FIer: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIerを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

金融教育だけでなく高校までに教えてほしいこと


このところ、「三角関数よりも金融教育だ!」がバズっていますね。全体を確認せずに脊髄反射の反応が多く、僕もその例に漏れていないあたり反省然りです。下記に、冷静で中立的に見える評価が載っていますので、「あれって、いったい何を言いたかったんだっけ?」と思う人はご覧になるとよいかと思います。

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さて、今回この問題ではなく、これを契機に、「そういえば、これも高校とかで教えてくれていたら良かったのになぁ」と思ったことを書いていきたいと思います。これは、世間一般への提言ではなく、自分自身を振り返って、「このことをもっと早く知っていたら、人生変わったのに!」という内容です。なお、ぼくはそこまで真面目な高校生じゃなかったので、実は教えていたよ!というものもあるかもしれません。

財務諸表の見方

まずは財務諸表の見方です。損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書。これらがどんなことを意味していて、どういう計算で導かれるのか。ほんと、社会に出る前にこれを知られたら、どんなに良かったことか。

 

こう書くと、「簿記を……」という意見も出てくるかと思いますが、正直簿記とは似ているようでちょっと違うようにも思うのです。簿記自体も大切ですが、仕訳とかをマスターしたいという話とも違うんですよね。経理実務を知っておいたほうがいいというよりも、経営者としての考え方を知っておいたほうがいいという感じでしょうか。

 

社会人1年目のぼくは、会社の業績が苦しくて赤字だと聞いて、「赤字ってことはお金がないってことでしょ? なのにどうして社員に給料が出せるの?」とけっこうマジメに思ったものです。いかに根本的に知らなかったのかを物語っています。

 

自分自身でいえば、財務諸表に関する知識を身に着けたのは「マネジメントゲームMG研修」です。これはソニーが開発した研修プログラムで、商品を仕入れて加工して販売するという一般的な工場のビジネスモデルを元に、1人1社担当してビジネス上の優劣を競うというゲームです。ポイントは、1期ごとに自社の財務諸表を自分で作成して、それを見ることで来期の計画を立て、他社に勝利していくというアクションを取るところ。経営者にとって財務諸表がどんな重要性があるのか、予算策定というものがどんな意味を持つのかを肌身で感じられるゲームです。

 

敢えて言えば、このゲームは財務面が弱く、企業にとってたいへん重要な、資金調達が抜けています。ベストプラクティスとして、1期目の最初から融資限度額マックスまで借金して規模を拡大することが重要だということは、少しMGをやればすぐに分かるのですが、実際のビジネスではこの融資限度額をどう増やすかが難しいわけです。ここを学べるなにかがあるといいんですけど。

民法

法律にはいろいろとありますが、ドラマとか小説でよく出てくるのは殺人事件とか詐欺とかの刑法のほう。でも、実際に知っていると便利で身近なのは民法だと思います。ところが、民法にふれる機会ってあまりないんですよね。

 

でも、日常生活にせよ会社の業務にせよ、関わってくる根本の法律は民法です。さらにいえば雇用契約とかも、労働法とかはあるにせよ、最も基本となるのは「契約って何?」を規定した民法じゃないでしょうか。

 

18歳成年制度が始まりましたが、これは契約が可能になるということを意味します。でも、契約って何よ? ということを知らないと、あとあと損するなぁっていうのが実感です。

 

そうでなくても、仕事をしていく上で避けて通れないのが契約書です。法務部や弁護士のサポートは入るにしても、自分がいったい何の書類にサインしているのかは理解しておく必要があります。

知財法

もう1つが知的財産法です。昨今、特にネットの進展で、誰もが知らずに知財法に違反してしまう可能性が出てきました。ところが、知財法というのは社会一般の常識とはちょっと違ったところがあって、常識的に行動すればいいかというと、そうでもなかったりするのです。

 

典型例が著作権法でしょう。下記のように、著作権には知らない人には「え?そうなの」と思うような性質があります。

  • アイデアは保護されない
  • 親告罪である
  • 死後70年で著作権は失効する

他人のアイデアをパクることはネットでは「よろしくないこと」とされることが多いわけですが、これは著作権とは関係ありません。著作権は作成したら自動的に発生しますが、アイデアを保護したければ基本的に特許を申請して認められる必要があります。

