FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

SDGs投資はうまくいくのか? CSR、CSV、ESGの先へ

最近、SDGs(エスディージーズ)という言葉をよく聞くようになりました。これは、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の略で、2015年に国連サミットで採択された15カ年の計画になります。

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CSRやESG、CVSとの違い

まずSDGsの前の目標として、MDGs(エムディージーズ)がありました。これはMillennium Development Goalsの略で、2000年に採択、15年間で国際社会の支援を必要とする課題を解決するためのプログラムでした。一定の成果はあったとされていますが、ここからさらに規模を拡大して、次の15年の取り組みとしてまとめられたのがSDGsです。

 

この手のワードは英語略字が多くて、なんだか分かりにくいものですが、おおまかにいうと、持続可能な形で開発を進めるためにみんなで努力しようというものです。似たような言葉にCSRやCVS、ESGなどがありますが、これは主体が誰かが大きな違いです。

 

  • CSR 企業が主体
  • CSV 企業が主体。CSRのうち事業への好影響を重視
  • ESG 投資家が主体

MDGsでは、各国の負担でそれぞれの目標を達成しようとしていいましたが、SDGsに代表されるような各取り組みでは、民間の取り組みを重視しています。コスト規模もMDGsが年間400-600億ドルだったものが、SDGsでは年間5兆-7兆ドルという規模です。日本の国家予算が1兆ドル程度ですから、民間の協力なしには実現しません。

SDGsの実現フロー

つまり、国連がSDGsという形で目標をブチ上げる。企業はそれに向けて努力する(≒CSR)。消費者からの評価があがり、採用にも有利になり、レピュテーションリスクも減る。そして、GPIFなどもこれを評価し、ESG投資という形で投資を行う。この循環によって、企業、消費者、投資家がSDGsのために資金を投じるというフローになります。

 

GPIFの18年のESG投資は3.5兆円で、前年の2.3倍に増えたそうです。

www.nikkei.com

でも投資家はESG投資で儲かるの?

さて、ここで気になるのは果たしてESG投資によって投資家は儲かるのか? ということです。当然ですが、企業は利潤追求を目指す組織であり、社会貢献のための組織ではありません。中にはこれを履き違えている経営者もいますが、社会貢献をしたいならNPOなどでやればいいわけです。

 

しかしCO2排出などもそうですが、環境という共有環境を犠牲にしたり、差別的な運営で利潤を出すことは、社会的に認められません。そのため、さまざまな規制やSDGsなどの取り組みで、企業が「利益を出すためにSDGsに取り組む」という構図を作り出す必要があります。

 

普通に考えて、利益だけを見ればSDGsに取り組むことはコスト増大要因です。それを上回る売上の増大や、株価の上昇がなければ、社会には貢献したけど利益は出ませんでしたということになってしまいます。

 

ここでESG投資の出番です。投資家がSDGsなどにしっかり取り組む企業に優先して投資すれば、株価が上がり、結果、投資家も利益を得ることができるからです。

でもこれは需給の問題では?

実際、GPIFだけでなく日本の株価を買い支えている日銀も、ESG投資に目を向けています。こうした大口投資家がESGだ! といえば、当然需給は買い優勢となり、短期的には株価が上昇するでしょう。これを見たほかの投資家も、ならばESG投資銘柄が狙い目だ! となり、さらに上昇が加速するわけです。

 

でも、これって企業のファンダメンタルズではなく、作られた需給によるトレンド投資ですよね。いってみれば、意図的な株価の吊り上げです。SDGsへの取り組みによって必ずしも利益が増加するわけではないからです。

 

短期的にはトレンドが形成され、株価は上昇する。そういう意味では、ESG投資に一口乗ってみる価値もあるでしょう。ところが、利益の追いついていない株価は、どこかで反転するかもしれません。

ESG投資という逆風で割安になる株

一方で、ESG投資ブームが逆風になる会社もあります。アルコール、タバコ、ギャンブル、兵器といった製品を取り扱う企業です。ESGがブームになるほど、こうした会社は売られ、株価が下がります。

 

国内だとJTがそうですね。業績は安定していますが、株価は右肩下がり。結果配当利回りも一時7%に達しました。

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※2つのチャートは時間軸が異なることに注意

 

米国でも、タバコ大手のアルトリア(MO)の株価はここ数年で大きく下げて、配当利回りは7%超です。

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 ファンダメンタルズに基づくインカムか、大口形成のトレンドに乗るキャピタルゲインか

そんなわけで、社会的意義という意味ではSDGsやESG投資の価値は十分にあると思います。ただし、利益を得るための投資活動という観点で見ると、少々見方は変わります。

 

まずSDGsが収益向上につながるエビデンスがない以上、どちらかというとコスト増加要因だということです。これは収益の下落につながります。ESG投資にかけるというのは、大口が形成したトレンドが続くだろうということに賭ける、キャピタルゲイン狙いの投資だといえます。

 

一方で、ESG投資がさかんになるほど、SDGs的に評価の低い企業の株価は売り込まれます。一方で、収益力は継続してあるわけで、これはESPは変わらず、PERの低下となるでしょう。配当利回りは向上し、インカム利回りが上がる方向です。

 

トレンドに乗ってキャピタルゲインを得るか、逆にお得感の増すインカムゲインを取りに行くか。ESG投資の判断はこのあたりになると思っています。