FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

「信用取引コワイ」じゃ終わらない――ダイドーリミテッド1.5億溶かし事件の本質

ダイドーリミテッドに信用でレバ掛けてポジションを取り、一撃で1.5億円を溶かしてしまった方が、話題です。ただこれ単に「信用取引コワイ」とだけ見ると、本質を見誤ると思います。どんな意図でこのポジションを取って、何が問題だったのでしょうか。

ダイドーリミテッドに信用投資

ダイドーリミテッドに信用3倍でポジションをとり、1.5億の資産を一撃で溶かしたのはみどたぬさん。下記にその流れがまとまっています。

togetter.com

狙いは何だったのか?

ダイドーリミテッドは高配当を打ち出したことで知られていました。正確にはアクティビスト系のファンドに狙われて、3年間100円の配当を出すと発表。実際に25年3月期には100円配当を出し、2月27日時点では予想配当利回りは7.3%に達していました。

優待企業や高配当企業は、権利付き最終日まで株価が上昇する傾向にあります。ダイドーリミテッドも、前回配当を出した後の権利落後の2025年春の694円(4月7日)から、2026年の権利付きまで株価は上昇し、2月26日には1342円まで上昇していました。

上げ幅は648円、ほぼ2倍になっていて、これに3倍レバをかければ6倍です。ここに1億突っ込めば、どれだけ儲かるか……というのはよく分かると思います。これがこの投資の狙いだったのではないでしょうか。

何が起きたか?

ところが思惑どおりにはなかなかいかないもので、2月27日大引け後に減配発表、ビットコイン購入、イラン戦争と、大きな材料が3つも登場し、株価は大暴落しました。

まず3年間は行うとしていた配当を、次のような理由で1年出しただけで半減させました。

2024年7月4日以降に発生した予見しえない事象による資金流出や、2025 年5月 13 日にお知らせしましたイタリアの連結子会社の減損損失計上にともなう会社法上の分配可能額の大幅な減少など、今後の株主還元の実施に一定程度の影響が生じております。

カネがなくなった、ということならまぁしょーないか? と思いきや、同日に「ビットコインの購入」も発表。メタプラネットのようなビットコイントレジャリー企業が流行った昨年とは違い、直近はビットコイン価格も1000万円前後と低迷。ここに10億円を費やすという発表が、さらに投資家の失望を買いました。

そしてタイミングが悪いことに、2月28日にはアメリカがイランを攻撃。週明けから株式相場は軟調で、3月4日までの3日間で日経平均は4600円下落しました。

結果、27日に1370円だったダイドーリミテッドの株価は、週明け2日にストップ安となり1070円、翌日も大き下げて805円となりました。実に42%の下落です。

何がいけなかったのか

さて、ここから何を学ぶべきか考えてみます。

 

まず、人気優待企業や高配当企業で、権利付き日に向かって株価が上昇する傾向にあるというのは、よく知られたアノマリーです。業績がどうであれ、800円の株価に対して100円の配当が出るのであれば、それは株価は上がります。しかも権利付き日に近づいてから買うほど資金効率はよくなるわけで、つまり権利付き日に向けて徐々に株価は上昇する形になります。債券と同じような値動きですね。

 

ここにレバレッジをかければ大きく儲かる。これも極めて合理的な戦略だと思います。

 

ただ問題は、個別企業リスクも同時に取ってしまったことです。この投資戦略は、

  • 市場のβ+権利付き日に向けた株価上昇+個別株リスク

という構造を持っています。ここで本当に取りたかったリスクは「権利付き日に向けた株価上昇」だったわけですが、「個別株リスク」が裏目に出てそれを帳消しにしてしまいました。さらにイラン攻撃で「市場のβ」もダメ押しした形です。

 

となると、「権利付き日に向けた株価上昇」のアノマリーをαとして取りたいなら、そのほかのリスクを消すのが王道です。例えば、複数の高配当銘柄に分散して投資することで、権利付き日に向けた株価上昇を取るのは同じでも、個別株リスクを軽減することができます。

ここでもし市場のβリスクもなくしたいなら、日経平均先物などをショートしておくのも一案でしょう。投資した企業のβを調べれば、どのくらい先物をショートすればマーケットリスクをニュートラルにできるか計算できます。

もちろん、レバレッジをかけることが危険だという意見もあるでしょう。ただレバレッジは、起こり得るリスクを見誤ったときに破綻の原因となるものであって、何が何でもレバレッジはいけないというのは誤りです。例えば、頭金20%で自宅を買う人は、レバレッジ5倍という信用取引を超える超長期投資をしていることに気づいているでしょうか。ポイントは、どのくらいのリスクがあるかを把握することなのです。

 

その意味では、今回の事件は、減配+ビットコイン購入+イラン攻撃 という、なかなかに激しい出来事が一気に集中したことで起きたと考えるべきです。ただこれくらいのことは起きると想定しないと、一気にすべてを失う可能性がある。だからこそ、複数の戦略を組み合わせることが重要だと思うわけです。

 

www.kuzyofire.com

 

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