iDeCoの手数料が値上げされるようです。これまでも何に使われているのか分からない月間105円の手数料が取られていましたが、2027年から120円に値上げとなります。ついでに、年額払いにしている人についても、120円x12か月分の手数料を取る形に変更です。
これ、単なる「値上げ」だから改悪!という話ではなく、半官半民の機関が、利用者の代表という顔をしながら、関係者だけで勝手に値上げをするという利権構造に問題があると思うのです。
iDeCo値上げ
こちらが、国民年金基金連合会が提示した値上げのビラです。

理由は「物価・人件費の少々に伴い」「安定したサービスを提供するため」だそうです。月額で約14%の値上げ、年1回支払いをしていた人にとっては13倍の支払いになります。
もうちょっと詳細ないかな? と思ってiDeCoサイトを調べたら、値上げに関する資料とそれに対する理事の会議の議事録が載っていました。こちらの資料です。ここでは値上げの理由として「収支均衡を図るために必要な月額120円とする」としています。

また、年1回拠出の場合の手数料についても、下記のように「費用の公平な分担」という理由で月払いと同じ金額に変更する=要するに値上げとしています。

どういう経緯で値上げとなったのか
さて、この値上げに対してどんな議論がされてきたのか、直近の議事録をちょっと見てみました。

引き上げの理由は大きく3つあります。
一つは2020年以降の累次の制度改正(企業型DCとの同時加入要件緩和、DB合算管理、事業主証明廃止、限度額引き上げなど)に伴うシステム開発費の急増。これを借入金で賄ってきた結果、償還費用が積み上がりました。
2つ目は物価・人件費の上昇。過去10年でCPIが14%、SE単価が15%上昇したのに対し、手数料は2019年の消費税増税時(103円→105円)から実質据え置きだったというものです。
3つ目は新規加入者数の伸び悩みです。2022年度をピークに鈍化が続き、手数料収入の見込みが予算を下回る事態が続いてきました。手数料収入が計画を下回る=加入者が伸びないという事態が続いていて、懸念されていました。
こうした構造に対し議論がなされたわけですが、渡邊委員(筑波大准教授)が一貫して「健全な運営が阻害されてはならない。必要なら引き上げをちゅうちょすべきでない」と引き上げ容認の立場を明確にした一方、松田委員・小林委員(連合=労働組合側)は「慎重な検討を」と繰り返し、野尻委員は「規模の経済で上げなくて済むのが前提。経費の都合で上げるのはこちら側のロジック」と釘を刺しました。鈴木委員は「国民全体のための制度なのに、システム費用を国が補助しないのはおかしい」という根本的な問題提起もしています。
半官半民機関の限界
理屈としてはわからなくはありません。でもこれは、「システム開発にお金がかかったし人件費も上がっているから、カバーできるように料金を上げます」という話。経費を積み上げていって、それを手数料≒ほぼ税金 でカバーするというのが基本的な考えで、いかに経費を削減するか? という発想は基本的にないのです。
一部の委員は、経費が増えたので値上げしますというのは運営側の理屈だ、と牽制していますが、委員の中には「安定運営のためには値上げするべき」という人もいて、要するにどんな場合でも、運営側の意見を代弁してくれる委員がいるというのが、こうした組織の構造です。官僚組織は外部有識者などを集めて議論はさせますが、それはある意味アリバイ作りで、結局のところ自分たちが決めたシナリオを選ぶだけなのです。
でもまぁこれは仕方ありません。民間であれば、売上が上がっていないのに経費だけは増えているなんて状況で、今後も改善飲み込みがないとなれば、経営トップの首が飛びます。いかにコストをかけずに運営できるかに知恵を絞り、不必要な経費は絞り、場合によっては人件費だって削ります。それが市場経済、資本主義の論理だからです。
一方で官の組織は違います。「安定運営」というお題目の下、経費増大は甘受されます。収入が足りなければ手数料をアップします。経費削減のインセンティブは、内部には全くありません。だって、コストを下げても組織のトップは評価されませんが、安定運営に失敗し事故でも起これば首が飛びます。コストのほとんどは人件費と外部委託費という名前の、外部の仲間への送金なわけですが、これを削るというのは仲間に対する裏切りです。というか、そもそも官の組織においては、民間以上に人件費は聖域で、コスト削減のために給与を下げるとか首にするか、できるはずはありません。そういうものです。
つまり、無駄な仕事は積み上がり経費は増大するけど、それは新規顧客獲得には必ずしも結びつかず、収支が悪化してもトップは責任を問われず、最後は「安定運用」の名の下に国民に負担を押し付けて終わりとなるわけです。
これは官の方々が無能ということではなく、インセンティブ体系から必然的にそうなってしまうというだけの話です。いかに税収を増やし、いかに自分の部署に予算を引っ張ってくるか。それが官にとっての仕事のモチベーションであり評価であって、その予算がどのように使われてどんな効果を発揮したかなんて評価には関係ないし、彼らには基本的に関係ないからです。
iDeCoに関する国民年金基金連合会の横暴値上げについて、「たかが15円」という人もいるけど
— 九条@セミリタイア (@kuzyofire) 2026年5月1日
これは蟻の一穴であって、ユーザーは反対も脱退(返金)もできないのに、いくらでもそこから手数料をかっさらえる構造だというのが問題なのよ
全力で騒いでいかないと、今後、いくらでも改悪されるよ。
市場の論理で決まることなら取引を停止すればいいけど、
— 九条@セミリタイア (@kuzyofire) 2026年5月1日
iDeCoのように公的な性質が強いものは民主主義の観点で運用されるべきで、民主主義とはみんなが意見を言ってそれが反映される仕組みのことだと信じている。
市場の論理に毒されすぎてはいけないし、民主主義の根幹を忘れて諦めてもいけない
公的な制度なのに利用者の声が届かないのなら、それは独裁であり、
— 九条@セミリタイア (@kuzyofire) 2026年5月1日
それこそ「厚労省の天下り機関なのでは?」と疑われても仕方がないと思う
「そんなの最初から分かってた」って言う人もいるけど、
— 九条@セミリタイア (@kuzyofire) 2026年5月1日
日本の社会制度は
「お上が勝手に決めてる」(から期待するのがそもそも間違い)
じゃなくて
「民意に基づいて決まる」(から声をあげて改善していこう)
であるべき。そうでないと、やったもん勝ちになるんよ。
この国民年金連合会がいかに「利権」なのかについて、
— 九条@セミリタイア (@kuzyofire) 2026年5月2日
元新聞記者の穴切さん @anagirishirou がまとめてくれているので、問題意識を感じている方はぜひご一読をhttps://t.co/bkRHCvkf9d