2017年の投資最大の話題だったbitcoinの発明者であり、インターネットに匹敵する(とぼくは思っています)ブロックチェーンの発明者であるサトシ・ナカモト氏。彼はオンライン上にやりとりが残っているだけで、未だに正体がわからない謎の人物です。
影響力が非常に大きいにもかかわらず正体不明ということで、サトシ・ナカモトとは誰なのか? というのは定期的に盛り上がる話ですが、「サトシ・ナカモトはAIだった」というオカルトじみた説が出ています。
正直、陰謀説以上のものではないと思うのですが、SF好き的にはかなりそそる内容です。これはbitcoinはAIでなければ作れないという話ではなく、bitcoinが生み出したエコシステムは、振り返ってみればAIが求めるような内容になっているのではないか? という点からの想像になります。
巨大で知的なAIにとって、どのような状況が最も望ましいか、考えてみましょう。最重要なリソースはコンピューティングパワーです。そして、それは特定の誰かや国家に依存するのではなく、「誰も止められない」構造であるのが理想です。
全世界の電力消費量の0.3%はbitcoinネットワークが使用
現在のbitcoinネットワークは年間およそ71TWhの電力を消費しているそうです*1。これは1年前の5倍であり、急速に拡大していることが分かります。日本の電力消費量は928TWhですので、すでにその0.5%程度に達しています。なお、アメリカは3867TWh、中国は5219TWh、世界全体では21000TWh程度となっています。ちなみに、bitocoinネットワークの71TWhという数字は既にニュージーランドやポルトガルの電力消費量を抜き、ベルギーなどに迫っているようです。
※digiconomist Bitcoin Energy Consumption Indexより
計算量はスパコン100万台分
また、bitcoinのマイニングに費やされるハッシュパワーは、現在40,000,000Thash/secに達しています。これは1年前の約8倍です。
※blockchain.info より
このハッシュレートをコンピューティグパワーの表記でよく使われるFLOPSに変換してみます。「700Mhash/s が 5340GFLOPSに相当する」という仮定や、「4640GFLOPSが863.4Mhash/sに相当する」という仮定(いずれも、下記の「ビットコインのP2Pネットワークは世界最大のコンピュータ」なのか?より)に基づくと、だいたい1Mhash/sあたり5GFLOPSくらいという感じでしょうか。
1Thash/sは1,000,000Mhash/sですから、1Thash/sで5,000,000GFLOPS = 5P FLOPSとなります。Wikipediaによると2018年時点での最高性能のスーパーコンピュータが約200P FLOPSということですから、40Thash/s相当といえるでしょう。
現在のbitcoinネットワークのハッシュレートは40,000,000Thash/secなので、世界最高のスーパーコンピュータの1,000,000倍(100万台分)に達していることになります。
国家的事業でもなければこれだけの規模はできないはず、だった
一国の消費量に匹敵する電力を使い、スーパーコンピュータ100万台分の演算能力を発揮する。こんなことが自己組織化的に生まれ、しかも誰も止めることができないなんて、不思議なものです。
いまでこそ、この演算能力はなにか意味のある演算に使われているわけではないはずです((PoWのポイントは、演算に意味があるのではなく、膨大なコンピューティングパワーをそこに費やすことにあると考えています))。でも、もしこれがAIのディープラーニングなどの演算に利用できるようアルゴリズムを変えることができたら? と思うとワクワクします。
もしもbitcoinネットワークが、世界的規模のAIのプラットフォームになり得るなら、サトシ・ナカモトは経済概念を大きく革新する仮想通貨を生み出しただけでなく、国家や企業などどこにも属していない世界最大のAIを生み出す基盤をも作り上げたことになります。
SF的な妄想になりますが、面白い話です。
*1:過大な推計だという指摘もあります