オルタナティブセグメントの一環として、たまにオプションなどのデリバティブ取引もしています。資産を増やすのが目的というより、金融の仕組みの面白さを実感するためですね。ほぼゼロサムゲームだと認識しているので、無理に大きなポジションは取らず、最大でも総資産の5%までのリスクにしています。
銀オプションプット売りの特徴
銀オプションのプット売りは、これまでも何度か書いてきましたが、次のような特徴を持ちます。
- プット売りは、指値買いと同義である
- 購入に必要な現金がある限り、リスクは限定的
- サクソバンクの場合、権利行使された場合銀のCFDポジションに変わるので、オプションの証拠金がほぼそのままCFDポジションの証拠金になる
- もし権利行使されたらCFDを持ち、カバードコールに移行
また損益の出方は次のようになります。
- 売った時点でプレミアムを受け取る
- 指定した満期に、指定した価格(ストライクプライス)を上回っていればポジション解消(プレミアム分利益)
- 指定した満期に、指定した価格を下回っていれば、指定した価格で現物を購入しなくてはならない
- 満期までに価格が動いた場合は、含み損益が変化する
今回のポジション
そのため、指定した満期までに、ある価格以下にならなければ利益ということです。今回は、サクソバンク証券で次のようなオプションを売りました。
- 現在(2月8日)の価格は、銀1オンスあたり15.678ドル
- 満期は2月13日(5日後。ただし途中に土日あり)
- ストライクプライスは15.5ドル
- 5000オンスの銀プット売り
5日後というたいへん短い期間のプット売りなので、プレミアムもたいへん少なく、68ドル≒7480円。証拠金は約995,000円です。期間内のリターンは0.75%で、年あたりにすると54%に相当します。最初にプレミアムをもらうので、ストライクプライスを仮に下回っても利益が出て、損益分岐点は15.4864ドルです。
デルタは21%で、これは満期までに価格が15.5ドルに達する可能性がほぼ21%だということを示しています。
満期までの価格変化のイメージは次のようになります。まず1オンスあたりのプット売りプレミアムは0.0136ドル、逆に買い戻す場合は0.0527ドル(5000オンスで263ドル)が必要です。つまり、263ドル−68ドルの−195ドルからポジションが始まり、そこから満期に向けてマイナス額が減少していって、満期にゼロ近くになる感じです。
満期に向けてどのくらいのペースでマイナス額が変わるかはセータを見ます。セータは-36ドルで、1日あたりー36ドル分プレミアムが減少します。買い戻しプレミアムが36ドルずつ減っていくので、ポジションの含み損がそれだけ減っていく感じです。セータは、下記のような複雑な動きをします。
- ATM(現価格とストライクプライスが一致)の時にセータは大、ただし残存期間が長いと小、短くなると急速に増大
- OTM(ストライクプライスより現価格が高い)、ITM(ストライクプライスより現価格が低い)の場合、残存期間最後でセータは減少
ボラティリティ(IV)は15.5%。少し低いくらいの水準です。とはいえ、残存期間が極端に短いため、ベガは小さく28ドルしかありません。これはIVが1%上昇するとプレミアムが28ドル上昇するということを意味しています。
グリークを概観すると、プット売りポジションは次のようになります。
- デルタロング 価格が上がると利益
- ガンマショート
- セータロング 時間が経つと利益
- ベガショート 激しく値動きすると損失
別の表現でいうと、現在15.678ドルの銀価格が、5日間経って15.4864ドル以上なら利益ということになります。
2月11日 月曜日
土日を挟んで月曜日。日本は建国記念の日で休日でしたが、米国市場は営業しています。銀価格は15.7965ドルまで上昇しました(+0.1185)。デルタが1032XAGでしたので、約122ドル相当のプレミアムが減少し、またセータによって36ドル✕2=72ドル分プレミアムが減少しました。買い戻しプレミアムの減少なので、ポジションにはポジティブです。
195ドル-122ドル-36ドルで、ー37ドルの計算ですが、実際には7060円≒約−64ドルの含み損益です。ガンマがー957XAGあったので価格上昇でデルタが減少したことが影響しているでしょう。
デルタは375XAGに減少、ガンマは-553XAGに減少しました。残存期間が減ったことでセータは45ドルに上昇しています。ボラティリティは一時上昇しましたが、再び落ち着いて19.5%です。
2月12日 火曜日
12日火曜日です。夕方のスナップショットになります。銀価格はいったん下がったものの再び上がり、この時点では15.794ドルに。ボラティリティは変わらず19.4%ですが、残存期間が減少したためデルタもガンマも小さくなっています。セータによるプレミアムの減少により、含み損は7060円から2734円まで減少しました。この時点でポジションをクローズしても、受け取りプレミアムを上回っているので利益が出る状況です。
いい感じ、と思いきや、深夜になって段階で銀価格は下落しました。15.6890まで下落(ー0.105ドル)。ガンマは増大し、デルタも増加、含み損は4549円に拡大しました。
サクソバンク証券のオプションの行使日はEST(米国東海岸時間)午前10時です。つまり、2月13日の日本時間深夜が満期になります。あと1日ですね。
この時点でデルタは367XAGです。デルタは通常0〜1の値で示されますが、サクソバンクの場合、このような表記になります。5000オンスに対し、銀価格が1ドル動くと367ドル変化するという意味合いです。0〜1に直すと7.34%ですね。
2月13日 満期日
さて、13日の深夜が満期です。夜9時ごろの状況は次の通りでした。ポジションの含み損は-1738円まで減っており、最初にもらっているプレミアムが68ドルなので、ほぼ利益は確定です。
銀価格は16.6865とストライクプライスの16.5を上回っているので権利行使もないでしょう。
深夜になって満期が来て、権利行使されずプット売りのポジションがクローズしました。次の通り、損益管理では6142円のプラス。残高は7564円(≒69ドル)増加しました*1。
満期直前のチャートを見たら、一時的にストライクプライスの15.5ドルを下回って、15.44ドル台まで突き抜けていたタイミングがありました。オプションは満期タイミングでしか権利行使されないので、こうした場合でもロスカットされないのはいいところですね。
もっとも仮にここで権利行使されていたとしても、キャッシュがあるので銀のCFDに変わり、その後値を戻しているので利益的には損失はなかったともいえます。
久しぶりに銀オプションを売りましたが、なかなかドキドキしますね。わずか6000円の利益のために100万円の資産を入れてドキドキするのは割に合わないといえば合いません。ただ個別株などよりも面白くはあります。
*1:なぜ損益と口座残高の変化が一致しないのかは、ちょっと不明です。サクソバンクのスマホアプリでは、微妙に指している数字が違っていたりします。