その昔から、賃貸と持ち家はどっちが得なのか? は永遠の論争テーマのようです。「先行きは不透明だぜ!」というスタンスの方は賃貸有利の結論になることが多いですし、「家売るのが仕事だぜ!」というポジションの方は持ち家有利をいいます。
でも、税金論点で比較したものを見たことがないので、ここで考察してみましょう。
前提は同じ家に住むこと
まず前提として、両者は同じ家に住むとします。つまり賃貸物件を借りるのが得か買うのが得か、です。15万円の家賃で住める家を、例えば3600万円で買ったらどう? という勝負です。
当然ですが、賃貸で部屋を借りる場合は大家がいます。大家はその部屋を買って貸して、そこから利益を得ます。つまり、家賃には大家の利益分が乗っているわけです。賃貸で住んでいる人は大家の利益分だけ損をしているということになります。
金利:持ち家勝利
その部屋を買って、自分に賃貸で貸すことを考えるとわかりやすいでしょう。税金などを無視すれば、必ず賃料収入がローンの返済額を上回ります。その差額が購入した場合のお得分となるわけです。そして、自分で自分に貸す場合、不動産投資の大きなリスクである空室がありえません。かならず自分が住んでくれるわけですから。
さらに金利の違いがあります。収益不動産への融資は現在1%〜3%程度ですが、住宅ローンの金利は0.5%〜1.5%といったところ。さらに、融資期間についても建物の法定耐用年数に依存しがちな収益不動産と違い、住宅ローンのほうが長く取れる傾向にあります。この点でも持ち家の勝利です。
税金:持ち家勝利
さらに違うのは税金です。現在住宅ローンには大きな減税があります。ローン残高の1%が10年間にわたって控除されますので、かなり大きな金額です。ここでも持ち家が有利です。
よく言われますが、家を買うならできるかぎりローンです。現金がたくさんあっても、頭金はできるだけ少なくして、ローンです。そして繰り上げ返済はしてはいけません。
なぜかというと、住宅ローン金利よりも投資収益のほうが利回りがいいからです。住宅ローンの繰り上げ返済に使える金があったら投資に回しましょう。
引っ越しニーズ:引き分け
持ち家の場合、家族構成の変化や引越のニーズに対応しにくいというデメリットもいわれることがあります。しかし、それも大家視点に立つと違う見え方になります。再び、自分で買った物件を自分に適切な家賃で貸していると考えてみましょう。もし引越が必要ならば、自分ではなく他の人に貸せばいいわけです。適切な家賃であれば、ここが大きな違いになることはありません。
こう見てみると、どう考えても明らかに持ち家のほうが有利です。賃貸に勝ち目はないように思えます。ところが、世の試算ではけっこういい勝負となることが多いですね。なぜ互角の勝負になるのでしょうか?
りんごとみかんを比べてはいけない
僕は、賃貸物件と購入物件で異なる物件を比較しているせいだと思っています。世の中の購入物件は、賃貸物件に対して明らかにオーバースペックで、さらに価格も上乗せされていることがほとんどだからです。いわば、りんごとみかんを比べているようなもので、どっちが美味しい? という問に結論が出ないのは当たり前です。
多くの試算では、家賃と住宅ローンの返済額を同一と考えて比較しています。住宅ローン側の有利さを考えれば、この比較では持ち家のほうが数段グレードの高い物件になるのは間違いありません。そして、同じ物件で比べたら、購入するほうが明らかに有利なのは見てきたとおりです。
掘り出し物賃貸をもし見つけられれば。。。
ただし、いくつか注意すべきところがあります。すべての大家さんがしっかりと利益を出しているわけでないということです。もし大家が利益の出ない値付けで賃貸をしている物件があったとしたら、賃貸のほうが有利になることがあり得ます。実際、田舎の地主が大家をしている物件などでは、土地はもともと持っている、上モノのローンも返し終わっている、なので非常に安い賃料で提供している、という物件があり得ます。また、インカムゲインとしてのキャッシュフローは見ておらず、物件の値上がりのキャピタルゲイン目当てで運営しているという賃貸物件もあるかもしれません。
また、持ち家というのは自分で自分に貸し出す大家業をやるのと同じです。大家業は、大きなレバレッジをかけて長期間行われる投資です。ここには利上げのリスク、不動産価値低下のリスクがあります。賃貸で借りる場合、これらのリスクを回避することができます。また、新築で買う場合は新築プレミアムがついていること、郊外だと資産価値下落リスクがあることには注意が必要です。
さらに、先ほどりんごとみかんを比較するようなものだ、と書きましたが、賃貸物件と購入物件は明らかな需要の違いがあります。購入物件はファミリータイプが多く、賃貸物件は単身者向けが多いため、「同じ物件に住むとしたら」という前提が成り立たないことも多いのです。住みたいところに購入物件しかないのなら、比較自体が無意味になります。
同じ物件なら持ち家完勝。しかし。
まとめると、同じ物件に住む限り、減税や住宅ローンの優遇を考えると持ち家の勝利と考えます。大きな落とし穴は、持ち家のほうが高スペックで高価なものになりがちだとうこと。もし家を買う場合は、家賃と住宅ローン返済額を比較するのではなく、その家を他の人に貸し出した場合の収益性をチェックして、妥当な価格かどうかを判断すべきだと思います。
そこまで持ち家を持ち上げるお前はどうなんだ? と言われれば、実は賃貸に住んでいます。自分の信用=銀行からの借り入れ可能額を自宅に使ってしまうと、融資を使った投資が大きく制限される、という点があるからです。
また、つい大きなローンを組んでしまい、高い物件を買う、つまり賃貸に比べてオーバースペックの家に住んでしまう可能性が高いのもちゅうちょするポイントです。
まぁ、単に買いそびれた、というのが本音なのですが。
【投資家目線の持ち家vs.賃貸記事も書きました】