「「思考停止」のインデックス型ファンドが危険な理由」という記事が目に付きました。正直、説得力に欠ける記事、さらに裏読みするならポジショントークじゃないか?とも思いましたが、個別の内容を見ていきたいと思います。
著者は、アクティブ型ファンドが歴史的にインデックス型ファンドに負けている点について、不思議な論を展開しています。
ただし裏を返せば、インデックスに勝っているアクティブ型ファンドは実在するし、1年ごとに見れば、インデックスに勝っているアクティブ型ファンドは意外に多い。
インデックスに勝っているアクティブファンドがあるのは当たり前ですね。そして、その勝っているアクティブファンドを事前に選ぶことができれば、リターンは大きくなります。問題は、どのアクティブファンドが勝つかが事前にわからないことです。
さらに、記事でも「1年ごとに見れば」とわざわざ書いているように、連続してインデックスに勝ち続けるファンドは本当に稀です。さらに、複数の研究で、過去勝っていたファンドが、将来も勝ち続けるというエビデンスはないということもわかっています。
つまり、アクティブ型ファンドを選ぶことで確率的にインデックスに勝つことは難しいということです。勝つアクティブ型ファンドを選ぶ目があるなら、その目を生かして個別株を買ったほうがよいのではないかと思います。
CAPMに替わって登場したのがファーマ・フレンチのファクターモデルである。「サイズ、バリュー、クオリティ、モメンタムといった株式の特性が将来の期待収益率の予測に有効である」というものだ。
ファクターモデルは、このブログでも紹介したことがあります。小型株、割安株、モメンタムなどが、市場の効率性の枠外にある、つまりアノマリーとなっている可能性があるという考え方です。
確かにこうしたアノマリーに基づいて投資をする、またそうした方針のアクティブファンドを買うことでインデックスに勝つ可能性はあります。しかし、アノマリーが存在していたとしても、3ファクターまた4ファクターモデルに基づいたアクティブファンドが継続してインデックスファンドに勝っているというエビデンスもありません。
SPIVAというサイトで、インデックスとアクティブファンドの勝率比較を見ることができます。下記は米国での結果ですが、5年間の成績で、84%がインデックス(S&P500)を下回る(Underperformed)成績でした。
ちなみに日本ではどうだったかというと、おっとびっくり。なんと5年間でインデックスに負けたアクティブファンドは44%です。過去1年だと85%近くがインデックスに勝っています。少なくとも、日本市場ではインデックス投資よりもアクティブ投資のほうが有利と言える可能性もあります。
このSPIVAというサイトでは、S&P500という総合インデックスだけでなく、ファクターモデルに基づいた、サイズ感や割安株にフォーカスしたインデックスとアクティブファンドの比較も出しています。
それによると、やはり小型株でもバリュー株でも、対応するインデックスにアクティブファンドが大きく負け越しているという結果です。
そう、ファクターモデルがうまくアノマリーを生かしており、αが取れると思うなら、アクティブファンドではなく、ファクターモデルを使ったインデックスに投資すればいいというわけです。
さらに著者は、インデックス投資をするのではなくもっと勉強せよ!と説きます。
しかし、ある程度投資というものに興味を持ち、それなりに時間を割こうと思っているのであれば、自動積立といういわば「思考停止」の投資スタイルではなく、もう少し手間をかけてよりよいリターンを求めてもよいのではないだろうか。
勉強すること自体は、僕も同感で、そのように投資のいろいろを調べてトライもしています。ただし、著者の言で疑問に思うのは、そうして勉強して手間をかけても、必ずしもリターンは上がるとは限らないということです。
投資自体を趣味とするなら勉強するのは楽しいものです。著者のいうように、それが実社会に役立つこともあると思います。ただし、それによって、つまり勉強しただけリターンが増加するかというと、中途半端な勉強は逆にリターンが減少する可能性のほうが高いんじゃないかというのが実感です。
ほとんどの人にとっては、投資は資産を増やすのが目的です。投資の勉強自体が目的ではありません。僕は投資を趣味としていろいろと勉強のためにトライはしていますが、それでも目的は資産運用によるセミリタイアです。そのため、コアとなる資産はインデックスを中心に運用しています。
ちなみに、インデックス投資はまったく思考停止ではないということは書いておきます。インデックス投資の場合、どれだけの資産を株式に、どれくらいを債券に、どれくらいをオルタナティブに、というアセットアロケーションがキモになります。ここも任せてしまうロボアドバイザーならともかく、いわゆるインデックス投資家は、どんなアセットアロケーションが最適かを常に調べ、考えているわけです。
多くの著名投資家が、資産運用を左右する最大のポイントはアセットアロケーションだ、と説いています。変に財務諸表を勉強したり、チャート分析を学ぶよりも、最適なアセットアロケーションを研究することのほうが、重要ではないでしょうか。それは思考停止とは最も離れたところにあると思います。
そんなわけで、いろいろとミスリードじゃないか? と思った点を書いてみました。ただし、投資の勉強は面白いよ、というのは全くそのとおりです。