「億り人」というように1億円が投資の1つのターゲットという人は多そうです。先日、「年40万円を40年続ければ1億円に達する」という記事が載っていました。
過去の日経平均の伸びを調べると、配当金を除いても年平均の上昇率は8.1%。もし8%で資産が増加するなら、40万円ずつ投資することで40年に1億円に達するという計算になります。
これ自体はまったくそのとおりですが、では、10倍の年400万円を投資に回すと、それが1億円まで増えるのに何年かかるかと計算すると面白いことになります。実は、15年もかかるのです。
投入資金を10倍にしても、必要期間は10分の1にはならず3分の1程度にしかなりません。これがアインシュタインが「人類最大の発明」と呼んだ複利の力の結果の1つです。
よく「時は金なり」といいますが、まさにそのとおり。そしてその時をうまく活用できるかどうかが資産構築に最大の影響を及ぼします。
投資では「安い時に買い、高い時に売る」という格言が、まことしやかに言われます。これ自体は全く間違いはありませんが、問題はいつが安いかわからず、いつが高いかわからないということです。言い換えれば、市場は常に適切な価格であり、本質的に高いか安いかは分からず、将来の値動きはランダムに決まるということです。これを「効率的市場仮説」といいます。
この効率的市場仮説の上で、なお効率的ではない歪み(アルファ)が存在しており、それを見つけることで収益を得られると考えるのが、現在の一般的な金融理論の解釈です。
そしてもう一つ、成長を是とする資本主義の世の中ではGDPは増加し続け、GDPの主役である企業の業績は連動して拡大し続ける。そのため、世界や一国全体で見れば株価も拡大し続けるという仮説があります。この仮説に基づいた投資手法がインデックス投資と言われるもので、昨今一般に広がっているものです。冒頭の「40万円ずつ投資すれば40年で1億円」という話も、この仮説を前提としているわけです。
ちなみに、記事の中で、
日本の名目国内総生産(GDP)成長率はせいぜい年3%だから、8%増益など続かないとの見方もあろう。しかし、日本市場が伸びなくても、企業は海外で稼ぐことができる。
という表現がありましたが、株価が8%上昇するためには必ずしも8%増益は必要ありません。1株あたりの利益が8%増益できればいいわけで、それは例えば借り入れの増加や自社株買いによる自己資本の圧縮などでも実現できます。米国企業では一般的な手法ですね*1。この1株あたりの利益率を示す言葉がROE(Return of Equity)です。
僕自身は、インデックス投資手法を信奉しつつ、世の中に実はけっこうあるアルファを逃さずに活用し、さらに未来の拡大を信じる投資先については大きなリスクを取ってトライするという手法を継続したいと思っています。
複利の力についての考察はこちら。
アルファについてはこちら。
自社株買いについての考察はこちら。