前回、27歳から1億円の資産を目指すとき、次の3つの条件を満たせばおそらく可能だというところまで分析しました。
- 5000万円を積み立てること
- 幾何平均6.3%で運用すること
- 合計期間は20年
この中で最も難しいのが「5000万円の積み立て」です。そして積立額を減らすために、運用リターンをむやみにアップする計画を立てるのは避けたほうがいい。ならどうするのがいいのでしょうか?
ならどうするのか?
今回「20年間」「1億円」という縛りがあります。その上で選択できるパラメータは、「積立額」と「運用リターン」でした。運用リターンを過去平均以上に上げるのが危険ならば、積立額をなんとかするしかありません。
つまり20年で5000万円を積み立てられるような設計をしようということです。別の言い方をすれば入金力アップです。つまり、このお題は、結局のところ入金力の課題になるわけです。そして入金力には、「報酬の高い仕事に就く」方法と「株式として報酬を得る」の2パターンがあります。
給与から5000万円貯めるのはけっこうキツイ
まずは報酬の高い仕事に就くほうから見ていきましょう。27歳時点で、年収が1000万円を超えているなら、あまり複雑に考えなくても、手取りの3分の1を積み立てていけば20年で5000万円を超えるでしょう。
20代で1000万円を超える仕事は非常に少ないですが、ないことはありません。外資系のITや金融、コンサルならいけますし、公認会計士や弁護士などの士業でも勤め先によってはいけるでしょう。中小企業でも、若くして成績優秀管理職につけば1000万はあり得ます。
ただ普通は給与はキャリアの後半ほど高くなるので、イメージとしてはこんな建付けで5000万円を積み立てることなるでしょう。
- 27歳〜36歳:ボーナス全額+月5万円 年平均125万円
- 37歳〜46歳:ボーナス全額+月15万円 年平均375万円
若い間の貯蓄額が少ない分、後半の10年間は年平均375万円の貯蓄が必要になりますが、それには少なくとも手取りで1100万円くらいほしいところです。手取り1100万円は額面年収で1600万円くらい。ただ30台後半でこの年収は相当ハードです。経産省の未来人材ビジョンによると、従業員100名以上の企業に勤める人で、課長になるのは38.6歳、部長になるのは44歳。で、課長の年収が1000万円、部長の年収が1600万円くらいらしいです。
つまり37歳から年375万円貯蓄するプランでは、みんなが課長になるタイミングで部長レベルになっている必要があります。大出世が必要だということです。
結論としては、20代から年収1000万円を超える高収入企業に入る(入っている)か、30代で部長レベル(=年収1600万レベル)に出世するか、どちらかとなります。
今そういった状況にないなら転職するしかないわけですが、そう簡単ではありませんね。まぁGAFAクラスの外資本社に転職していった友人もたくさんいて、その人達は優秀ではありますが、とんでもなく優秀かというとそこまででもない(失礼!)ので、タイミングなどの運の良さというのもあるとは思います。
給与ではなく株式をもらおう
給与アップの壁はかなり厳しい。特に若いうちの高収入は相当厳しい。ではどうするか。実は、給与で不足の2500万円を貯めようとするととんでもなく難易度が高いけれど、株式であればそこまででもありません。ここでいう株式は「株式取引」という意味ではありません。企業から給料ではなく株式をもらうという意味です。
なぜ株式が重要なのでしょうか。企業が得た利益は、従業員(給与)と株主(配当や株価)の2者で分配されます。ただし、企業の規模が大きくなって売上・利益が伸びたときは人員も増加するため、売上や利益と比例するようには給与は増えないのです。一方で株式に対する報酬は比例して増加します。
そのため、成長企業に関わって何らか株式を取得すれば、給与では得られないくらいの報酬を手に入れることができるわけです。
例えばストックオプション(SO)です。2021年12月に上場した32社について、1人あたりにどのくらいのSOが付与されたかと推定した記事があります。それによると、上位の会社は平均で4000万円のSOが付与されていました。
未上場タイミングでのSOの取得価格はたいへんに低いことが多く、ほぼこの金額の8掛け(2割は税金)が利益だと考えていいでしょう。つまり、これらの会社に所属していれば、平均3200万円が得られたわけです。
IPOを目指しているベンチャーなら、ほぼ間違いなくSOも付与しているはずで、実際にIPOに漕ぎ着けられるかは分かりませんが、こうした企業に入り込めれば不足分を埋めるに十分なお金を手にすることも可能です。
実際、上場を経験したCFOが、上場後にIPO準備に入った企業に転職し、3〜4年で再び上場させてSOを受け取り、また別のベンチャーに転職するというのもよく見られる光景です。SO渡り鳥みたいな感じですね。
起業の選択肢
もう一つ、給与ではなく株式として報酬を得られるのが起業です。ぼく自身は起業を経験していないので、あくまで周りの人たちの話ですが、起業の成功率は以前ほど低くはなくなりました。
まず一昔前と違い、起業にあたって代表者の個人保証を設けることはほぼなくなりました。つまり会社が倒産したからといって、個人的にも破産するわけではありません。何度か起業にトライして失敗したが、3回目で大成功したみたいな人もけっこういます。また失敗に終わっても、起業経験者を求める会社はけっこう多くて、経験値としてもバリューがあるでしょう。
2つ目に、必要な初期投資額が大きく下がりました。というより、お金儲けが目的なら、初期投資が大きいビジネスを始めてはいけません。つまり飲食業とかは避けたほうがいいという話です。これについてはホリエモンが言っている「起業してほぼ確実に成功する方法」がシンプルながら的を得たことを言っています。
私は起業するに当たって、自分の好きな商売ではなく確実に上手くいく商売から始めたほうがいいと言っている。具体的には、
- 利益率の高い商売
- 在庫を持たない商売
- 定期的に一定額の収入が入ってくる商売
- 資本ゼロあるいは小資本で始められる商売
そして起業での大成功はIPOですが、別にIPOまでいかなくても成功といえる方法はけっこうあります。例えば、企業売却/事業売却なら数千万円から数億円で売れます。意外かもしれませんが、「◯◯万PVのアフィリエイトサイト、2000万円」なんて感じで売却案件が出回っていたりします。
起業とは事業の株式を無料で取得して、株式としての報酬を得るということです。給与とは違い、株式は事業がうまくいくと一気に大きな金額を得ることができます。
株はトレードするのではなくタダでもらうかタダで作り出せ
というわけで、ぼくが今27歳なら、SOをしっかり配っていて数年後に上場できそうな企業に転職します。その企業が上場できなくても、さらに転職した先が上場できればいい。できればその時は執行役員以上クラスで転職できるように、自分のスキルを磨いておきたいですね。
または起業です。昔に比べて本当に起業のハードルは低くなりました。さまざまなものがアウトソースでき、アイデア一つとPCがあれば起業可能になりました。別に世の中を革新するサービスを作る必要はありません。ユニコーン(時価総額1兆円)企業を作りたいなら別ですが、数億円の企業を目指すなら2番煎じでも問題ありません。
これが簡単だとはいいません。ただGoogle本社でエンジニアとして採用されるとか、30代で2000万円近い給料が出る大企業の入るとか、小さい企業でも20代で1000万円もらえるような役職まで出世するとか、こういうのと比べてどれが自分に合っているか? ということです。
数千万円単位の資産を追加で築こうと思ったら、給与だけではけっこう厳しく、株式のチカラを活用する必要があります。それはSOであり、要するに労働の対価として給与ではなく株式がもらえるような環境に身を置くことが大事だということ。会社の一部分であっても、オーナーになるということが大事なわけです。