ちょっと前ですが、何かと話題のZOZO社長こと、スタートトゥデイの前澤社長の「税金収めたぜ!」Tweetが話題になっていました。興味深い記事ではあるのですが、根本的な誤解に基づくミスリードがあるように思いましたので、まとめておきます。
まず、冒頭の前澤氏のTweetです。2017年は34億円、2018年は70億円の納税を行うと書いています。
2016年度77億円、2017年度34億円、2018年度70億円(予定)。個人での国内における所得税や住民税などの納税額です。買い物もするけど、税金もしっかり納めております。これからももっと稼いでいっぱい買い物して、いっぱい納税します!
— Yusaku Maezawa (MZ) 前澤友作 (@yousuck2020) 2018年10月4日
これ自体は、「うわーすごいなぁ」という感じなのですが、記事ではここから、税制の歪みに関する解説に入ります。
年所得が1億円を超えると所得税が軽くなることが分かります。なぜ年所得1億円以上になると所得税が軽くなるかというと、年所得1億円以上の人は株の売買で儲ける比率が高くなることに加えて日本は配当課税と株式譲渡益課税が分離課税で20%と主要国と比べても低いからです(※2018年1月現在でイギリス38.1%、フランス30%、ドイツ26.375%)。日本は額に汗して働くと所得税は30%近くまでになるのに、額に汗しない株による不労所得を得ると税金が安くなっていくという富裕層優遇国なのです。
日本では、給与所得は累進課税ですが、株や配当については分離課税を取っています。そして分離課税は約20%と一律で、累進性がありません。そのため、給与が高い人の税率は高くなっていきますが、配当所得が高い人は逆に税率が低くなってしまいます。
ここまでは大枠間違いではありません。ただ問題は、大口株主は分離課税ではなく総合課税、つまり累進課税になるという点です。スタートトゥデイ創業者の前澤氏は当然大口株主です。実に41.16%の株式を保有しています。これは分離課税によって税率が低いどころか、総合課税による最大級の累進課税の税率で払っているということです。
実際、スタートトゥデイの2017年の配当は、1株あたり29円。前澤氏は122,062,001株を所有していたと想定されますので、配当金は約35億円となります。実はこの額、日本企業では孫正義社長の101億円、柳井正社長の80億円に次ぐ3位です。これだけでも確かに相当なお金持ちなのがわかります。ZOZOの役員報酬は7人で2億円強ということなので、前澤氏は1億円程度得ているかもしれませんが、配当収入に比べると誤差に近いですね。
ここに株の売却益も加わりますが、こちらは大口であっても20%です。
そんなわけで、お金持ちが配当で儲けているのは事実ですが、だからといって税率が低いとは限らないというわけです。前澤氏については、しっかり累進課税に基づく最高税率を払っている可能性が高いと思われます。