FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

書評:『投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について』〜日本国債はなぜ暴落しないのか?

『投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について』の書評続きです。前回は「「円=安全通貨」説を解き明かす」、前々回は「リスクプレミアムの謎」でした。今回は、日本国債についてのミステリーです。

投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について

投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について

 

 

kuzyo.hatenablog.com

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誤解5:日本国債の破綻は「信用」次第である

日本の投資家にとって最大のリスクは日本国債のリスクでしょう。国内資産に投資している人はもちろん、国内で暮らしている人にとって、日本国債の暴落は日本経済の大混乱をもたらすものだからです。

 

そして、日本国債はずっと危ないと言われ続けていますが、いや大丈夫だという人もいます。

 

まず、日本国債発行残高は910兆円にのぼり、対GDP比で246%と世界各国と比べて最悪です。財政状態が悪いと言われるイタリアが140%程度、ギリシャでも170%程度です。アメリカやイギリス、フランスは100%程度となっています。

 

国が借りている国債発行残高だけでなく、国が持っている資産との差が純粋な債務なので、資産を差し引いて計算すべきだという主張があります。資産のうち、金融資産としての価値を持つものだけを差し引いて、ネットの負債を対GDP比で見てみると、それでも130%にのぼり、ギリシャには勝るもののイタリアの110%よりも悪い状況です。

 

そんな状況で、十数年にわたり、ヘッジファンドが何度も日本国債売りを仕掛けてきていたそうです。しかし毎回ヘッジファンド側の負けに終わっています。

数字の上では極めて財政状態が悪く、しかも悪化に歯止めのかかっていない日本の国債がなぜ暴落しないのか。これは、外国人投資家にとっては大きなミステリーといえる。

このミステリーの解として、著者は2つの説明を挙げます。

 

1つは、外貨準備高が1.26兆ドル(2014年末)と世界第2位にのぼる経常黒字国であることです。ただし、米国を見ると、経常黒字だから安全というわけではないことがわかります。米国は、世界最大の経常赤字国で、米国債は世界中の投資家や国家が買っており、外国投資家の保有比率が高くなっています。ところが、米国債は非常に高い信用力を持っています。

 

2つ目は、日本国債のほとんどは国内投資家が買っているという説明です。日本国債の保有者のうち海外は4%しかありません。ほとんどが中央銀行、国内銀行、保険や年金基金というのが日本国債の買い手です。そして、国内銀行にとっては、日本国債については投資額に応じて自己資本を積みます必要がないという特例があるのです。そのため、国内銀行にとっては国債は非常に扱いやすい商品になっています。

巨額の国債を保有する銀行は、その保有する国債を市場で一気に売り切ってしまうことはできない。もしその銀行が何らかの理由で国債を大量に売り始めた場合、国債価格の急速な下落を招いて、自分自身の首を締めることになってしまう。もし自分の行動に他の銀行が追随して国債が暴落する事態になれば、致命的な事態ともなりかねない。

だから、誰も国債暴落の引き金を引こうとは決してしない。彼らは一連託生の関係にあるのだ。

とはいえ、これは永遠に国債が暴落しない理由ではなく、誰も引き金を引かない理由でしかありません。暴落への重しはどんどん重くなっていき、どこかで耐えられなくなって誰かが引き金を引くかもしれないのです。リスクは消し去ることはできず、形が変わって残っています。そして確率としてのリスクを小さくすれば、それがもし起こったときのダメージはその分大きくなるわけです。

 

ただし、日本には消費税という奥の手が残されていると著者は書きます。現在、日本はまだ10%への消費税アップを目前にしている状況でしかありません。欧州のように20%前後まで引き上げれば、悪化に歯止めをかけられる可能性もあります。

 

たいへんバランスのよい解説を心がけている章ですが、では国債が暴落した場合、日本の投資家はどうなるのか? また暴落に備えてどうしていたらいいのか? という話は全くありません。これはそれ自体が一冊にあたる議論ではありますが、ほしいところですね。

 

ぼくの場合、一つはドル建てで海外株への投資をすることでリスクをカバーしようと思っています。もしも経済的混乱が大きく、銀行からの引き出し規制などまで発展するようなら、海外籍の銀行や証券会社に口座を持っておくべきなのでしょうが、現状はそこまでのことは想定していません。

 

もう一つは、金融資産だけの構成から、不動産や太陽光など現物資産への切り替えを進めています。

 

さて、書評はさらに続きます。