iDeCoは、年金代わりに自分で積み立てを行い、その代わり税金が安くなる制度です。積立金は所得から控除され、さらに投資先の値上がり益も非課税になります。受け取るのは60歳以降になりますが、その際も年金として受け取れば「公的年金等控除」、一時金の場合は「退職所得控除」が適用になります。
いろいろメリットはありますが、積み立て先を投資信託などにすると、値下がりするリスクがあります。これを嫌って、運用先を定期預金にするという裏技があります。
確かに、損する可能性はゼロで、掛け金を控除できるので、やらないよりはかなりマシです。所得税は収入から所得控除(だいたい100〜200万円くらい)を引いた残りの所得に対して、累進課税でかかります。
普通のサラリーマンなら、だいたい20%か23%でしょう。さらに、住民税が10%一律でかかります。iDeCoへ積み立てるとその分を所得から控除できるので、所得税+住民税の30%〜33%分、税金が減らせるというわけです。
言ってみれば、積み立てた額に対して30%〜33%の利回りが得られることになります。
しかし、この利回り、信用していいのでしょうか? 気になるのは、所得控除は積み立てごと1回きりですが、戻ってくるのは60歳以降だということです。最低10年は積み立てないと受け取れる年齢が遅くなるので、10年、15年、20年積み立てた場合にどうなるか、シミュレーションしてみました。
前提は、iDeCoの手数料は無料の証券会社を使うこと。ただし、iDeCoには国民年金基金連合会に103年、事務委託先金融機関手数料に64円が、毎月最低かかります。合計で167円です。掛け金は一般サラリーマンの上限である、月額2万3000円としています。所得税と住民税を合わせた税率は30%としました。定期預金の金利は、みずほDC定期の2018年11月金利0.01%としました。また、受け取りは退職一時金扱いで、全額が控除枠に入るという前提で無税として計算しています。
考え方としては、毎年のキャッシュフローを出しました。掛け金分マイナスですが、所得控除分が戻る計算です。そしてこのキャッシュフローを元に、IRRを計算しています。
これを見ると、50歳からiDeCoに加入して10年後の60歳に一時金を受け取った場合は、IRRで7.8%に達していますが、期間が長くなるほどIRRは悪化して、20年の場合は3.2%まで下がることが分かりす。定期預金というノーリスク運用なので、3.2%はたいへん良いとも言えますが、最初の「利回り30%」という数字とはだいぶ開きがあります。
今度は、税率を33%にして計算してみました。
わずかにIRRが上昇します。15年の場合で5.5%となりました。
それでは、定期預金ではなく多少のリスクのある「明治安田DC日本債券オープン」ではどうなるでしょう? 国内公社債への投資ですので、リスクも抑えられている一方、リターンは同ジャンルの平均で年率1.08%と出ています。
こちらは税率30%での試算ですが、やはり1%程度のリターンでは、IRRも大きくは変わりません。それぞれ1%の上昇でした。このリターンでは複利運用効果が現れません。
次に、大きなリスクを取って、「たわらノーロード 先進国株式」ではどうでしょう? 同ジャンルのリターンは年率で平均7.46%とされています。
こちらを見ると、10年と20年のIRRの差がかなり縮まっています。節税効果よりも運用効果のほうが大きくなったせいでしょう。
さて、そんなわけで、iDeCoを投資として考えずとも、元本保証の定期預金に突っ込めば、節税効果により、10年で最大8.6%の年平均リターンをあげられることが分かりました。また、この方法の場合、期間が長くなるとリターンは大きく下がり3%程度になってしまいます*1。
↓iDeCoで年金を考えた
*1:20年というような長期の場合、インフレが進行するリスクもあります。3%のリターンですと、場合によってはインフレ率を下回ってしまい、実質的に元本を損なう可能性もあります。もっとも、iDeCoの定期預金は1年もので毎年金利は見直されますから、インフレが進行したら金利も上昇してなんとかなるともいえますが。