投資というと、◯倍とか◯万円ではなく、利回りが重要だという話を以前に書きました。利回りだけは、騙すことが難しい指標だからです。ところが、この利回りも、実は同じ意味ではない場合があるので注意が必要です。
例えば「定期預金の利回りが1%」というのはわかりやすい話です。ところが、これと「太陽光発電の利回りが10%」「仮想通貨マイニングの利回りが20%」というのは同じ話ではないということを知っていますか?
1つは、元本が戻ってくるかどうかです。定期預金の場合は1%の利息がついて、満期になると元本が戻ってきます。ところが、太陽光発電の場合は、20年なり30年経ったときに元本が戻ってくるとは限りません。限りませんというより、ほとんどの場合は元本で買った太陽光パネルは劣化していて、買った値段で売れるどころか撤去にお金がかかると思ったほうがいいでしょう。仮想通貨マイニングでは、契約期間が過ぎたら何も戻ってきません。
もう1つは、複利効果を加味しているかどうかです。1年、2年の投資ならばほとんど影響はありませんが、10年、20年の投資となると、1年めの利益と20年目の利益の意味合いが異なります。1年めの利益は再投資してあと19年運用できますが、20年めの利益はもらってそのままだからです。
では、こうしたいろんな種類の利回りを、同列で比較するにはどうしたらいいでしょうか? 実はその指標として内部収益率(IRR)という便利なものがあります。これは簡単に言ってしまうと、元本が戻ってこなかったり、得られた利益を再投資する場合も含めて比較できる指標です。
IRR
IRRは、いろんなパターンの投資利回りを、定期預金に預けた際の利率に変換してくれると考えるとわかりやすいです。
いくつかのパターンで見てみましょう。それぞれ100万円を30年間運用したとして計算しています。税金は無視した計算です。
Aは年1%の定期預金です。30年間で29万円の利息が付きます(SUM)。単純利回りも1%で、IRRは当然1%になります。
Bは元本が戻らないパターンです。単純利回りが4%なので、毎年4万円入ってきます。30年間の受取金額の合計は16万にしかなりませんが、IRRは定期預金と同じく1%と出ています。これは、1年後に受け取った4万円を再投資し、2年めの4万円も再投資し、と繰り返すことで、再投資分が評価されるからです。
Cは同じく元本が戻りませんが、定期預金と同じく受取金額の合計が29万円になるように調整したものです。単純利回りは4.45%に上昇、IRRは1.8%です。受取金額の合計が同じでも、少しでも早くリターンをもらったほうが再投資できる分、IRRは良くなることが分かります。
Dは毎年利益が徐々に減少し、30年後にはリターンがゼロになるような商品です。太陽光発電などがそうですね。受取金額の合計は同じく29万円になるようにしています。こちらは初年度の単純利回りは8.9%ですが、ここから徐々に利回りが減少し、30年経ったときはゼロになります。IRRは2.7%。ここでも、早くリターンを出すのが有利であることが分かります。
MIRR
なお、MIRRは修正内部収益率(MIRR)といいます。IRRでは、受け取った金額を同じ商品に再投資する前提で計算していますが、世の中そんな美味しいはなしがいっぱいとは限りません。こちらは、受け取った金額を自分の好きな利回りで再投資した場合の計算になります。
上記の表のMIRRでは、再投資を一切しない(0%利回り)場合に、この投資の利回りをどう見るかを表しています。DパターンのようなIRRでは2.7%になるような場合も、それは初期に得た利益を同率で再投資するからこそです。太陽光発電なども、受け取った収益をさらに再投資しないと、実利回りは大きく減少します。
このIRRを使うと、さまざまな投資を同一の指標で比較することができるようになります。ただし、ここにはリスク=ボラティリティの概念が入っていないことには注意が必要です。利回りが確定している商品はいいですが、配当やマイニング、不動産投資などは収益利回りは予想でしかなく大きくあてがはずれる場合もあります。
その観点では、投資した金額は早期に回収できるに越したことはありません。流動性プレミアムの観点もありますので。
IRRは、ExcelやGoogleスプレッドシートの関数に入っていますので、使い方は検索してみてください。