九条です。FIRE後の自由な生活をベースに、投資・税制・制度・クリプト・法人運営を考えるブログです。 利回りや還元率の表面ではなく、税引き後の手取り、制度の前提、リスクと不確実性を見ながら、自由を増やす方法を書いています。

FIREとはチュートリアル完了だ

近年の株価高騰は、FIREへのハードルを著しく下げたように感じています。インフレが進んでいるとはいえ、株式を代表とする資産価値の増加はそれ以上で、多くの人が億に近い資産を持つようになってきました。

 

つまりFIREは遠い世界の出来事ではなく、ちょっと頑張れば目指せるものになってきた。でも、FIREはゴールではなくて、あくまでチュートリアルの終了だと思うのです。

資産の増加が止まらない

この近年の株価高騰は、2つのことを生み出しました。1つはインデックス投資の隆盛です。というより正確には長期投資の隆盛というべきでしょうか。これまでの日本株によくあった、上がったり下がったりする相場では、低いときに買って高いときに売るのがベストプラクティスでした。銘柄選定と売買タイミングが命だったわけです。

 

でも、昨今のような世界的に上昇する相場では、よほど変な銘柄でない限り買って持ち続ければ大きく上昇します。売ったり買ったりするトレードで利益を上げるよりも、インデックスでいいから持ち続けるほうが簡単に大きなリターンを得られるようになりました。

 

そしてその結果、投資をしていた人は多くの資産を手にしました。これが2つ目です。野村総研が昨年発表した富裕層調査では、普通のビジネスパーソンが株式相場の上昇に乗って億り人=富裕層になってしまう「いつのまにか富裕層」という言葉が使われ、話題になりました。

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FIREへのベストプラクティス

そんな中、FIREへの道はかつてないほど簡単になってきたと言えるかもしれません。あくまで近年の(例外的ともいえる)相場を前提としてですが、NISAとiDeCoに毎月ある程度の額を積み立てて、オルカンで運用していけば、30代には1億を超え、40代に入る頃にはFIREができる規模の資産が積み上がっていくのですから。

 

まぁこんな相場がいつまでも続くわけではないし、なんだかんだ言って、ぼくが会ってきた「FIRE済み」の人たちを見ると、「株式投資でFIRE」という人は極めて少ないのですが、それでも資産運用という意味ではベストプラクティスが固まったことは素直に嬉しいことです。

FIREはチュートリアル完了

そうやって資産を貯め、FIを達成し、さてついにFIREに踏み切るという人もいると思います。でも、ここで心に留めておきたいのは、FIREはゴールではなくて、チュートリアルの完了だということです。

 

チュートリアルとは、次に何をやったらいいかをシステムが提示してくれて、それをうまくこなすことで、世界に適応した能力を手に入れていく仕組みのことです。ゲームでは、ユーザーの傍らにアシスタントが出てきて「次はこれをやってみて!」「今度はこれを試してみて」と段階的に導いてくれます。最初は何をしたらいいかわからなかったユーザーも、チュートリアルを完了する頃には世界の状況を把握して、自分自身の戦略に基づいたプレイが可能になるわけです。

 

で、これって学校から会社に入り組織の階層を登っていく流れによく似ていませんか? 手取り足取り教えてもらう中でスキルを身に着けて、次第にできることが増えるとともに権限も増加していくというところはそっくりです。

 

ただ一つ違うのは、多くの人はチュートリアルを完了しないまま、スキルを身につける途中で年老いてしまうということです。自由を手に入れる前に、身体的な寿命が来てしまう。

自由を手に入れてから始まる

FIREの厳密な定義を云々してもしょうがないと思うし、FIが経済的自立を意味することに異論はないでしょうけど、REについては何をもってリタイアというか、諸説あります。だからこのFIRE論は、あくまで僕が思うものという意味でしかありません。

 

FIREとは、チュートリアルを完了し、労働者という立場からいったん卒業することだと思うのです。そのための前提条件は経済的自立です。

 

いったん労働者を卒業すれば、その後は好きな仕事をしてもいいし、仕事はしないで趣味に生きてもいいし、はたまたデカイことをやるには会社という組織のリソースを活用できることの意味もあるわけで再び労働者に戻るのもいいし、どんな選択肢もある。ただ、「お金を得るため」という理由から離れて選択できる立場になれるわけです。

チュートリアルを終えて途方にくれる人もいる

オープンワールド系のゲームでたまにありますが、チュートリアルを終えて自由を得たら、逆に何をやっていいかわからなくて途方にくれる人もいます。同様に、世界のチュートリアルを終えてFIREし、自由になっても、いや自由だからこそ、何をやったらいいか分からず、途方にくれる人もいるのです。

 

そうなると、資産はあっても何をしたらいいか分からない、不安だ、と、ある種FIRE卒業になってしまったりもします。

 

これはエーリッヒ・フロムがいう『自由からの逃走』にも近いかもしれません。人は自由を望むけど、自由には孤独・不安・責任が伴う。この重さに耐えられないと、人は自由を放棄して、権威・集団・服従・同調へと逃げ込むのです。

 

フロムは逃走の形として、強い権威に服従したり他者を支配したりする「権威主義」や、不安の対象を壊すことで自分の無力感を消そうとする「破壊性」、そして自分で考えず、世間や社会・国家・空気に合わせる「機械的同調」を挙げました。

 

特に、現代的な逃走としては、SNSの空気・会社の評価制度・消費トレンドなどに自分を合わせることもあたりそうです。他者の意向に合わせる必要なく、自分自身が信じた生き方ができるのがFIREであるはずなのに、それはそんなに簡単なものでもないのです。

 

ちなみに、何かを判断するときにも自由からの逃走は起こり得ます。いまだと自分で判断せずにAIに判断してもらう人が増えている。これは新しい形の「自由からの逃走」だといえるのではないでしょうか。

 

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