前回、公庫で安い金利で借入が決まったものの、IRRが心配だという記事を書きました。簡単にいえばIRRとは、その事業の利回りを、定期預金金利と比較したらどれくらいに相当するかを表すものです。これを試算してみました。
Equity IRRとProject IRR
IRRは、単純な利回りとは違い、キャッシュフローが得られるタイミングを加味して、将来のキャッシュを割り引いて足し合わせ、それが投資額と同額になるときの割引率を指します。言葉にすると分かりにくいですが、要は初期投資額を定期預金に預けた場合、何%金利がつく定期預金と同じかということを意味します。
太陽光のような投資では、自己資金(Equity)だけでなく借入(Debt)を使って投資しますが、このとき、Equity+Debtの合計を初期費用として計算したIRRを、Project IRRといいます。一方で、Equityだけを初期費用として計算したものを、Equity IRRといいます。
Project IRRの計算では、借入金返済前のキャッシュフローを用いますが、Equity IRRでは借入金返済後のキャッシュフローを使います。今回は事業評価ではなく投資評価ですので、Equity IRRが適していると思いますし、これまでの計算でもこれを使ってきました。
しかし、Equity IRRとProject IRRでは当然数字が違ってきます。具体的には、借入金を使ってレバレッジをかけることで、Equity IRRのほうが数字が向上します。
Equity IRRに影響する要素
そこに影響する要素はというと、
- Equity比率が小さいほうがIRRが向上(レバレッジ率拡大)
- 借入金の金利が安いほうがIRRが向上(金利差分だけキャッシュフロー向上)
- 借入期間が長いほうがIRRが向上(近い未来のキャッシュフローが改善するため)
といったものがあります。IRRの計算式は比較的シンプルなのですが、「NPVがゼロになる割引率を求める」という式のため、数学に弱いぼくにはレバレッジ率や金利変化、借入期間変化のIRR感応度を一般的に計算することができませんでした。なかなか難しい。
できたのは、具体的に融資を受けた案件*1で、それぞれのIRRを計算して比較してみました。その結果はけっこう驚愕で下記のグラフのようになりました。
縦軸はEquity IRR、横軸は返済期間です。驚いたことに、金利変化はほとんど(といっても、1.5%と2.25%で、1.5〜2.7ポイント程度違います。返済期間が長いほど、その差は広がります)影響がなく、返済期間が長くなるほどIRRが向上することが分かりました。返済期間が15年から10年に短くなることで、金利は0.64ポイントも安くなったのに、IRRは23.77%から14.31%に低下してしまうのです。
IRRのレバレッジ観応率
もちろん、IRRにはレバレッジ率が大きく影響します。つまり、自己資金の何倍の借入をするかでIRRが変わるわけです。こちらも金利ごとに、15年の返済期間として、レバレッジ比率ごとにグラフ化してみました。
縦軸はEquity IRR、横軸はレバレッジ倍率です。こちらも実は金利よりもレバレッジがIRRに大きく影響することが分かります。
不動産投資では、金利絶対値よりも、「できるだけ長く」「できるだけ頭金を小さく」することが重要だとよく言われますが、これは返済期間とレバレッジ率がEquity IRRに大きく影響するということを意味しています。
もっとも、レバレッジを高めると、売上が想定に届かなかったときに簡単にキャッシュフローがマイナスに転じてしまうというリスクがあります。また金利上昇リスクについても感応度が上昇します。ただし、太陽光の場合、売上はFITによって保証されており、不動産に比べて返済期間は短めのため、金利上昇リスクもそれほど影響は大きくありません。ということで、狙うなら金利よりも返済期間。15年返済を20年返済にできれば、トータルのEquity IRRは1.5倍程度に上がるという計算になります。
*1:年間売電粗利180万円、借入1500万円という粗前提です