元日経記者が株投資をやってみたという記事が、誤解ポイント満載でした。こちら、1964年に日経新聞に入社し、ロンドン支局長や日経ビジネス編集長、論説副主幹を歴任し、その後大学教授も勤めたという日経エリートです。そんな方でも、株式投資に対してこのような認識なんだ、というのに驚きました。
まずは、著者の株式投資によるリターンです。もともとの投資額は約2000万円だそうで、2017年の元本も2000万円であることから、利益は再投資していないようです。またこの損益は税込みであることが明示されています。そのあたりはさすがもと経済記者です。
2000万円を元手として、6年間で1762万円の利益というのはすごいと思いますか? まず、元本2000万円をキープしているとして年間利回りを算出しました。その上で、2011年を基準とし、算出した年間利回りで複利運用した想定の指数を用意しました。
指数は、6年間で220%に成長しました。2000万円の元本だとすると、4400万円、+2400万円ということになります。なかなかすごいですか? ではこの指数をTOPIXおよびS&P500と比べてみましょう*1。
残念ながらTOPIXには負けてしまいましたが、S&P500には勝ちました。これはすごいかもしれません。しかし、この元日経記者の指数には配当額が入っています。TOPIXもS&P500にも配当は含まれていませんね。では、元日経記者指数から配当を除いて補正してみます。
配当を除外補正した指数では、2017年までの成長率は186%となり、S&P500にも負けてしまいました。全区間でTOPIX、S&P500を下回っています。しかしこれで終わりではありません。元日経記者の収益には税金が含まれているからです。
記事を読む限り、かなり短期で売買を繰り返し、含み益のまま長期で持ち続けることはないスタイルのようです。つまり、毎年利益の20.315%に税金がかかります。そこでその分を除外して再度補正してみます。
残念ながら、2017年までの成長率は166%まで下がり、TOPIXやS&P500と大きな差がついてしまいました*2。
元日経記者の投資手法の詳細は明らかではありませんが、実のところ、TOPIXやS&P500のETFを買って、何もしないで放っておいたほうが、よほど低リスクでハイリターンでした。というより、インデックスがこれだけ上昇している局面なら、どのように投資をしてもまぁだいたい儲かるということでもあります。ただし、インデックスを超えるのは簡単ではありません。
ちなみに、S&P500への投資の場合為替リスクを伴いますが、2011年末から2017年末までのドル円レートを見ると、76円台という過去最低レベルの円高から始まり112円で終わっており、為替効果を加えるならさらに47%も利益が積み増されることになります。この期間に限っていえば、資金をドルに替えてS&P500に投資するのがベストだったということです。
今回の教訓は、次のとおりでしょう。
- 運用パフォーマンスを評価するならTOPIXやS&P500などのインデックス指数と比較する
- 「儲かった絶対金額」をアピールするのはミスリードを引き起こす
- 利益の再投資は最重要。複利の効果をしっかり活かす