ご存知のとおり、bitcoinはアルゴリズムで産出量と上限が決まっています。上限は2100万枚となっており、現在すでに約80%(1700万枚)が産出済みです。一方で、仮想通貨の常として、保有者がアカウントの秘密鍵を紛失すると、そのアカウントに紐付いたbitcoinは誰にも送信できない、つまり利用できなくなります。「失われた」といってもいいでしょう。
暗号通貨への投資調査を行っているエンジニアのWilly Woo氏は、既に400万枚のbitcoinが「失われている」という調査を発表しました。
An estimated 4m BTC lost, 2m BTC stolen. @lopp at #BuildingOnBitcoin pic.twitter.com/xsXayfKiaP
— Willy Woo [no giveaways] (@woonomic) 2018年7月4日
一般に物価が上がることをインフレ、下がることをデフレといいますが、モノの値段を基準にして考えると、通貨の価値が下がることをインフレ、価値が上がることをデフレということができます。流通する通貨が増えるほど、理屈的にはインフレとなり、減るとデフレとなるわけです。
bitcoinは発行上限が決まっているために、理論的にはデフレ型の通貨と言われています。bitcoin発明者のサトシ・ナカモトは、開発当初からbitcoinを持っている人が秘密鍵を紛失することを想定しており、それを「ナチュラル・デフレ」と呼んでいました。
コインの喪失が発生するとみんなのコインの価値が少し上がります。コインの喪失とはみんなへの寄付、と考えて下さい。
Phil Champagne. ビットコイン バイブル: ナカモトサトシとは何者か?
これまではマイニングによってbitcoinの発行量は増え続けましたが、マイニングによる発行量は減少していきます。アルゴリズムによると21万枚発行されるとマイニング報酬が半分になるよう設計されており、この約4年ごとに起こる変化は「半減期」と呼ばれています。3回目となる次の半減期は2020年6月あたりと言われています。
マイニングによる発行量増加ペースがゆっくりになる一方で、一定量のbitcoinは紛失などにより完全に失われていくでしょう。紛失でなくとも、意図的にbitcoinを消滅させる場合もあります。
下記のように、マイニングのテストのために米WIRED編集部は13枚のbitcoinを生み出したが、報道の公正性のために、このbitcoinを消滅させる(秘密鍵を破棄する)ことを選択しました。
ミスによる秘密鍵の紛失以外にも、誤って誰も管理していないアドレスに送金してしまった、秘密鍵を知っている本人が死亡してしまった、などの理由でもbitcoinの喪失は起こり得ます。
このように、デフレになることが織り込まれたbitcoinという通貨は、過去にない社会実験であり、非常に興味深い性質を持っていると思います。