九条です。FIRE後の自由な生活をベースに、投資・税制・制度・クリプト・法人運営を考えるブログです。 利回りや還元率の表面ではなく、税引き後の手取り、制度の前提、リスクと不確実性を見ながら、自由を増やす方法を書いています。

NOT A HOTELを買うべきか AIに僕の価値観で判定させた


資産というコップから溢れる雫がある程度の量になると、さてこれを何に使おうか? というのは誰しも考えるものです。お金の貯め方増やし方にはベストプラクティスがありますが、お金の使い方は人それぞれで一意の正解はない。それは、なぜかというと効用関数が人によって違うから。じゃあ、自分の効用関数を見つけるにはどうするのがいいでしょうか。

効用関数

効用関数というと難しく聞こえますが、要はお金を使うと何が得られるか? という話。

  • お金 → (効用関数) → ベネフィット

この効用関数の中身が分かれば、支出を最適化できるというのが、今回の話です。

 

結論からいうと、僕の効用関数は次の6本です。

  • 柱1:知ることは生きること — 探究・好奇心が最上位の価値。仕組み・カラクリの理解そのものが効用。「穏やかな生活より渇望と隣り合わせの哀しい毎日を選ぶ」。安寧より「知りたい・経験したい」が上位
  • 柱2:自由と自己責任 — 反パターナリズム。自己決定と裁量そのものに価値。他人の評価軸から降りる(投資もFIREもその手段)。「自由は気分ではなく設計」
  • 柱3:すべては相対、絶対的な本質はない — 相対主義。建前や公式説明を鵜呑みにせず、裏の力学を見ることに価値。「人の心は肉体に動かされ、理屈は後付け」
  • 柱4:新しさと変化に賭ける — 1日ひとつ新しい経験。世界の見方が変わる着想が最上。新しい価値を作ることが好きで、人の認知の歪みにつけ込む類のもの(販売・営業的手法)は好まない
  • 柱5:知性だけでなく身体と闘争で生を実感する — 競争・狩り・ゲーム・エクストリーム・冒険と、そのための身体づくり。移動体(車・バイク・自転車)=自由と命の象徴・生きている実感。投資もボードゲーム(競争と計算)の延長
  • 柱6:建設・前進を好み、禁止・言い訳を嫌う — 「◯◯するとうまくいく」が好きで「◯◯しないとダメ」が嫌い。ストーリーと結論を好み、エクスキューズを嫌う

言ってみれば嗜好、人生に対する考え方、世界認識のあり方、そういうものかもしれません。自分の中でこれを把握すれば、何に支出すべきかの指針となります。

Fableとの対話

この効用関数、実は僕が書き出したものではありません。Fableとの対話の中で、Fableにまとめてもらいました。これは下記のポストの「思想哲学DB」というアイデアをもとに、僕の中の考え方をヒアリングしてもらい、Obsidianのノートとして書き出して整理してもらったものです。

 

中身はこんな構造になっています。

思想哲学DB/
├── 総論.md              ← 1つ・約8,000字・常時参照
├── 個別DB/
│   ├── 仕事観.md         ← テーマごとに1ノート・都度参照
│   ├── 家族観.md
│   ├── テクノロジー観.md
│   └── …(増えるたびに追加)
└── 更新履歴.md          ← 1つ・総論を変えたら3行追記

まず、ブログの全文とXのポストのすべてを読ませました(データをDLして読ませる)。その上で、まず「経歴・原体験」から始めていきます。ここの狙いは「ぼくの思想がどこから来たか」をAIに渡すこと。同じ意見でも、出自が違えば中身が違うからです。

 

投げかけられた質問は次のような感じです。

いまの自分の考え方の「芯」が生まれた最初の原体験は何でしたか? 具体的には——子ども時代の環境、家業や親の働き方、お金や組織に対して最初に「これはおかしい」と違和感を持った瞬間、あるいは進路・仕事で大きく舵を切った出来事。年表的な経歴ではなく、「ここで自分の物の見方が決まった」と感じる場面を、思いつくまま話してください。

