投資でどれくらいの損を出したことがありますかか? 世のブログや書籍、セミナーは儲かった話が満載です。でもここには生存バイアスという大きな歪みが存在しています。これまで好調に儲かった話を書いていたブログが、ある日突然更新が止まることがあります。そこにはいろいろな事情があるのでしょうが、「ああ、大きな損失を出してしまったんだな」と思うこともあるわけです。
そうでなくても、人は得した話は書いても、損した話は書きません。だから世の中に発信される情報を見ると、みんな大儲けしているように誤解してしまうわけです。そこで、損した話を共有しようと思います。
仮想通貨で13%ロスト、VIXショックで3%ロスト、ハイテクITで10%ロスト
ぼくも当然これまで大きな損を出してきました。何をもって損というかは、いろいろな定義がありますが、含み益を含めて大きく減らしたというのは広義の損でしょう。
最大の損失はやはり仮想通貨です。最大で、総資産の15%ほどあった仮想通貨ですが、2018年の1月、そして11月の下落で暴落しています。結果、総資産の2%近くまで減少しました。差し引き、総資産の13%近くを失った形です。比率で見ても、金額で見ても恐ろしい損失です。
ある意味余裕をもってこう書いていられるのは、元の投資資金から見たらこれでも数倍になっているからです。でも、2017年末に売っていたら……と考えると、損失には違いありません。
元の投資資金から大きく減らしたものもあります。2018年1月のVIXショックの際に、見事償還をくらって総資産の3%ほどを吹き飛ばしました。こちらも冷静に考えてもものすごい損失でした。
2018年に入っての米ハイテク株の下落も大きな損失をもたらしました。これも、救いなのは元の投資額に比べるとまだまだ大きなプラスだということでしょう。
含み益が残っていればいいのか?
ここで考えてしまうのは、「投資元本を割り込んだら損失」で「投資元本よりもプラスなら損ではない」と、つい思ってしまうのは正しいのか? ということです。
たしかに投資元本を割り込んでいなければ、全体としてはプラスではあります。でも、ポートフォリオを組んで投資しているならば、もっと広い視点で、総資産がプラスならば、特定の投資対象がマイナスになっても、全体としてはプラスだと考えてもいいのではないでしょうか?
逆に、何をもって投資元本と考えるかという視点もあります。現金として入金した額でしょうか? それとも、買い付け額でしょうか? 株式譲渡益課税が10%から20%に上がるタイミングで、ぼくは多くの資産をいったん利益確定させて10%の税金を払い、直後に買い戻しました。そのため、買い付け額は上昇しています。そのため、資産によってはそこからマイナスに転じてしまったものもあるわけです。これは損失なのでしょうか?
大きな損失が出ると、人間は本当に不安になるものです。このまま投資を続けていていいものか? と。でも、口座上でマイナスが並ぶと不安ですが、プラス(含み益)だったものが減っても、引き続きプラスならば意外と不安は小さくて耐えられるのです。
損失(マイナス)には耐えられなくても、含み益の減少には耐えられるんですね。損失回避という行動経済学上のバイアスによるものです。
これを逆手に取ると、資産の含み益はできるだけそのままにしておいたほうが、損失に耐えて長期運用を続けられるということです。
現金一括買いとフルローンの感じ方の違い
不動産投資なども面白いものです。銀行借り入れで買うと、空室などが出たときにキャッシュフローがマイナスになる場合があります。賃料収入よりも借入金の返済のほうが大きくなる状況です。これは精神的にきつい。でも、一括現金で買うと、空室が多少出てもキャッシュフローはプラスです。これは耐えられると。
しかしよくよく考えると、実はどちらも損失が出ていることには変わりありません。金利のことを除けば、単にレバレッジをかけているかどうかだけだからです。
1億円のキャッシュを持っていて、現金で1億円のアパートを買います。年間収入が500万円だとします。空室が出て400万円に収入が下がっても、400万円のプラスです。一方で、1億円のキャッシュは使わずに、1億円を借り入れて同じアパートを買います。年間返済額が450万円だとすると、満室なら500万円の収入で差し引き50万円のプラス。400万円まで収入が下がると50万円のマイナスです。
現金買いでは400万円のプラス、借り入れの場合50万円のマイナスとなりますが、手持ちのキャッシュは現金買いでは400万円、借り入れの場合は9950万円です。返済した分だけ残債が減っているので、金利を無視すれば状況は同じはずです。単にレバレッジをどれだけかけたかの違いですね。
でも、心への影響はかなり違います。これが心理的なバイアスです。
心の制御によって、意外と損失が出ても平気でいられるのかもしれません。逆に、心の感じ方を理解することで、実質的に損失が出てもあまりイタく感じないようにコントロールできるのかもしれません。なかなかに投資は面白いものです。