FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

制度信用を使って配当タダ取りができる

株式投資をやっていると、一度は思うのが「配当権利が確定する日だけ株主になれば、1日で配当がもらえるのでは?」ということです。同じことが株主優待にも言えます。

 

ところがこの作戦はうまくいきません。その日に持っていると配当や優待がもらえる権利確定日が終わり、翌日の権利落ち日になると、理論的には配当額分だけ株価が下落するのです。実際は、優待狙いで買っていた人が売却するので配当額よりもさらに下落します。そのため、配当や優待はもらえたけど、株価がそれ以上に下落して損失、ということになるのです。

優待クロスのさらなる応用

この株価の上下動を相殺して、優待だけもらおうというのが優待クロスです。現物の購入と同タイミングで、同銘柄を同額空売りすることで、株価変動を相殺できます。

 

空売りには、一般信用と制度信用があり、大きな違いは制度信用には逆日歩という需要に応じた追加コストが発生することです。また、貸株金利も違いますね。ただ、もう一つ大きな違いは、配当落調整金額が違うことです。

信用売りで権利確定日を迎えると

優待クロスを例に、配当の扱いがどうなるか見ておきます。まず、現物の配当がもらえます。これが1000円だとしましょう。配当には20.315%の源泉徴収があるので、入金は796円になります。

 

一方で一般信用の売りでは、配当落調整金として配当と同額の1000円を支払わなくてはなりません。一見、796円もらって1000円払うので損するように思いますが、違います。計算としては次のようになります。

 

いったん、税金のことは忘れます。もらった配当は1000円です。払った配当落調整金は1000円です。差し引きで損益ゼロです。損益ゼロには税金はかかりません。そのため、源泉徴収で204円を支払っていますが、これは戻ってきます。特定口座なら自動的に還付ですね。

制度信用の配当落調整金

ここからが核心です。一般信用の配当落調整金は配当額と同額なのですが、なんと制度信用の場合、配当額から15.315%を引いた額が配当落調整金となるのです。

 

もらった配当は1000円、制度信用で払う配当落調整金は847円。差し引きで153円の利益が出るのです。ただし、この利益には20.315%の税金がかかるので、税引き後の利益は122円になります。

 

計算式をまとめると、

  • 配当額 ✕ 15.315% ✕ (1−20.315%) →
  • 配当額 ✕ 12.203%

が、税引き後の利益として残ることになります。

配当の12%ゲットは割にあうか?

ざっくりいうと、配当の12%が利益になることになります。配当利回り5%の銘柄ならば、0.6%程度が価格変動リスクなしで手に入ることになります。130万円の資金(現物100万円+信用30万)を使えば、6000円です。

 

方法としては、権利確定日に現物を買い、同時に制度信用で売りを行います。かかるコストは、現物買い手数料、信用売り手数料、信用売り貸株料、逆日歩。そしてポジションクローズは現渡しで行うのでコストゼロです。

 

100万円の銘柄を日興証券を使うことを考えてみます。

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現物買いは、制度信用で買って現引きすることで年利2.5%の1日分です。69円といったところ。

 

制度信用売りは、手数料無料で、貸株料が年利1.15%です。購入受渡日と返済受渡日の2日分が最低かかります。さらに、間に土日が入るとさらに1〜2日分追加です。それでも1日あたり41円なので、82円から164円という手数料です。

 

ここまでは確定コストです。問題は、不確定コストの逆日歩です。

逆日歩とはなにか?

今回配当利回り5%の銘柄の場合、130万円の資金で6000円を得られる計算です。それに対して、確定コストは最大で233円です。明らかにリターンが出る取引なのですが、問題は逆日歩です。

 

制度信用の場合、信用売りに必要な株式が足りない場合、オークション形式で機関投資家から株を借りてくる仕組みです。極端に不足していると、この逆日歩がたいへん大きな額になると言われています。

 

逆日歩の計算式は、下記のようになっています。

  • 最高逆日歩単価 ✕ 適用倍率 ✕ 逆日歩日数 ✕ 株数

ざっくりいうと、100株単位の銘柄の最高逆日歩単価は、「株価 ✕ 0.002」となるようです。株価1800円なら、3.6円ですね。なお、権利確定日の場合、自動的に最高料率に引き上がるようです。

 

適用倍率は、日本証券金融のWebにあるとおりです。

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今回は当然権利確定日に空売りするので(2)にあたり4倍は確実。さらに(2)の「注意喚起」が出ると、さらに2倍で8倍になります。そして最悪の場合、10倍が出る可能性もあります。

 

逆日歩日数は、土日祝日が入るかどうかで決まります。基本的には権利確定日が水曜の場合3日、それ以外は1日という感じです。権利確定日が水曜の場合、決済は木曜になり、その受渡しは2日後なので土曜になり、休日なので翌月曜の受渡しになるからですね。こちらのサイトに逆日歩日数が計算されています。

最大逆日歩はいくらになるのか?

さてここまで見ると逆日歩リスクの計算ができます。100万円の銘柄は100株単位として株価が1万円です。最高逆日歩単価は20円。その4倍で80円になります。100株なので8000円ですね。さらに、8月末なら3日分発生するので2万4000円です。

 

計算式でいうと、下記のようになるでしょうか。

  • 投資予定金額 ✕ 0.002 ✕ 4または8 ✕ 逆日歩日数  
  • 投資予定金額 ✕ 0.008 ✕ 逆日歩日数 ✕ 注意喚起2倍

100万円の投資に対して、8000円から1万6000円の逆日歩です。そして日数が増えるとこれが日数分かかります。

 

うーむ。6000円の配当利益に対して、逆日歩日数が1日だとしても8000円から1万6000円のコストのリスクがあるのは困りますね。これは、逆日歩が発生するかどうかが最大のポイントになるようです。

 

次回はここを検討してみます。

↓実際に、FPGという銘柄を使ってやってみました。

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