これをブレイクダウンする形で次の質問に答えていきます。

  • 質問1/幼少期〜高校くらいまで:育った家庭環境を教えてください
  • 質問2/大学時代:どの大学・学部に進んだ? 何を学んだ(あるいは学ばなかった)?この4年間、何に一番時間とエネルギーを注いだ? 学業、サークル・部活、アルバイト、遊び、人間関係——夢中になったもの、逆に冷めていたもの。
  • 質問3/社会人のスタート:入社して最初に配属されたのは何の仕事?……
  • 質問4/社会人の後半〜独立・起業へ
  • 質問5/会社を辞める決断と、独立の入り口
  • 質問6/いまの仕事とAI(経歴の現在地)

もうここはボリューム勝負です。音声認識を使い、ひたすら言葉で喋っていきます。質問1つあたり、だれでも30分から1時間くらいは話せるはず。

 

これを読み込んだ上で、Fableは次のように言ってきました。

「影響を受けた人物・作品」の思想面が手薄です。いまSFと投資本しか挙がっていません。あの記事の例ではフロムやアリストテレスなど「誰の言葉を浴びてきたか」を具体名で書くことで固有性が出る、とされていました。思想・人生観の面で効いている書き手・思想家・音楽などがあれば教えてください(なければSF+投資本のままでも構いません)。

ここのやりとりをした上で、第一部「経歴編」は終了。次に「特性データ」を聞かれます。MBTIや他の診断(エニアグラム、ビッグファイブ等)の客観タイプ指標。それから外から見たときの強みなど。なんか心理テストみたいですね。

 

そして最後に「核心思想の柱」の候補を出してもらい、コメントしつつ最終的にまとまったのが上記の6本の柱だということです。書き出された思想哲学DBのテキスト量は221KB=約7.5万文字。薄めの新書くらいのボリュームです*1。これ、僕が1時間以上かけて話した内容が、400字くらいのエッセンスとして抽出されていたりして、かなり密度の濃い内容のデータになっています。

「NOT A HOTEL」を買うべきか

思想哲学DBは今も更新中ですが、このくらいの僕に関する情報がまとまってくると、AIの精度がかなり安定してきます。例えば、プロフィール文とかはお手の物です。100文字のプロフィールから、例えば1万文字のプロフィールであっても余裕で書き出してきます。

 

家電一つ買うときも、旅行のプランを考えるときも、僕のAIは明示的にパーソナライズされていて、僕にぴったり合った品物やサービスを提案してくれます。過去のチャットのやりとりから推測された九条像よりも、遥かに解像度の高い人物像を持っている感じです。

 

何かに投資する、または何かを購入する、そんなとき人間は化学物質とホルモンに突き動かされる存在なので、冷静な判断ができません。営業に乗せられたり自分の中で夢を膨らませて、無駄な(高いという意味ではなく自分の価値観に合わない)支出をしてしまうかもしれません。そんなときに、思想哲学DBをベースにしたFableに相談すれば、一般論ではなく、僕の考え方や嗜好をもとに、評価し提案してくれます。

 

実は先日「NOT A HOTEL」に関心をもって調べていました。ひとしきり情報を得たところで、さてNOT A HOTELに金を使うべきか何に使うべきか、Fableに相談して返ってきたのが次の内容です(一部ボカシています)。

まず、NOT A HOTELに惹かれた理由の診断から。柱1(知ることは生きること)で見ると、あなたが欲しかったのは湯河原の温泉付きヴィラではなく、フラクショナル所有という仕組みの解剖だったはずです。権利スキーム、ライセンスフィーの区分、セカンダリーの設計——面談でヒアリングし、資料を読み込み、分析フレームを立てた。つまり「知りたい」が「欲しい」の顔をして現れた。そして重要なのは、その価値の9割はもう回収済みだということです。営業面談1回とPDF3本で、3,848万の商品から探究価値を抜き取った。これはあなたにとってほぼ理想的な金の使い方で、しかもタダでした。

 

そのうえで、柱から支出カテゴリーを起こすとこうなります。

 