 

また知らずに作ったものが結果的に他人の創作物と似てしまった場合は、著作権法違反にはなりません。また、著作権法的にはNGでも、著作権保有者が訴えなければ問題ありません。これを親告罪といいます。

 

これらは、そもそも人類の文明や科学が多くの人が生み出した成果の上に乗って作られているという共通理解がベースになっています。科学しかり音楽しかり物語しかり。他人の成果や作品をベースにして発展はしていくのです。だから本来知財はオープンで公共のものであるべきだというのは、OSSや科学研究の現場では当たり前のことです。

 

ところが、これでは発明や創作のインセンティブが生まれないというのが、著作権や特許権が生まれた背景です。本来は無償で共有すべきだけど、それでは作者や発明者が食べていけないから一定期間独占権を与えようというわけです。だから、著作権にも特許にも期限がありますし、著作権保有者が「自由に使えばいいじゃん」と思うなら、罪は問われないのです。

統計学

統計学は高校で数学の1つとして出てきますね。ただ気になるのは、仮説検定や区間推定などの統計推定が含まれていないことです。この仮説検定などというのは、ある仮説が正しいかどうかを統計的に検証する手法のこと。t検定とか分散分析とかが有名ですね。

 

これらは普通は大学で学びます。ぼくも大学でビシバシしごかれました。でもなぜこれが重要かというと、AIをはじめ、昨今主流となってきている科学の基本的な考え方だからです。そして、この考え方を学んでおかないと、最新の科学潮流についていけないのではと思うわけです。

 

普通の人は、科学というと数学とそれに基づいた物理などをイメージするのではないでしょうか。ここでいう統計以外の数学は、定理となる数式があって、それを変換していくことでさまざまな問題を解いていくものです。最初に絶対に間違いのない式があって、それを現実世界に当てはめて答えを導くので、答えに議論の余地はありません。敢えて言えば、現実世界に当てはめるときにモデルを作るわけで、現実世界のすべてを取り込めるわけではありません。そこに歪みが発生するわけですが、一つの法則からいろいろな結論を導き出すという、いわゆる演繹的なわけです。

 

一方で、ここでいう統計というのはもっともっと非厳密なものです。仮説検定の結果言えるのは、99%の確率で正しいとか、95%の確率で正しいとか。数学の中に入っていても、間違っている確率が一定あることを前提とする、変わった学問なのです。

 

しかも考え方が普通の数学と逆です。まずたくさんのデータがあって、それを統計的に処理すると、こんなことが言えるのではないか(95%の確率で)という流れになります。ここには理論というよりも、実際にそうなるのだからいいじゃないかというような、プラグマティズム的な発想が含まれています。先との対比でいえば、大量のデータから法則らしきものを導きだす、帰納的なわけです。

 

このことは、医学の分野で使われている統計を見ると違いがはっきり分かります。医学は実用的な学問であり、病気が治るかどうかが最も重要です。だからある薬があるとき、どの分子が何とくっついてだからこの病気が治る……というような演繹的な研究も当然ありますが、その薬を使うためにはそれは必須ではありません。

 

逆に、1000人に薬を投与してみて、20人が治った。副作用は出なかった。統計的に処理してみたら99%の確率で効果がある。だからOK。と、そういう感じの考え方をします。どうして効くのかはわからないけど、効くんだからいいじゃないか、というわけです。

 

AIの領域でも、こうした統計的処理に近い仕組みが普通になってきています。厳密に定められた数式にもとづいて、機械の次の動作が計算されて出てくる仕組みは、人工知能研究でいうと一世代前のものです。ディープラーニングに代表されるような最新の機械学習は、大量のデータを与えて学習させたら、99%の確率で正しい答えを出すようになった。どうして正しいのかはわからないし、間違える1%の理由も分からない。そんな世界なわけです。

 

これは論理の積み重ねが科学だと思っている人にとっては、かなりのパラダイム・シフトだと思います。で、この大転換の基礎にあるのが、統計学の考え方なのです。そういう意味で、統計学は単なる記号操作であるだけでなく、モノの見方をひっくり返すインパクトがあります。だからこそ、10代のうちにこのモノの見方を知ったほうがいいのではないかと思っています。