FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

インカムゲインとキャピタルゲインは表裏一体

さまざまな投資において、収益はインカムゲインとキャピタルゲインに分かれます。一般的には、インカムゲインは投資した資産から安定的、継続的にうまれる収益を指します。キャピタルゲインは、投資した資産を売却したときに買った値段との差によって生まれます。買ったときよりも下がっていたらキャピタルロスとなります。

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株の場合は、配当がインカムゲイン、売却時の利益がキャピタルゲインとなります。不動産投資の場合は、家賃収入がインカムゲイン、売却時の利益がキャピタルゲインです。

 

 

この教科書的な定義だとインカムゲインは安定的で、キャピタルゲインはギャンブル的。両者の性格はけっこう違うように見えますね。しかし、実態はもう少し込み入っていて、両者は表裏一体だと考えることができます。そこを読み解いてみましょう。

 

まず株式の場合、株価がキャピタルゲインを決めます。買ったときよりも株価が上がればキャピタルゲインが生じるわけです。では、なぜ株価は上がるのでしょう? 長期的に見ると、その企業が事業によって得た利益が蓄積することで株価が上がると考えられます。1億円のキャッシュ(資産)を持っていた会社が、利益が横ばいで推移すると仮定して、100億円までキャッシュ(資産)が増加したら、株価は100倍になる計算です。わかりやすくするためにキャッシュと書きましたが、実際にはそれは有価証券や土地、設備やのれんに形を変えているかもしれません。その企業が持っている資産の増加は、株価の増加につながります。これを株用語では、PBR(株価純資産倍率。1株あたりの資産に対して株価が何倍かの指標)といいます。

 

一方で、配当を行うとどうなるでしょう? 配当として株主に支払った分だけキャッシュ(資産)は減少します。キャピタルゲインの根拠となる純資産は、配当分だけ減るわけです。

 

99億円を稼ぐ企業は、そのどこまでを配当に出すか(インカムゲイン)、または純資産として社内に置くか(内部留保、キャピタルゲイン)の選択をしているわけです。

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日本企業では、配当と社内留保のバランスを取る会社がほとんどですが、米国企業では配当に振り切ったり、内部留保に振り切ったりする企業もあります。配当を出さずに利益を内部留保として、将来に向けた投資に振り向けている企業があります。AmazonやGoogleなどが代表的ですね。利益を自社の投資に向けることで、さらなる利益拡大につなげることを狙う企業です。

 

一方で、内部留保を行わず、配当に振り切る企業もあります。エイリス キャピタル(ARCC)は、米国でBDC(Business Development Company)というジャンルに分類される企業です。信用力の弱い企業への融資や新興企業への出資によって利益を得ています。ARCCは、収益のほとんどを配当に出しており、利回りは約9%に達します。逆に株価は横ばいという状況です。

 

コルゲート・パーモリーブ(CL)という歯磨きで有名な米国の消費財企業は、利益のほとんどを株主に戻すポリシーで運営しています。利益のうち何%を配当に回すかという配当性向は50%を優に超えており(インカムゲイン)、さらに毎年発行済株式の1%程度の自社株買いを行っています。自社株買いは株式数を減らす効果がありますので、1株あたりの価値はその分増加します。自社株買いにより、この10年で発行済株式数は15%程度減少しており、それが株価上昇(キャピタルゲイン)につながっています。

 

このように、投資家にとっての利益は、その企業が生み出す利益そのものであり、それを配当として受け取ればインカムゲインに、内部で投資に回したり自社株買いに回したりすればキャピタルゲインとなって、株主に戻ってきます。

 

正直、配当もせず投資もせず自社株買いもせず、現金を溜め込んでいる企業は、株主からすると、本来株主のものである利益を有効活用できずにいるといえます。もちろん、現金がなくて潰れてしまってはもともこもないのですし、投資チャンスを逃さないために機動的に使える現金も重要です。しかし、その限度を超えて現金を溜め込んでいる経営者が多いのは困ったものです。

 

さて、株式と同様に不動産投資でも、インカムゲインとキャピタルゲインは表裏一体です。それは通常不動産投資では購入時に融資を受けて、それを家賃収入から返済していく形を取るからです。

 

不動産のキャピタルゲインは、購入時よりも高く売れたか安く売れたかだけではなく、売却価格から銀行借入の残高を返済した残りによって決まります。1000万円の自己資金で1億円の物件を買い、10年後に1億円で売却したとします。このときのキャピタルゲインは、銀行借入残高が9000万円より多いか少ないかで決まるわけです。

 

返済が早く進んでいて借入残高が5000万円まで減っていたら、1億円(売却代金)ー1000万円(自己資金)ー5000万円(借り入れ残高)=4000万円がキャピタルゲインになります。

 

借入残高は、毎月の家賃収入から返済をしていくことで減少します。返済して残った金額が正味の収入(キャッシュフロー)となり、インカムゲインとなるわけです。

 

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毎月どのくらい返済していくかは、ほかの要素が同じなら借り入れ期間で決まります。借入期間が長いほうが毎月の返済が少なく済み、インカムゲインが増加。借り入れ期間が短いと毎月の返済が多く、借入残高の減少が進むことでキャピタルゲインが増加します。

 

つまり、ここでもインカムゲインとキャピタルゲインは表裏一体だということです。

 

そしてインカムゲインとキャピタルゲインのどちらが良いかはさまざまな要素が関係するので一概にいえません。まず税制が異なります。さらに借り入れ利率も影響します。借入残高の状況は、次の借り入れを起こすときの審査にも大きく影響します。さまざまな要素が絡みますが、いずれにしても、インカムゲインとして収益を得るか、キャピタルゲインとして収益を得るかはトレードオフであり、ある程度コントロールできるものだということを覚えておきたいと思っています。