FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

FIREすると会社員時代より病気が怖くなるのか?


ダイヤモンド・オンラインに「FIRE達成者が実践した『意外なデメリット』とは?」という記事が載っています。実際にFIREした方々が本音で語っていて、ふむふむという感じなのですが、ほほーと面白く思った点もありました。

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FIREすると会社員時代より病気が怖くなるのか?

あれ?と思ったのは、次のくだりです。

寺澤:デメリットとまではいきませんが、怖さを感じた出来事がありましたね。この前、中指の骨を剥離骨折したんです。

 今回は指だったから良かったものの、もし重傷を負って動けなくなったりすると、生活していく上でかなり困るなと危機感を覚えました…。FIREをすると、ケガをしたときに会社が守ってくれなくなるので、動けなくなる事態は避けたいんです。

会社員のときは怪我や病気になっても有給休暇があって、働かなくても収入を得られます。また健康組合や協会けんぽには、働けなくなったときの傷病手当金という制度がありますが、国民健康保険の場合には基本的にありません*1。つまり、会社員はいろいろ保障があるけど、退職してFIREすると保障がなくなる……という話です。

 

でもあれ? FIERって金銭的に自立していて、つまり会社に頼らなくても資産からの収入で暮らせていけるのではないの? 別に自分が病気になろうが怪我をしようが寝たきりだろうが、資産から収入が入ってくるんじゃなかったの?

 

そう思ってよくよく読むと、この方はFIREといっても「サイドFIRE」だということで、資産もあるものの執筆活動をして暮らしているということでした。なるほど。

 

つまり一口にFIREといっても、「◯◯FIRE」の場合は必ずしも資産からの収入で生きていけるわけではないということですね。

脱サラ独立とFIREの違いとは?

さてそうなると、脱サラして独立するのとFIREの違いとは何でしょうか。一つには、それなりの資産額があることでしょう。サイドFIREと言いながら、毎月せっせと働かないと生活できない=資産からの収入が大してないなら、それは自己マーケティングのためのキーワードとしてのFIREじゃないかと見られても仕方ありません。

 

ぼく自身は、FIREしたからといって働くことを否定するものではないし、実際に仕事を受けることもあります。でも重要なのは、お金のために働くのではなく、面白そうな仕事だけするという点だと思っています。

 

資産からの収入があるので、まったく働かなくてもお金的には問題ありません。でも楽しそうな仕事についてはやっぱりやってしまいます。そしてそこにはやはり報酬が発生してしまいます。創造的なアクションを社会の中で実行する場合、金銭の授受が発生するのが慣習だからです。企業からの依頼を無償で受けるのは、実は意外とハードルが高かったりします。

 

ハンチバックの主人公、釈華は、親からの莫大な遺産を受け継ぎながら、ネットライターの仕事もしています。ただそれは社会とのつながりを持つためで、受け取った報酬はすべて寄付してしまいます。ここまでいけば「金のために仕事してるんじゃないんだよ」と言えるでしょうが、残念ながらぼくはまだその域には達していません。精進しないと。

FIREすると収入に不安があるのか?

FIREしても病気が怖いのは、実はマインドの問題もあるかなと思っています。ぼくは、これだけ=年間生活費の37倍の資産があれば、まったく働かなくても困らないだろうと思って完全FIREしましたが、この額で十分だと思うか不安に思うのはひとそれぞれ。マインドの問題です。

 

もし同じような生活費と資産額の人でも、不安を感じるなら稼ぐための仕事を辞められないでしょう。これは10億円あっても100億円あっても不安な人は不安だという話です。

 

さらにポートフォリオと市況も不安に影響します。この10年ほどは株式市況がとてもよく、リーマンショック以後はまともな景気後退がありませんでした。そのため、この期間に資産を築いた人は資産が大きく減る、そして戻らないという経験をしていない場合があります。

 

いざ景気後退が来て資産額が半分になり、さらに1年、2年と減り続けた場合、不安が長じて仕事に復帰したくなってしまう人もいるでしょう。これはまさにマインドの問題で、資産額の多寡ではないと思っています。

 

ポートフォリオも同様です。理論的にはFIREしたからといってインカム重視のポートフォリオにする必要はありません。株式インデックス100%の投信で、必要に応じて取り崩しだっていいはずです。でも、マインド的には定期的に安定したキャッシュが入ってくるほうが不安がないという人もいるでしょう。

でも不安な人がFIREするのか?

FIREしたら働かなくても大丈夫なはずだけど、マインド的に不安になっちゃって働いてしまう。だから怪我したりすることに不安を感じてしまうのでは? と考えてみました。でもそんなふうに不安を感じる人が、果たしてFIREするのか? という疑問もあります。

 

そんなにいろいろな不安を感じるなら、FIREなんかしないで安定して守られた企業の中で、淡々と働いたほうがいいんじゃないか? ということです。なぜ資産からの収入だけでは不安なのにFIREしたのか? これが最も聞きたい内容です。

 

*1:ちなみに、FIREしても自分で会社を作ってそこから給与をもらうようにすれば、協会けんぽにも加入できるので傷病手当を受け取ることも可能です。まぁ給料の額を増やさないとあまり意味がないのですけど。