トランプによる対中貿易戦争が経済と株価を揺さぶっていますが、もう少し大きな視点では、米国が金利をどうしていくかに注目です。景気拡大による株価上昇を背景に、FRBは継続的に利上げを行ってきました。
ところが年初の調整あたりから、利上げに慎重な姿勢を見せ始め現在は据え置きという姿勢です。
といってもずっと金利を据え置くというわけにもいかないのでしょう。米国の債券王といわれるジェフリー・ガンドラック氏は、現在最良の投資アイデアとして「金利ボラティリティのロング」を挙げました。
では、「金利ボラティリティのロング」とはいったいなんなのでしょう?
金利とはイコール米国債の価格である
ここでいう金利とは、実質的には米国債10年ものの価格を意味します。いったん発行された債券は、その後、金利変動によって取引価格が変動するからです。金利3%で発行された債券は、市中金利が5%に上がれば、イコールになるように値段が下がります。値段が下がることで、実質的に5%のリターンに調整されるわけです。金利が下がった場合は逆のことが起きます。
つまり、金利と呼ばれているものとは10年もの国債の価格のことなのです。
国債のETFには複数あるが
そして国債を集めたETFというのが存在します。それぞれどのくらいの残存期間なのかで異なるETFになっており、ブラックロックのiシェアーズでいうと次のようになっています。
- SHV 超短期
- SHY 1-3年
- IEF 7-10年
- TLT 20年超
残存期間が長くなるほど、金利変動の影響を受けやすくなります。この残存期間を債券業界ではデュレーションと呼びます。これらでいうと、デュレーションが最も大きいTLTが、金利変動に敏感に反応するわけです。
TLTのデュレーションは17.5程度となっており、これは金利が1%変化すると17.5%も価格が変化することを意味しています。金利が1%下がれば、価格が17.5%上がるというわけです。
上がるか下がるかは分からないが変化はしそう、というとき
つまり、金利が上がると思ったら債券ETFを売り、下がると思ったら買っておけば、金利変動がそのまま利益になります。でも、上がるのか下がるのかわからないときはどうしたらいいのでしょう?
こんなときはオプションの出番です。ある価格で購入する権利であるコールオプションと、ある価格で売却する権利であるプットオプションを、両方とも購入します。ストラドルという合成ポジションになります。
※Long Straddle Option Strategy Explained | The Options Bro
その場合、損益曲線は上記の図のようになります。左右が原資産の価格、この場合は債券ETFですね。これが上がっても、下がっても利益が出るようになります。ただし、コール・プットともに権利を買っているので、債券ETFの価格が動かなければオプションの購入代金分だけマイナスです。
つまり、金利が上がっても下がっても利益、ただし動かなければ損失。これが債券ETFを原資産としたストラドルポジションです。
もうちょっと細かく
もうちょっと細かくいうと、債券ETFの価格は上がっても下がっても関係ないので、デルタはゼロとなります。しかし債券ETFの価格が上がった下がったりすると、その利益はガンマの効果で加速度的に増加します。つまりガンマをロングしている状況ということです。
また、ボラティリティへの感応度を示すベガはプラスです。インプライド・ボラティリティ(IV)が上昇すれば利益であり、下降すれば損失です。つまり、金利=債券価格が激しく変動するほど利益になります。現在は金利が凪のような状態で落ち着いています。つまりIVが低い状況なので、今後の変動があると思えば仕掛け時です。
時間が経つごとに変化する量を表すセータはマイナスです。セータショートです。つまり、何事も起こらず時間だけが過ぎていったら損失がかさんでいくということになります。セータは残存期間が短いほうが大きくなるので、限月が長いオプションを買うことが大事になります。
オプションは、よく上記の損益グラフで語られることが多いですが、これはあくまで満期まで持ち続けたときのことです。通常は、その前に反対売買をしてポジションをクローズします。というわけで、ベガやセータのことをちゃんと頭に入れておいたほうが、しっかりとしたトレードができることになります。
残念ながら、国内では債券ETFに対するオプションの売買を提供している証券会社はありませんね。つまり金利ボラティリティのポジションは取れないということです。このあたりも次第に変わってくるといいと思います。