ルールになったので、退職所得控除をフルで二度使うには下記の順序が必要になります。
- 60歳でiDeCoを受給、70歳で企業退職金を受給
- 65歳でiDeCoを受給、75歳で企業退職金を受給
- 70歳でiDeCoを受給、80歳で企業退職金を受給
今回の改正で改良された点もあります。これまで60歳以降のiDeCoは公的年金への加入が必要だったのですが、原則として誰でも70歳まで積み立てられるようになります。つまり公的年金加入不要だということです。
iDeCoと企業退職金(小規模企業共済)の受取タイミングの次に決めなくてはいけないのは公的年金の受給年齢です。なぜかというと、iDeCoも小規模企業共済も、退職所得控除をはみ出た部分については、年金として分割受取が可能で、この年金部分は公的年金等控除の対象になるからです。
この公的年金等控除、iDeCoや小規模企業共済の年金払いだけでなく名前の通り公的年金についても控除に使える。この公的年金等控除がまたとっても複雑なのですが、ざっくり65歳未満の控除額は小さく、65歳を超えるとけっこう控除額が大きくなります。
小規模企業共済についてもう少し精緻に見ると、年額84万掛けられるのに、退職所得控除は年間あたり40万円しかありません(拠出年数20年未満のとき)。20年を超えても年間70万円なので、マックスで小規模企業共済を掛けた場合、どうしても退職所得控除では足が出るのです。
僕の各種受け取りプラン
さて、受け取りは各種控除をどう活用するかのパズルです。まず退職所得控除を最大限活用すること=2回利用することです。その上で、毎年継続的に存在する公的年金等控除を余すことなく使うことです。公的年金等控除は年金やiDeCoの受け取りで使えるので60歳以降利用可能。ということは、60歳から何らか活用するのがベターです。
というわけで、今のところ次のような順序になります。
- まずiDeCoを退職所得として受け取る(退職所得控除)
- iDeCoの残額を年金として受け取る(公的年金等控除)
- 次に小規模企業共済を退職所得として受け取る(退職所得控除)
- 小規模企業共済の残額を年金として受け取る(公的年金等控除)
- 最後に公的年金を受け取る(公的年金等控除)
僕の場合のイメージ的には、こんな感じでしょうか?
- 60歳でiDeCoを退職所得として受け取る
- 60−70歳でiDeCoの残額を年金として受け取る
- 70歳で小規模企業共済を退職所得として受け取る
- 70-75歳で小規模企業共済の残額を年金として受け取る
- 75歳から公的年金の受給を始める
新卒から60歳までの退職所得控除金額は2060万円になります。運用次第ですが、60歳時点のiDeCo運用額はこれを上回っていることはほぼ間違いないでしょう。60-65歳、66-70歳の公的年金等控除額は合計で850万円分あり、この範囲内なら無税。これを超えてもけっこう税額的には有利になります。そこで、この10年でiDeCoの残りを受給してしまおうという算段です。
70歳になると再びフルで小規模企業共済に退職所得控除が使えます。ただし、先に述べたようにマックスで小規模企業共済を掛けていると退職所得控除が足りません。そこで数年かけて残額を年金として受け取り、公的年金等控除でカバーします。受け取り終わったら、初めて公的年金の受け取りを開始する……。
このプランの問題は75歳以降の公的年金の金額が大きくなるため、住民税非課税世帯等になるのは難しいところ。よく、うまく繰り上げ受給を行いギリギリ住民税非課税世帯等になるように年金を受け取るテクニックを聞きますが、それはできません。おそらく数十年後には、資産のある年金受給者は住民税非課税世帯等にならないようにうまく財産を捕捉するようになるでしょうから、現時点では住民税非課税世帯等を目指すような形は取らないように考えています。
こんな想定でしょうか。もっとも制度は頻繁に変更になりますし、このシナリオどおりにはきっといかないでしょう。ただ、どんな方針で受け取るのかを適宜考えておくことは重要です。「プラン通りに行くことはないけれど、事前にプランを考えておくことが重要」とはアメリカ海兵隊が計画の重要性について語った言葉。僕も計画どおりには行かないでしょうが、随時計画をアップデートしたいと思います。
*1:FIREして所得がなければ関係ないって人もいるかもしれませんが、iDeCoの所得控除は給与所得だけでなく雑所得にも適用になります。そのため仮想通貨などの売却益もiDeCoで控除できるため、給与所得や事業所得がなくても活用のしがいがあります。

