FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

国益とか日本企業を応援とかに感じる不思議

よく「日本企業に頑張ってほしい」とか「日本の国益に」とか、そういう発言をする人がいます。そのたびに、何かの違和感を感じていたのですが、ちょっとそれを整理してみたいと思います。

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日本企業って一体なに?

まず日本企業とはいったい何を指すのでしょう? トヨタとかソニーとか、そういう会社を日本企業だと漠然と考えてしまいますが、どうしてそれらが日本企業なのでしょう。

 

創業者が日本人なら日本企業なのでしょうか? 本社所在地が日本なら日本企業なのでしょうか? 従業員が日本人なら日本企業? 経営陣が日本人なら日本企業なのでしょうか?

 

まず、日本人というのは法的にはこう定義されています。日本国籍を持つ人で、それは生まれたときに両親のどちらかが日本人である人です。例外的に帰化した人も日本人です。感情的には、日本語を話すとか、肌の色など生物学的な特徴が他の日本人と似ているというのもありますが、基本的には両親が日本人なら日本人となります。

 

そして、インドネシア日本国大使館のWebによると、日系企業とは、本邦企業または日本人が出資している海外の企業だそうです。おおざっくりいうと、株主を突き詰めていったときに日本人かどうか? がポイントのようです。

 

さらに国際協力機構のWebによると、本邦企業=日本企業の条件として、下記のすべてを満たすこととされています。

  • 日本で法人登記されている
  • 日本に設備、施設を持っている
  • 日本でビジネスを行っている

さらに、日本企業と海外企業のJVの場合、「本邦企業がリードパートナーであること」とあり、やはりこちらも日本人がメインの株主であるということのようです。

税金を日本に収めるのが日本企業?

こう見ていくと、その企業と企業の関わる人の税金の納め先が日本であることが、日本企業の条件のようです。

 

日本で法人登記されているということは、基本的に法人税は日本に収めます。税を収めたあとの取り分は出資者のものになるわけですが、これも日本人個人だったり日本企業だったりするわけで、その税の支払先も日本です。

 

だから極端な話、外国人が創業した企業で、外国人の経営者が外国人の従業員を使ってビジネスをしている場合でも、登記が日本国内で株主が日本人なら、日本企業となるのでしょう。

 

ただ、例えばソニーを見てみると、外国人の持ち株比率は56%に達しています。ドンキホーテは73%が外国人です。鴻海に買収されたシャープでさえ、外国人持株比率は72%程度なのですから、シャープが外資企業なら、ソニーもドンキホーテも外資といっていいのでしょう。

イメージと乖離する日本企業

日本企業を応援するのが国益だ。そんな文脈で話されることが多々ありますが、日本企業の意味が、メインの株主が誰か、どこに納税しているのか、という観点で考えると、日本企業という言葉があまりに曖昧で、イメージ以上のものではないことに気づきます。

 

安全保障の面では国益という概念はたしかにあるでしょう。日本の税収増加は、年金や医療、国土整備の意味でも大事なことなので、国益に叶う=日本に税金を落とすという意味での日本企業の意味合いもあります。

 

しかし、これだけ資本の自由化が進んでいるなか、なんとなくイメージとして日本企業っぽい会社を支援することを国益ということには違和感を感じます。外資参入規制を敷いている中国などはともかく、日本は基本的に資本主義の国であり、それは企業であっても自由に売り買いされるという前提があります。日本企業だと思って支援しても、その利益の多くは日本に還元されるのではなく、海外に流れていく。そんな実態もあるわけです。

どこまで国に頼るのか

ここから先は個人個人の考え方になります。日本人であるということは、これまでも日本に納税をしてきました。その見返りを、教育や治安、インフラなど直接ダイレクトに受け取ったものもあれば、年金に代表されるように、世代を超えて見返りが渡されていくという側面もあります。

 

ただし、働く先や投資先がこれだけグローバル化されていくと、住んでいる場所の安全保障という点を除けば、日本という共同体に貢献して、共同体から支援してもらうという概念は薄れてきています。

 

ぼく自身でいえば、資産の大半の投資先は海外企業です。日本企業が勝つよりも、海外企業に業績を伸ばしていってもらったほうが、大きな利益になります。もちろん、その利益からは日本に税金を払っているわけで、その意味ではしっかり日本の国益には貢献しています。でも、日本企業が国際的に活躍することが自分自身の利益にはならないのです。

 

雇用の問題もあります。日本企業が発展することが、日本人の雇用につながるという面です。ただし、代表的な日本企業の多くが、海外に進出して海外で雇用を増やしています。例えばブリヂストンの外国人従業員比率は80%、ホンダは78%と、日本企業だから日本人を雇用しているわけではありません。

 

昨今ネットで「日本人である」ことを唯一のアイデンティティとして、日本人以外を排斥したがる声をよく聞くようになってきました。この気持が分からないではありませんが、どうしてそこまで「日本」という国にこだわるのかな? という思いもあります。

 

グローバル化の進展を歓迎する潮流から、自国の利益を最優先するナショナリズム的な空気が、世界各国を覆い始めています。ただし、その先にあるものは、決して幸福な未来ではないようにも感じます。