FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

円高リスクを為替ヘッジ ついでにオプションで利益も狙ってみる

一時131円台まで下落した円ですが、米長期金利の落ち着きを受けてか、このところ円安も一服気味。127円くらいまで円高に振れてきました。となると、気になるのがドル資産の為替差損です。

 

このところ米株は下落が続いていますが、日本人投資家にとっては同時に円安が進んだために、ダメージが小さくなっています。直近3ヶ月のS&P500のチャートですが、オレンジ線はUSD建てで5.68%のマイナス。一方でこれが円建てだと、青線で3.99%の増加となっているのです。

これが急速に進んだ円安の効果というわけです。しかし、そうなると今度は為替が課題です。円安から円高に振れると、逆周りとなってものすごい勢いで資産が減ります。それをヘッジしておこうというのが、今回のテーマです。

ヘッジするとヘッジコストがかかるが……

為替ヘッジとは、為替の変動による資産額の増減を打ち消す操作のことをいいます。つまり、これから円安に動こうが円高に動こうが、資産額の増減には影響せず、ドル建ての価格変化だけに連動するようにするのが、為替ヘッジです。

 

ただ、為替ヘッジにはコストがかかります。一般的には、ヘッジしたい通貨間の金利差+手数料がコストになります。日本国債の3年ものはまだマイナス金利で、5年ものでも0.002%。一方、米国の金利は急上昇していて2年もので2.6%、5年もので2.8%にも達しています。

つまり、ドルをヘッジしようと思ったら、2%後半+手数料のコストがかかる。これが現在のドルヘッジの状況なわけです*1

フルヘッジだからこそのコスト

ただ、これは為替変動すべてを打ち消そうと思うからかかるコストです。実は、ヘッジはもっと柔軟に使うこともできます。例えば今回ぼくが取った手段は、次のようなものです。

  • 124円以下に下がった場合、資産下落を被らない
  • 128円以上に上がった場合、資産上昇の恩恵を得られない

完全に為替ヘッジしてしまうと、為替が下がっても資産下落の悪影響がない代わりに、為替が上がっても資産価格上昇の恩恵を得られなくなります。さらに、ヘッジコストがかかります。

 

ところが、これに幅をもたせてあげることで、少しの円高デメリットは許容する代わりに、ヘッジコストを抑えることが可能なのです。これが為替オプションの面白さです。具体的には、下記の為替のカラー取引を使いました。

 

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ポジション

今回は、現物とコール売り、プット買いの合成ポジションとなります。為替が127円の状態で、128円のコールを売ってプレミアムを受け取り、124円のプットを買ってプレミアムを支払います。

構造としては、コールを売っているので、為替が128円を超えると損失が発生します。一方でプットを買っているので124円を下回ると利益が生じます。そして、現在の為替に、売りの価格のほうが近いので、売り価格>買い価格 となっており、つまりこのポジションの組成で利益が見込めます。実際の価格は下記の通りです。

ではなぜこれが為替ヘッジになるのかというと、もう1つ現物のドル資産があるからです。右肩上がりの直線である現物ドル資産の損益グラフを合成すると、下記のような損益曲線になります。

つまり、124円を下回って円高になった場合のリスクはヘッジされ、128円を超えて上昇した場合の恩恵は得られなくなります。そして、手数料はサクソバンク証券にたっぷり払いながらも、差し引きではプレミアムを受け取る形になります。

推移

プレミアムの受け取りと支払いはポジション組成時に発生しますが、損益はそれで完成ではないのには注意が必要です。今回は1カ月後の7月25日を満期とするオプションを売買しましたが、損益曲線が示しているのはこの満期時の損益だからです。

 

オプションは、満期に向けて徐々にこの曲線に近づいていきます。具体的には、当初コール売りのポジションは含み損であり、毎日セータの分だけ利益が積み上がります。そして最終日まで到達すれば損益曲線に一致します。逆に、プット買いのほうはセータが敵になります。まぁポジション全体でいえば、買いと売りでセータがある程度打ち消し合うので、ニュートラルに近づきます。

 

さらにボラティリティによっても損益は変化します。これはベガ(カッパ)ですが、買いはボラティリティロング、売りはボラティリティショートです。こちらも、売り買い両方持っているので打ち消し合うという利点はあります。

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そして当然ですが、デルタの影響が大きい。オプションポジション単体で見ると、プット、コール共に円安で損失、円高で利益の構造です。もちろんガンマを無視すれば、現物がデルタ1なので、資産全体としては増減を打ち消し合うデルタ ニュートラルな訳ですが、証拠金管理には注意が必要です。

 

さて、久々にオプションのポジションを取ってみました。もともとはドル建て資産のすべてをヘッジする予定だったのですが、オプションの売りには証拠金が必要になります。こちらが、20万ドル(2540万円相当)ごとに100万円ちょっとかかります。となると、すべてのドル資産をヘッジしようと思ったら、相応の証拠金がかかるわけで、それはもう少し様子をみようと。

 

また、いきなり数百万円の証拠金を突っ込むのもドキドキします。こうした複雑なポジションは、実際に手掛けてみないとどんな落とし穴があるのか分からないからです。というわけで、まずは20万ドル分のカラーポジションだけ組成してみました。

 

これが目論見どおりいくなら、100万円ちょっとの証拠金で、プレミアム価格の差額7万円ほどが残る計算です。月利7%で、かつドル資産の為替ヘッジも行える。けっこう悪くありません。まぁその代償は、128円を超えて円安が進んだときの恩恵を享受できないという点。これをどう考えるか? というところでしょうか。

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*1:ちなみに、日本のほうが金利が高ければ、ヘッジコストはマイナスとなり、ヘッジするとお金がもらえます。アメリカ人にとって日本への投資はその状態で、だから日本国債を買ってヘッジすれば、プラスのリターンが得られるわけです。