Facebookが近々発表するという仮想通貨「Libra」が話題になっています。これがどんなものなのか、リークなどで出ている情報をまとめておきます。
- 5つの特徴
- Facebookファミリーで利用可能 21億人
- ノード運営は少数の組織
- 10億ドルを調達
- 複数国で運用、2019年テスト、2020年ローンチ
- グローバルな送金方法になるかも
- Libraのリスク
5つの特徴
仮想通貨の定義はいろいろですが、このLibra(Global Coinとも)はプライベートブロックチェーンを使った、ステーブルコインのようです。
ステーブルコインとは、価格が乱高下しないよう、通貨とペッグ(連動)させたものです。ただし、Libraは全世界で使われることを想定しているようで、米ドルとのペッグではなく通貨バスケットとペッグするものを想定しているようです。
通貨バスケットといえば、ドルインデックスが有名ですね。これは複数の主要通貨に対して米ドルの価格を指数化したものです。そのほかの通貨全体に対して米ドルがどんな価値を持っているかを示しています。例えばこれとペッグするということが考えられますね。
Facebookファミリーで利用可能 21億人
2つ目の特徴は、利用できるユーザー数の多さです。Facebookはじめ、WhatsAppやInstagramなど数多くの巨大SNSを持っていますが、そのDAU(1日あたりの利用者数)は21億人にも達します。
世界人口は73億人と言われますが、うち先進国の割合は20%弱と言われます。まだインターネットが一般的でない国々もあることを考えると21億人という規模のすごさがわかります。
そして、この人達の間で簡単に送金ができ、この人達が決済に利用できるようになるというのはものすごい変革です。米ドル並に利用する人が多い通貨になるかもしれません。
ノード運営は少数の組織
Libraの運営ネットワークは、Facebookが中央集権的に管理するのではなく、複数の企業が参加するコンソーシアムとなるようです。theblockcrypto.comに、参加する企業名のリークが載っていました。
これを見ると、銀行こそ入っていませんが、VISA、Mastercard、PayPalという決済の最大手がいます。連携して、Libraを世界共通の決済プラットフォームに押し上げていくのかもしれません。
これらの企業がそれぞれブロックチェーンノードを立ち上げて、そこでトランザクションを処理する仕組みなのでしょう。
10億ドルを調達
先程のコンソーシアムに入ってノードを立ち上げるには、1社あたり1000万ドルの拠出が必要だと言われています。100社で10億ドルですね。
このお金は開発などに使われるのではなく、ステーブルコインとして裏付けとなる各国の通貨を保持するために使うようです。ステーブルコインの理屈はこうです。Libraを100ドルユーザーに発行したら、裏側でペッグする通貨を100ドルプールします。Libraを通貨に戻したいとユーザーが思ったら、Libraを消しこんでプールした100ドルを返します。
このように、常に裏付けとなる通貨が存在することで、価格が固定されるというわけです。金本位制にも似ていますね。
複数国で運用、2019年テスト、2020年ローンチ
いま言われているスケジュールは、2019年にテストを行い、2020年にローンチというものです。さすが、けっこう素早いです。また日本は蚊帳の外という可能性もありますが、数年以内には使えるようになるかもしれません。
またATMも用意すると言われています。つまり、Libraを持っていれば、それで直接決済できなくても、ATMを介して現地の通貨を引き出せるようになるということですね。
グローバルな送金方法になるかも
Bitcoinを決済の面で見たときに、最大の課題は価格が安定していないことだと言われてきました。これは決済に10分かかるといった技術的な問題よりも深刻で、根本的なものです。
Libraがステーブルコインとして生まれるなら、ユーザーは安心して通貨をLibraに替え、送金できるようになります。Facebookのビジネスモデルからして、そこで送金手数料も取らないでしょう。海外への送金でいえば、Bitcoinよりも手軽で安価な方法になるかもしれません。
ユーザーが増えてくるのと並行して、決済で利用できるシーンも増えるでしょう。VISA/Mastercardが入っているということは、クレジットカードで決済して引き落としはLibraから、という仕組みが出てくるのは当然です。現金取引を除けば、Libraさえ持ってればすべての決済が済むという世界さえ考えられます。
このとき消費税はどうなるのだろう? と考えると、クリアすべきものはいろいろありますね。
さらにLibraには利息が付くかもしれません。ステーブルコインは裏側に同額の現金をプールしていますが、これには利息が付くからです。この利息をコンソーシアムの運営費に使う可能性もありますが、Libraの保有者に少しでも戻していくということもあり得ます。
Libraのリスク
考えるほどにワクワクするLibraですが、もちろんリスクもあります。一つは各国の法律でLibraがどういう位置づけになるのかが不明なことです。Bitcoinなどの仮想通貨は、取引所を利用しない限り、保有は自由です。どこかへの登録も不要ですし、本人確認もいりません。
もしLibraユーザーが、利用するために登録と本人確認が必要となったら、利用のハードルは大きく上がるでしょう。
税制も課題です。通貨バスケットとペッグするということは、各国のローカル通貨に対しては価格が変動します。決済のたびに、ローカル通貨建てで損失や利益を計算するなどとなったら*1、事務処理のめんどうさ以上に、心理的なハードルが上がります。個人利用はもちろんですが、法人利用には致命的でしょう。
セキュリティもリスクです。プライベートブロックチェーンならば51%攻撃など、ブロックチェーンの仕組みに根ざしたリスクは減るかもしれません。一方で、アルゴリズムではない人的組織的な脆弱性をつかれるかもしれません。
また、おそらくFacebookのアカウントと紐付いてLibraが管理されるのだと思いますが、これはFbのアカウントがハックされたらLibraコインも盗まれるということになります。そこまで厳重にFbアカウントを管理している人がいるかどうか。LINEウォレットなどのように、Libra部分は追加の認証によってセキュリティを高めるのでしょうが、それでも危険は残ります。
ブロックチェーンという話でいえば、Libraコインの保有者の証明である秘密鍵は、おそらくユーザーではなくFacebook側が管理するのでしょう。秘密鍵を預けて、Facebookアカウント認証が保有者である証明になるわけです。でも、昨今の米ハイテクIT大手のスタイルと見ると、もし運営側やユーザー側のミスなどでLibraコインが失われても、その取引を取り消すためのユーザーサポートは提供されないでしょう。ユーザーサポートは、根本的にハイテクITとは相性が悪いのです。
Libraの普及によって、より仮想通貨への理解が深まり、国からも企業からも完全に独立した通貨が普及する。そんなイデオロギー的な世界を、けっこう期待していたりします。
*1:いまの日本の仮想通貨はこうです。