バングラデシュの貧しい農村の人たちにビジネスを起こすための少額の資金を貸し付ける、グラミン銀行の創設者であるムハマド・ユヌス博士が、講演で面白いことを言っています。
その上でユヌス氏は、人生を2つのフェーズに分けることを勧めている。第1フェーズは自分と自分の家族の世話に専念するフェーズだ。この段階で、自分と家族が生きていくために必要な金額を考える。贅沢な暮らしをするということは人生の目的ではないから、必要充分な暮らしが前提だ。
暮らしていくために必要充分な金額が確保できるようになったら、次は世界のために尽くすフェーズに入る。これは人生で最も重要で意味深く、クリエイティブな段階だ。何をやってもよい。利他的な動機を持って活動することが大事だ。もちろん、裕福に生まれついた場合は一足飛びにこの第2フェーズに飛び込めばいい。
これは、資産をためて経済的自由を手に入れたら、次のフェーズでは世界のために尽くすフェーズに移行しましょう、という話ですね。経済的自由といっても贅沢ができるレベルではなく、必要十分な暮らしができるようになったら、現在の仕事をリタイアして次のレベルに進みましょう、と。
この記事では、もう一つ、時代を先取りしたことを言っています。
また、既存の経済の常識ではもう一つ難がある。それは、誰もが就職をしなければいけないという、誤った、非人間的なイメージをもたらしたということである。人間は、資本家のために働くことを目的に生まれてきたわけではない。人間は生まれながらにして独立した存在で、活動的で、創造力とエネルギーに満ち、問題を解決する能力を持っているのだ。
ユヌス氏は、「就職していないから失業者だ」という特に若い人たちに対して、起業家になるように勧めている。就職することが前提でなくなれば、失業者も存在しなくなる。グラミン銀行で融資を受けた、教育を受けていない貧しい女性はみな起業家になった。ならば、若い人たちもできるはずだ。そうユヌス氏はエールを送る。
就職するのではなく、自らビジネスを起こす。会社に雇われるのが当たり前という風潮は、たぶん日本だけに限ったことではないのでしょう。グラミン銀行は、少額融資を通じて起業家を増やすことに成功しました。
起業家といっても、ベンチャーキャピタルから出資を受けて株式上場を目指す、というような話ではありません。グラミン銀行の例では、借り入れた金で牛を買って農業を拡大したり、リキシャを買って輸送ビジネスを始めたりといった、スモールな、けれども雇われる形ではない起業を指していたりします。
十分な暮らしができるレベルまで資産が溜まったら、人生の次のフェーズは小さくても起業し、自分がオーナーとして世の中に貢献していく。これって、まさにぼくの考えるセミリタリアです。
↓こちらグラミン銀行が話題になったときに読んだムハマド・ユヌスの自伝です。かなり刺激的な内容ですよ。
- 作者: ムハマドユヌス,アランジョリ,Muhammad Yunus,Alan Jolis,猪熊弘子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1998/10/01
- メディア: 単行本
- 購入: 14人 クリック: 106回
- この商品を含むブログ (43件) を見る