FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

ショートショート『含み益保存会』 (作:GPT-5.4 Pro)

含み益保存会

朝八時五十八分、真鍋は気配板を見つめながら、湯気の消えたコーヒーをすすった。
前夜の決算説明資料は三十七ページ。社長の顔はやけに明るく、営業利益はやけに暗かった。株クラなら誰でも知っている。こういう銘柄は、寄りで特売り、十時十分に一瞬だけ反発し、引けには「なんで下がるんですか?」の投稿が並ぶ。

真鍋は指を止めた。
成行売り。いや、待て。
損切りか、握るか。
それが人生のほとんどだ、と彼は思っていた。

そのとき、証券アプリの横に見慣れない通知が出た。

「あなたの含み益を保存しました」

何のことかわからず、彼は画面をタップした。
すると、昨年売ってしまった半導体株の最大含み益、二年前に利確した海運株のピーク、三年前にビビって手放した小型グロースの天井付近――そんな「持っていればあったはずの利益」が、一覧で並んでいた。

合計額は、いま住んでいるマンションが二部屋買えるくらいだった。

真鍋は震えた。
ついに証券会社も狂ったか。

アプリには説明があった。

「保存された含み益は、現実では使えません。ですが、株クラで語る際には自由にご利用いただけます。」

その日から真鍋のタイムラインは変わった。

「いやー、あれ実は1,200万取れてたんですよね」
「その銘柄、初動で気づいてました」
「本命は別にあります」

みんな、保存していた。
使えない含み益を。
消えたテンバガーを。
握れなかった夢を。

真鍋も保存額を増やした。
売った翌日にストップ高。
損切りした翌週に業績上方修正。
監視していただけの銘柄が三倍。
保存、保存、また保存。
現実の口座残高はじわじわ減ったが、保存残高は青天井だった。

やがて彼は、現実のPFより、保存PFのほうが好きになった。
現実の自分より、投稿の中の自分のほうがうまかった。

ある夜、娘が言った。

「パパ、その株って本当に儲かったの?」

真鍋は少し考えてから答えた。
「儲かったことに、してる」

娘は頷いて、学校のプリントを差し出した。
「じゃあ、これも保存しておいて。今日、テストで百点だったはずのやつ」

見ると、六十八点の答案だった。
計算ミスに赤丸がついている。

真鍋は吹き出し、それから急に、板の向こうにいた自分が少しだけ見えた気がした。

翌朝、彼は通知をすべて切った。
寄り付き前、保有株をひとつだけ損切りした。
小さなマイナスだった。保存もできた。けれど彼は、保存ボタンを押さなかった。

代わりに、娘の答案の裏にこう書いた。

「次の決算で取り返そう」

その紙を冷蔵庫に貼ると、娘が嫌そうな顔をした。
「それ、たぶん下がるやつだよ」

真鍋は笑った。
久しぶりに、現実の含み益が少しだけ増えた気がした。

作:GPT-5.4 Pro

プロンプト

株クラの人たちに向けて小説を書いて。ショートショートで。