FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

基礎控除がアップしてどう変わる? 2025年の確定申告

今年も残すところあと2ヶ月。年末調整の時期が近づくとともに、個人事業主の方にとっては年間売上がそろそろ見えてきて、所得をどのくらいにするか考え始める時期かと思います。

 

ただ今年の確定申告は、例年とちょっと違います。給与所得控除と基礎控除が引き上げられたからです。今回は、基礎控除の変更によってどんな影響があるのかを考えてみます。※2025年分だけでなく2026年分も基礎控除階段アップでした。修正いたしました

基礎控除が48万→最大95万円に

2025年分から基礎控除が引き上げられることになりました。これまでは基本48万円で、年間所得が2400万円を超えると32万円にダウン、2450万円を超えるとさらに16万円にダウン、2500万円を超えるとゼロとなっていました。

 

「人間が生活する基礎的な部分には税金をかけない」という趣旨の控除だったはずなのに、なぜか所得が増えると生活に必要な部分にまで税金をかけますよ!という摩訶不思議な制度なわけですが、ここが変更になります。

 

端的にいうと従来48万円だったところが少し控除額アップし、所得によって細かく額が変更になるというものです。ただし2027年以降はまた変わります。

また面倒な仕組みにしたものです。細かく細かく刻んできました。

所得とは?

要するに所得によって基礎控除額が変わるわけですが、ここでいう所得とは何でしょうか? 下記のfreeeの説明が分かり易いので引用します。

ここでは給与の話なので「給与所得」となっていますが、自営業者などの場合はここが「所得」にあたります。サラリーマンの場合は経費の代わりに給与所得控除がありますが、自営業の場合は普通に経費がありますね。要するに、収入から経費(サラリーマンの場合は給与所得控除)を引いたもの。それが「所得」というわけです。

 

この所得に対して、基礎控除などを引くことができるのですが、どれくらい引けるかは所得の額によって変わるという仕組みです。

段階的に基礎控除の額が変わる

では改めて基礎控除の額を見てみましょう。所得が132万円以下の場合、基礎控除が95万円と最大になり、所得が増えるに連れて基礎控除が減っていきます。

グラフにすると下記のようになります。昨年と比較すると所得2350万円以下の場合で基礎控除額が増えていますが、増え具合が違うということです。

なぜこうしたかの理由の一つは、基礎控除引き上げにともなう逆進性の批判があったからでしょう。というのも、所得税は累進課税のため、所得が高いほど税率も上がります。例えば、追加で20万円の基礎控除が引き上げられたとして、低所得者の税率は5%なので1万円しか税金が減らないのに対し、税率25%の高所得者は5万円税金が減ることになります。これを「不公平だ!」と見る人がいたということなのでしょう。

今年は所得を抑えたほうがいいのか?

ただ、細かく刻むのは2025年と2026年分だけで、2027年からはほぼ58万円と、以前の48万円から10万円アップに留まります。なんか2025年分は言い訳みたいな設計ですね。というか、こういう1年単位の変更はやめてほしいものです。それこそ給付でいいんじゃない?

 

さて、とはいえ直近2年は336万円以下に所得を抑えれば、88万円も基礎控除が得られます。336万円を超えると68万円と20万円も控除が下がる。であれば、頑張って所得を抑えたほうがいいのでしょうか?

 

ちなみに所得を抑えるというのは2つの方向性があって、一つは売上を減らす。例えば11月12月はあんまり働かないとか、あとはビットコインをあまり売らないようにするとか。もう一つは経費を使う。2027年に予定している経費を前倒しで使うとか、法人で使う予定だった経費を、今年については個人で使うとか、まぁそういう話です。

 

一見すると、そりゃ所得を抑えたほうが控除額が上がるんだから税金も減ってお得だよね!と感じますね。でもよく考えれば、そもそも所得が減れば税金が減るのは当たり前です。なので、今回考えるべきは、以前と2025年に関して、所得レンジ別の税金はどれだけ変化するのか? という点でしょう。

 

別の言い方をすれば、最も基礎控除増加の恩恵が大きいのはどの所得帯か? です。低所得帯のほうが基礎控除増加額が大きいわけですが、それは税金の減り方も大きいのか?という疑問です。

 

今年の戦略に当てはめていうと、所得を減らしたら税金も減るのか? それとも所得はそのままでも税金が減るのか? どっちのほうが税金が減るのか? という話になります。

 

というわけで、所得階層別に、2024年までの税金と2025年の税金の差をまとめたのが下記のチャートです。

おっと? 意外? 所得の大小で損得はなく、いびつな差になりました。132万円以下は50万円も控除額が違うのですが、ほとんど差が出ません。というか2万円くらいしか変わりません。一方、800万円くらいのレンジは、48万円と58万円と10万円しか控除額が違いませんが、同じく税額の差は2万円ちょっとです。

 

これはどういうことか。先に差を見せてしまいましたが、税額の絶対額も見てみましょう。このように、全域において2025年(令和7年=R7)のほうが税額は少ないのですが、その差はわずかで、所得額による変化のほうが圧倒的に大ききくなっていることがよく分かります。

結論 所得を抑える効果は限定的

というわけで、結論です。2025年は基礎控除が大きく増加し、所得額が小さいほど控除額も大きくなるため、「今年に関しては少しでも所得額を減らしたほうがお得では?」というお題がありました。

 

しかし実際に試算してみると、所得額の各レンジで税の減少額はほぼ一定になっていて、所得を抑えたほうがお得が大きいということではありませんでした。

 

ただ、当たり前の話ですが、そりゃ所得が小さければ小さいほど税金も小さくなります。今回の話は、来年の経費を今年に回したら得するか? という議論なので、今年所得を抑えれば、来年の所得がそれだけ増加します。つまり相対的な有利不利の議論です。そういう意味で、特に所得を抑えて基礎控除を増やしても、何もせずに今の所得のまま計算しても、減る税金の額は変わらないということがわかったということです。

 

というわけで、安心して、今年も法人の実効税率に合うくらいいの個人税率になるように、所得をコントロールしていこうかと思います。

住民税は基礎控除変更無し

あ、1点だけ注意です。2025年と2026年は基礎控除が大きく増加し、2027年からは概ね10万円増加します。ただこれは所得税の話であって、もう一つの税金である住民税については変更がありません。

 

住民税は基本43万円に据え置かれる(2400万円超で29万円、2450万円超で15万円、2500万円超で0円)ので、かなり計算がややこしくなります。

 

というか、税金は簡素を旨とするんじゃなかったんでしたっけ? 高収入の人からたくさん税金を取りたければ、所得税の累進課税税率の方で調整してもらえないでしょうか。基礎控除の存在理由からしても、全員一律で同一であるべきだし、所得税と住民税で控除額が違うってのも理屈があいません。そしてなにより計算が複雑になりすぎます。

 

しかも2025年と2026年だけの基礎控除増加を、また2027年以降で変えるっていうのもおかしな話です。こういう単年度の減税なら、給付でやってもらったほうがみんなハッピーじゃないでしょうか。1回限りの減税で喜ぶほど国民はバカではありません。

 

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