
Appleの中興の祖、ティム・クックCEOが15年続けたCEOの座を後任に譲りました。Appleを創業し、いったん追放されながら復帰して復活させたスティーブ・ジョブスのは比類なき栄光を誇りますが、在任中、世界最大の企業としてAppleを導いたティム・クックの力量は素晴らしいものがあります。その成績を、投資家視点で振り返ってみましょう。※「25年」ではなく「15年」でした。そのため年平均リターンも全く計算が誤っていました。修正しました。
ティム・クック退任
Appleのティム・クックCEOは、IBM、コンパックなどを経て1998年にAppleに入社。サプライチェーンの大改革を行い収益体制を根本から変革するなどオペレーションのプロフェッショナルでした。2005年にCEO、そして2011年にCEOとなります。
プロダクトに関しては、極端にイノベーティブなものは生み出しませんでしたが、それでもAirPodsという世界最強のイヤホンを形にし、AppleWatchという新ジャンルを切り開きました。
経営スタイルとしては、プロダクトというよりオペレーション重視。カーボンニュートラルなど環境政策に力を入れ、iPhoneとビッグプロダクトをしっかりと生産し流通させるというところに強みを持っていました。
就任15年間で株価上昇は19.5倍
クックCEOが就任した2011年8月から現在まで、Appleの株価は大きく上昇し、収益率は+1858%。年平均に均すと+21.9%となります。

この間のM7などの競合他社のパフォーマンスを見てみましょう。うーむ。Metaの約22倍を筆頭に、こう並べると成績はパッとしませんね。Microsoftは上回っていますけど。。世界最大企業(時価総額で)の座を長く維持しましたが、投資家にとっては微妙だったのでしょうか?
- Meta +2166%
- Google +2133%
- Amazon +2131%
- Apple +1858%(19.5倍)
- Microsoft +1425%

いえ、忘れてはいけないのは配当です。Appleは配当を出し始めてから、その強力なキャッシュ生成力と低金利を背景に、借入をしてまで配当を出し続けました。M7の多くが近年まで配当を出していない、または今でも出していないのとは対照的です。
この配当を再投資したと仮定した配当調整後のパフォーマンスがこちらです。はい。+2233%で、Appleは見事に第2位となりました。年平均リターンは約24.1%です。
- Google +2413%
- Apple +2268%(19.5倍)
- Amazon +2207%
- Meta +2184%
- Microsoft +1926%
- S&P500 +483%

数字だけ見るとMicrosoftは+1926%で下位のように見えますが同期間のS&P500は+483%=12.7%/年。いかにM7が株価全体を牽引してきたかが分かりますね。
Appleの今後
さて、後任はジョン・ターナス氏。彼はハードウェア部門の責任者で、ほぼ全プロダクトに関わってきたといいます。
ぼくの評価だと、今のAppleの強さは一にも二にもハードウェアにあります。まずは圧倒的に高性能なAチップとMチップ。低消費電力かつユニファイドメモリというアーキテクチャが、モバイルにもAIにもマッチしています。このCPUの強さが、メモリなどが値上がりを続ける中、Macbook Neoという低価格のベストセラー機にもつながりました。
またアルミニウムを多用したボディ設計もさすがです。これだけの高級感を出せる素材をこの価格と精度で用いられるハードウェアメーカーはありません。iPhoneでもMacでも、Appleのハードウェア性能と品質は他社の一歩先を行き続けています。
一方で、お粗末さが増しているのがソフトウェアです。ソフトとハードの垂直統合の成果は出せているでしょうし、モトローラ→Intel→ARMとメインCPUをたびたび変更しながら互換性をなんとか維持し続けたのも今は昔。UIは増改築を繰り返した温泉旅館のようになり、iPhoneの数々のバグも全く修正されません。ハードウェアの品質が最高峰なのに対し、はっきり言ってOSの出来ではAndroidのほうが上です。
つまり今のAppleで最も評価されるべきはハードウェア。次に、Appleストアなどのリテールを含むブランドコントロールでしょうか。そんなふうに見るとジョン・ターナス氏がトップとなるのも分かります。
ただ、クック氏が残した課題でありターナス氏が向き合わなければならない最大の課題はAIです。Siriは全く現代レベルにアップデートできず、AppleInteligenceは完全に期待外れの烙印を押されました。自社LLM開発はまったく軌道に乗らず、ChatGPTとの提携を経て、現在はGoogleのGeminiを組み込む方針です。
またGoogle、Amazon、Microsoft、MetaがハイパースケーラとしてAIインフラに強烈な投資を行っているのに対し、Appleは比較するとほぼゼロというレベルの投資しか行っていません。実質、ここで競争していないということです。AnthropicやxAIを見ても、また巨大投資を決めた中国のByteDanceやAlibabaを見ても、次世代ITの中心はAIインフラなわけですが、Appleはここに張らないという賭けに出ました。
これが吉と出るか凶と出るかは分かりませんが、AIが既存技術やビジネスを破壊し始めたら、一番最初にイノベーションのジレンマに直面するのはAppleとなるでしょう。ソフトウェア畑ではないターナス氏が、AIとどう向き合うのかが、最大の注目点だと思います。