九条です。FIRE後の自由な生活をベースに、投資・税制・制度・クリプト・法人運営を考えるブログです。 利回りや還元率の表面ではなく、税引き後の手取り、制度の前提、リスクと不確実性を見ながら、自由を増やす方法を書いています。

年金は繰上げ受給か繰下げ受給か? 現在価値シミュレーション

公的年金について、尽きない話題が「いつから受給するのがいいか?」。つまり繰上げ受給か繰り下げ受給か? です。この課題について、今回は「割引現在価値」という新しいアプローチで挑もうと思います。

年金の価値を割引現在価値に換算する

年金の議論でよく出てくるのが、「総受給額が多い少ない」「何歳まで生きたら得か損か」という議論ですね。この議論は計算が簡単でわかりやすい一方で、すごく違和感を覚えていました。

 

来年もらえる100万円と、10年後にもらえる100万円、20年後にもらえる100万円の価値が同じのハズがないからです。当然、来年もらえる100万円が一番価値が高くて、未来になればなるほど価値は減ります。それは死んでしまっているかもしれないということでもあるし、その間銀行に預けて利子をもらったり運用すれば価値が増えるということもあるからです。

 

このように将来のお金は価値が小さくて、その分を割り引いて現在の価値に直すことを「割り引く」といい、計算した結果を「割引現在価値」といいます。

 

年金は受給開始年齢の幅からして15年くらいあり、さらに受給年数は下手すると40年近くになるなど、他の投資に比べて「割り引く」ことの意味が非常に大きい。だから、将来もらえる年金を割り引いて考えるべきなわけです。

税金や社会保険料はあえて考えない

年金受給を大きく左右するもう一つのパラメータが、税金や社会保険料です。年金のくせにもらうときには所得税と住民税がかかるし、社会保険料もかかります。さらに金額が上がると住民税非課税世帯から外れるリスクもあります。

 

すでに年金をもらえるくらいの年代、つまり60代とかの人なら、ここを考えるのは非常に重要でしょう。精緻なシミュレーションもありです。

 

でもぼくのようにまだ50代の場合、これを考えすぎても仕方がないと考えています。税制にせよ社会保険料にせよ、10年単位ではさまざまな改正が入る可能性が高いと思うからです。「繰り下げすると税率が上がるから繰上げのほうが有利」みたいな話は、現時点では一理ありますが、将来もそうかは分かりません。それよりも、年月が経っても変わらない割引価値のほうでまずは考えるほうがいいと思うのです。

年金の現在価値を計算する

さて、年金の現在価値はどのようにしたら計算できるでしょうか? まずベースになるのは「ねんきんネット」で表示される65歳時点の月額年金額です。繰上げしても繰り下げしても、この月額年金額が変化するのです。もう一つは「何歳まで生きるか」そして「割引率」です。

 

現在50歳の人が、男性平均寿命である82.5歳まで生きるとして、65歳時点の月額年金金額が15万の場合の年金の「割引現在価値」は、3240万円(割引率0%の場合)です。この年金は資産3240万円と同価値なわけです。

 

一方で割引率をあげると価値は変わります。割引率1%なら2568万円、2%なら2045万円、3%なら1637万円となります。割引率(r)ごとに割引現在価値を計算したチャートがこちらです。

このとき、横軸は受給開始年齢になります。先の条件の場合、受給開始年齢69歳くらいまでは大差がありませんが、それを超えるとだんだん価値が下がっていくのが視覚的に分かります。そりゃそうです。だって82.5歳で死んでしまうので、あまり受給を遅らせると損だということが分かります。

年金の現在価値を分解する

今回、年金の現在価値を次のような式に分解して考えます。

K(c) =P x  M(c) x V(a,c,r)

それぞれの記号は、」

  • K 年金の割引現在価値
  • P 65歳時点の受給額(年額)
  • M 繰上げ・繰下げによる制度上の変動(受給年齢 c で変わる)
  • V 現在価値係数(現在の年齢 a 、受給開始年齢 c、割引率 rで変わる
  • a 現在の年齢
  • c 受給開始年齢
  • r 割引率

数式なのでとっつきにくいですが、ここから分かることはこうです。

  • 65歳受給額が多い人も少ない人も、繰上げ・繰下げによる変化は変わらない
  • 制度上は繰り下げるほどMが大きくなる
  • 仕組み上、繰り下げるほどVは小さくなる(死期が近づくので)
  • r が大きくなるほど、将来年金の価値は小さくなる=Vが小さくなる

つまり、Pはこれまでに収めた年金額で確定しているので、選択できるのは受給年齢であるcだけ。そしてcを増やすとMは大きくなり、Vは小さくなるので、その綱引きとなり、逆転するポイントが分岐点だというわけです。

ちょっと面白いグラフ

式で分かる人は構造が想像できそうですが、チャートで示されたほうがイメージが湧きますね。そこで死亡年齢男性平均の82.5歳、現在50歳の場合に、受給開始年齢で現在価値がどう変わるか見てみます。

ちょっと面白くないですか? 横軸は受給開始年齢、割引率ごとに別々の線を引いてみました。縦軸は65歳時点の現在価値を1としたときの変化率です。

 

ここで分かるのは、割引率 r=0の場合、繰上げてもほぼプラスはなく、逆に繰り下げると3%くらい現在価値が増加。ただし68歳くらいをピークに価値は落ちていくということです。つまり現在価値を最大化するなら68歳受給が最良ということになります。

 

一方、割引率 r=3%を見ると、逆に繰下げてもほぼ増えることはなく68歳を超えると現在価値が急速に下がっています。逆に繰り上げると価値が増し繰上げて60歳受給すれば5%ほど現在価値が高くなります。つまり現在価値を最大化するなら608歳受給が最良ということになります。

 

この割引率というのは、将来のお金を低く見積もる率という意味であり、また「このくらいの率で運用できる」と考える率でもあります。R=3%というのは「受け取ったお金を3%で運用できると考える」ということとほぼ同義なので、それなら繰上げて早く受け取ったほうが有利なわけです。

 

シミュレーション!

さて、下記に自分でいろいろパラメータを調整してチェックできるシミュレーションを用意しました。いろいろいじれば、なるほど!と構造が分かるというものです。

 

今回のポイントはP x M x V が年金の現在価値だということです。M と Vがどう変化するのかも合わせて表示しています。この2つの掛け算になるので、何を変化させるとどこがどう変わるのかが読み解けるようになっています。

 

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