昨日は、例年おこなっている優待クロスの方々とのオフ会を行いました。優待クロスガチ勢の方々は、他のいろいろな投資手法の方々ともまた違って、資金力だけでなく、市場の歪みを活用して利益を得る楽しさを体現している方たちです。
ただ、そこで出たのは「もう優待クロスはオワコンかもね」という話題でした。
昨今の優待クロス事情
ぼくが優待クロスに初めてトライしたのは2018年の8月。進和とJINSを楽天で取ったのが最初でした。当時のブログ記事を読むと初々しいですね。
そして本格参入したのは、日興証券が一般信用の提供を始めた2019年頃です。当時はSBIや楽天での短期一般信用が中心で、取引手数料もかかるなか、3年間の長期一般信用で貸株金利が1.4%という破格、さらになんと取引手数料も無料で、かつ対面大手だけあって在庫が豊富という、モンスター級のサービス開始だったのです。
当時はまだ日興証券を使っている人も少なく、当日とか前日でもけっこう一般在庫が残っていて、日興証券を使えば優良銘柄が直前でも取れる!という入れ食い状態でした。
この2019年に、優待クロスのブログの読者の方々で集まったオフ会があり、そこで知り合ったのがこの優待クロスオフ会のメンバー。ほぼ毎年参加、最近は幹事をして、つい先日も優待クロスオフ会を実施しました。
一ヶ月くらい前じゃないと在庫がない
このメンバーで集まり始めてからもう6年にもなるわけですが、本当にクロスも様変わりしました。まず、日興の一般在庫が全く取れなくなりました。いまや1ヶ月くらい前でないと、在庫がありません。途中、補充があっても、1万株くらいだと一瞬で蒸発します。
2年か3年くらい前のこのオフ会で話題になったのが、「最近はボットを使った在庫注文が横行している」というもの。普通は注文可能な17時(今は17:30)になったら手作業でポチポチと発注し、お!取れた!とか、あー!先に取られてなくなってしまった!とかやるわけです。または日中のザラバに、「お!在庫があるぞ!注文注文」とかやるわkですが、ここにボットが参入すると、在庫が生まれた瞬間に取られて消えてしまいます。
歩兵中心の世界に、突如機械化兵団がやってきたわけで、生身の人間は虐殺されていったのです。
もちろん、日興側もボット排除に動き、同一IPからの高速な高頻度アクセスは、ボットとみなされてアカバンされるなどがあったようです。そこから数年。いまは早押しで取れることはまずありません。機械化していれば、また違うのかもしれませんけど。
9月半ばで売り禁?
一般在庫がないとなると、早取りが始まります。早取りでもいいや、と思う人がいれば、人より少しでも早く押さえなくてはとなるので、次第にポジション確保のタイミングは早くなっていき、いまや1ヶ月前には取らなければならないのが普通になってきました。
となると、目が向くのが制度信用です。権利付日でも注文できる制度信用は、かかる貸株金利も安く、支払い配当額も一般より小さいなど、いろいろなメリットがあります。特に、毎日少しずつ在庫をにらめっこしながら確保していく一般信用と違い、権利付日にまとめて発注すればいい制度信用は、操作ミスを大きく減らせるのも利点です。
ではデメリットは? というと当然逆日歩。これは有名なところです。基本的に、逆日歩の額は需給で決まるので、優待クロスをするために制度信用売りをする人が増えるほど、逆日歩が高くなりそうです。ただ、昔よりも逆日歩が大きくなったような肌感覚はないし、そういう評判も聞かないんですよね。
それはいいとして、最近はもう一つのデメリットが出てきました。売り禁になってしまい、制度でも信用売りができないというリスクです。以前から、有名な銘柄は権利付き日当日は売り禁になってしまうことが多く、その1日前に取るのがプチテクニックでした。ぼくも、楽天/SBIの1日100万円の無料枠に収まるように、制度信用でも複数日にわけて確保していたので、最終日は売り禁になるという感触はよく分かります。
ところが最近は、月の半ばにして売り禁になっている銘柄が多発しています。これらはいずれも9月末銘柄で、比較的利回りが高いものですが、9月14日にして売り禁です。もちろん、クロスが売り禁の理由とは限らず、個別に理由があってのことなのかもしれませんが、売りが建てられないのには変わりありません。




クロスに資金を使うのはもったいない?
このように、なかなか簡単にクロスができなくなっている中、もうクロスをしているより、ほかに資金を振り向けたほうがいい、という人もけっこう出てきました。理由はいくつかあります。
まず株高になりました。優待クロスにおいては株価が上昇すると獲得に必要な資金も多くなるため、優待内容が同じならば株価は安いほうが高利回りになります。株高は利回りの減少なのです。
さらに日米ともに金利のある世界が戻ってきました。日本の30年もの国債金利は3.2%まで上昇し、10年もの長期国債も1.59%。途中の値下がりリスクを回避できる個人向け国債も1.06%の利率が付くようになりました。これにともない、定期預金などの利回りも上昇しています。

米国債券においては、短期3ヶ月が4%超え、2年債は3.5%ですが、10年も4%超え、30年は4.68%まで上がっています。為替リスクをとっても、これだけの金利が得られるなら悪くありません。

さらに、なんだかんだでずっと続く株高の中で、優待クロスに資金を回すなら投信でも買ったほうが有利なんじゃないか? という意見もありました。
優待クロスはオワコンか?
さて、ここからは判断が分かれるところでしょう。確かに以前に比べて優待クロスの魅力は低くなりました。一般に広まったことで多くの人が参入、競争率が増した結果、獲得コストは増加し、そもそも取るのが難しくなっています。
一方で、債券金利は上昇し、株高は止まらず、クロスでちまちま稼ぐより、王道の投資手法でも良いんじゃないか? という考え方もあるでしょう。
それぞれに納得しつつ、ぼくは優待クロスの最大のメリットは、市場とは異なるリスクを備えた投資手法であることだと思っています。株式は今でこそ好調ですが、崩れ始めたら多大な損失を被ります。債券は、今の金利が頂点とは限らず、今後も金利が上がるようなら、債券価格は低下し、生の債券もちきりなら市場より低い金利を甘んじるハメになるかもしれません。
ところが、優待クロスは市場の動向に一切影響されない安定した投資手法です。そこにあるのは、基本的に参加者による需給だけ。優待クロスの人気が落ちれば落ちるほど、残った人たちはやりやすくなるのです。以前簡単に試算しましたが、毎月高利回りものを取っていくだけなら、優待クロスの資金効率は年率にして5%程度になります。下記の記事で試算しましたが、1名義530万円の資金で優待クロスをフルで行うと得られる優待価値は年間35万9000程度となり、コストも考慮するとだいたい5-6%くらいのリターンが見込めるわけです。
特に、この資金を昨今増加してきた証券担保ローンを使って調達すれば、さらに利回りは増加します。
というわけで、優待クロスの魅力は薄れてきましたが、まだ価値は薄れてないな、とも思うのです。