先日、Googleなどのグロース株への長期投資で莫大な資産を築き上げた、うりとさんへのインタビュー記事をMONEY INSIDERに寄稿させていただきました。すごく反響があったのですが、面白いのはこの投資手法に対する批判もかなりあったこと。大きくは「再現性がない」という指摘です。では投資における再現性とはなんでしょうか?
グロース株への長期投資で数億の資産を作ったうりとさん
うりとさんは、GoogleやMetaなどに初期から投資を行い、長期保有することで数億円の資産を作り上げました。面白いのは、もともとインデックス投資から始めたものの、インデックス投資は入金力の勝負だと気づき、より多くの資産を築くためにグロース株にシフトしたことです。
取材で印象的だったのは、「なぜ1億円でFIREしなかったんですか?」という質問に対し、目指すのは大金持ちという話をされたことです。地方都市でお子さんもいないうりとさんは、FIREしようと思ったらかなり早期でも可能でした。でもより多くの資産を目指し、2億円超でFIRE。その後もグロース株を保有し続け、現在はその2倍以上の資産をお持ちです。
なお、半分をインカム銘柄に変えて、インカムからの収入で年間生活費の3〜5倍を得ているといいますから、とんでもなく安定したFIRE生活だといえますね。ちなみにインカム銘柄は下記の4つだそうです。
- SBI米国ハイイールド債券投信USHY連動型投信
- SBI米国高配当株投信SCHD連動型投信
- NAS100・カバコ ETF(東証2865)
- S&P500・カバコ ETF(東証2868)
ネットの反応
さてこの記事へのネットの反応はいくつかの類型があります。
まずタイトルの「インデックスでは億れない」へのツッコミ。「インデックス投資でも億り人になれるやん。」「事実としてインデックス投資でも億り人にはなれる。」というコメントがありました。確かにうりとさんは全額インデックスに投資していても、億には行っているんですよね。ただ、これは1億円に行ったかどうかの話ではなく、大きな資産を築くということを「億り人」と表現しているだけなので、まぁ野暮だと見なさせていただきます。
次は、そもそも“インデックス投資の目的”は億り人ではないという意見。「億り人」基準で評価するのがズレている、目的は安定・インフレ耐性・老後資金だ、という整理をするタイプです。
- 「目的は『億り人になること』ではなく…」
- 「普通の人に必要なのは、インフレに少し勝つ資産運用…」
- 「インデックス投資って基本は守りのはずでは」
つまり、インデックス投資で億り人を目指すこと自体が矛盾しているという意見でしょうか。でもこれは、インデックス投資を歪曲化して極端な意味づけをしていると思います。個人的にはインデックスで億り人を目指したっていいし、実際億っている人もいます。以前取材させていただいた地球さんは典型ですね。
また、ハイリスク(一発狙い/退場リスク込み)志向の方の意見もありました。インデックスは退屈/増えにくい→個別株で狙う、あるいは皮肉として極端なレバレッジを持ち出すタイプです。
- 「インデックス投資は…つまらない…俺も億り人になるぞー」
- 「億り人…ならFXで限界までレバレッジ…」
- 「この手の人の9割くらいが負けて退場」
そして今回気になったのが、再現性が低い/生存バイアス批判です。成功談を一般化する危険(再現率・生存者バイアス)を強調し、真似すべきでないとするタイプ。ぼくもよくこうした批判をすることがあります。
- 「生存バイアス。再現性がない。」
- 「n=1 の話は聞くに値しない。」
- 「宝くじに当たったと大して変わらん」
ただ、果たして個別株投資は本当に「再現性がない」のでしょうか?
再現性とは?