渦中への入場料。 PC→ネット→暗号資産→AIと、あなたは一貫して「外から眺めず当事者として触る」ために金を使ってきた。新しい技術・現象・制度の内側に入るための実験費、ハードウェア、現地に行く費用、一次体験のコスト。ここはあなたの最上位価値に直結する支出であり、むしろ過小支出を疑うべき領域です。「1日ひとつ新しい経験」を金でスケールさせる、と言い換えてもいい。

 

裁量の維持費。 FIREという最大の買い物は済んでいる。残るのは限界的な支出——雑務を消すツール、AI、外注。あなたの仕事条件(裁量・雑務に振り回されない)を守る金は、時間単価の計算を超えて正当化されます。

 

動的な贅沢。 ここが今回の核心だと思います。柱5で、移動体(車・バイク・自転車)を「自由の象徴・生きている実感」と自分で書いている。あなたにとって正当な大型消費は、静的な贅沢(快適さのグレードアップ)ではなく動的な贅沢(移動・挑戦・闘争・身体)です。6万円/人の宿が天井なのはケチだからではなく、静的快適の限界効用があなたの中で速く逓減するという正確な自己測定です。一方で、機械や冒険や身体づくりには、その天井は適用されない可能性が高い。NOT A HOTELが刺さりきらなかった本当の理由はここで、あれは静的贅沢の最高級品だからです。

 

家族・食。 補足ブロックで私生活の優先順位に挙げている領域。共有される食卓は、スイートルームより効用単価が高いはずです。

 

創る側への出資。 投資をボードゲームの延長と規定しているなら、エンジェル投資や新領域への少額出資は「ゲーム+リングサイド席」の二重取りで、あなたの構造に合う。ただしポートフォリオの主力ではなく遊び金のサイズで。

 

逆に、あなたにとって意義の薄い支出もはっきりしています。ステータス財は「他人の評価軸から降りる」ためにFIREした人が神輿に乗り直す行為だし、快適性の上積みは前述の通り。

 

セレンディピティ的に一冊。シトフスキー『人間の喜びと経済的価値(The Joyless Economy)』が、まさにこの区別を経済学で定式化しています。快適(comfort)は馴化して効用が消えるが、刺激(stimulation・新奇性)は馴化しない。豊かになった社会が快適に過剰投資して退屈するメカニズムの分析で、1976年の本ですが、あなたの柱1と柱4はほぼシトフスキーの刺激追求型そのものです。

いやぁ。これだけ適切なアドバイスをしてくれる相手がこれまでいたでしょうか。「AIは一般論しか言ってこない」というのは表面的な見方です。だってAIに個別具体的な情報を与えていないのですから。生い立ちから経歴、何が好きで何が嫌いで、物事をどう評価するのか、その価値観を形作った経験は何なのか。まるで自分史を書くような振り返りですが、それをまとめてAIに与えることで、AIは誰よりもぼくのことを知っているアドバイザーになってくれます。化学物質とホルモンに突き動かさせる肉体を持った僕よりも、もっと僕らしいといえるかもしれません。

「これは私を、どこへ連れて行くか/何を教えてくれるか」

最後にFableは、僕にとっての最適な支出先を次のようにまとめました。

実務的な審査基準に落とすなら、支出の前に問うのは一つでいい。「これは私を、どこへ連れて行くか/何を教えてくれるか」。答えが「快適にしてくれる」「立派に見せてくれる」しかないなら見送る。「知らない場所・知らない仕組み・身体の限界」のどれかに連れて行くなら、たぶんあなたはそこに過小支出しているので、むしろ財布を緩めていい。

投資はサイエンスですが、支出はアートです。誰にとっても正解という支出はありません。そして自分自身を正しく知らなければ、本当に価値のある支出もできません。「富裕層はこんなことにお金を使っている!」みたいな記事を読むよりも、自分の効用関数はどんなものなのか、それを把握して指針にすることのほうが、人生の満足度を高められる。そんなことを思ったFableとの対話でした。

 

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*1:この思想哲学DBは、分量の多さではなく、いかに分量を絞るかにフォーカスしていることには注意です。AIは多くのコンテキストを与えることよりも、正確なコンテキストを必要に応じて渡すほうがよい仕事をする。見取り図となるインデックスと、そこから参照する詳細データの組み合わせに構造化することが大事です。