そもそも再現性とは何か。NIST(米国標準技術研究所)は、同じ条件で繰り返したとき、結果がどれだけ一致するかをRepeatability(反復性)と呼び、条件が変わっても(人・場所・装置など)結果がどれだけ一致するかをReproducibility(再現性)と呼んで区別しています。
では投資の場合はどうかというと、まず同じ条件で繰り返すことはできません。そして条件は変わるものの同一の手法を取った場合はどうかというと、やはり同じ結果は再現できません。
そのため、投資の世界では「再現性がある」というのは、概ね以下の3つを指していると考えられます。
- 手順の再現性:ルール・売買手順・制約・リスク管理が、毎回ブレずに実行できるか
- エクスポージャーの再現性:市場(β)や特定の指数への連動が狙い通りに出るか
- 超過収益(α)の再現性:市場平均を手数料・税引後で安定して上回れるか
まず手順は、インデックス投資でも個別株投資でも再現性があります。なんとなく雰囲気で売買するのではなく、どういった銘柄に投資するのかを事前に決め、そのルールに従えばOKです。つまり裁量トレードではなく、ルールベースで投資先を決め、ルールに沿って売買を行うというものです。
エクスポージャの再現性は、インデックスでのみ実現できるものです。逆にいうと、βに連動して運用してくれるという運用会社への信頼が、インデックス投資の(2)の再現性を保証してくれています。
問題は(3)です。βを上回る超過収益を、再現性をもって実現できるか。しかもその手法をルール化できて初めて「再現性がある」といえるわけです。
個別株投資は再現性があるのか?
この観点でいえば、やっぱり個別株投資には再現性はないですね。だって、市場平均を上回る株を見つけられる、長期に渡って適用できるルールがあるか? という話なので。
そして、こうしたルールというものは、後知恵バイアス、生存バイアスがつきものです。あとから振り返って「この方法がうまくいった」といっても、それはうまく行ったものだけを取り上げている可能性が高いですし、うまくいかなかった人は成果を誇ったりしません。
ただだからといって、これを偶然だとかギャンブルだとかで片付けるのも違うのではないかと思っています。株式投資というのは、その企業の成長力・収益力に対して現在の株価が高いか安いかを評価して行うもので、この目利きが上手い人、下手な人というのはやっぱり存在するからです。
そして結果でしか評価できないのが株式投資の面白いところです。それが本当に目利き力の成果だったのか、はたまた運なのかは事後でもわからないのです。ただ、目利き力をルール化して一般化するのは難しいので、やはり再現性があるかといえばないと答えざるを得ないのでしょう。
メタトレンド投資
ちなみに、うりとさんは「イネビタブルズ」という表現を使っていますが、ぼくは世界に大きな変化をもたらす技術を持った企業への投資という意味でメタトレンド投資という表現を使っています。
上記の記事では、まさに後知恵、生存者バイアスそのものである「成功した投資先」だけを紹介しました。では、ぼくがメタトレンドだと考えて買った銘柄を全部挙げると、その結果はどうでしょうか?
- Google 2008年 約25倍
- Amazon 2008年 約53倍
- Meta 2012年 約21倍
- IRBT 2013年 2017年に約2倍で売却 保有していればほぼ紙くず
- Tesla 2016年 2019年に約1.5倍で売却、保有していれば約27倍
- BTC 2017年 約100倍
- ARCC 2017年 ※参考 約1.8倍(配当込み)
- BNB 2018年 2022年に約30倍で売却 保有していれば91倍
- ETH 2019年 約25倍
- C3 AI 2023年 2ヶ月で売却 保有していれば▲30%
- Microsoft 2023年 約1.7倍
- NVIDIA 2023年 約7倍
- Anthropic 2025年
IRBTことiRobot社は4年で売却しました。もともと地雷除去ロボットとして評価してきたのですが、家庭用ロボット掃除機にフォーカスする戦略発表したことが売却の契機でした。その後Amazonが買収を発表して株価は跳ね上がったのですが、結局買収は実行されず、先日チャプター11となったのは記憶に新しいところです。
BNBことBinanceコインは、もともとBinanceで取引する際にBNB払いにすると手数料安くなるということで買ったものです。驚くほど上がりましたね。
C3 AIは、これからはAIだ!ということで、対して調べもせずなんとなく買った銘柄で、一応、ほぼ同値で売却したものの、持っていたらひどい有様でした。
Microsoftは2年で1.7倍にしかなっていません。ただ最近はOffice製品へのAI組み込みの評判が上向き始めているので、今後化けそうです。OpenAIの大株主でもありますし。
というわけで、これらが僕がこれまでに購入した個別株の全てです(優待クロスのための日本株短期売買や、流動性ファーミングのためのステーブルコイン購入などを除く)。
こうしてみると、なかなかの目利きだとも思いませんwww? そして、世界を変革するリーダー企業に投資するというメタトレンド投資は、今のところ再現性があるようにも見えませんか? ちなみに2026年は大型ハイテク銘柄のIPOラッシュです。そのいくつかは、ぼくは購入するつもりです。